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「妊婦さんはお葬式に参列してはいけない」という迷信の解説と参列時の注意点

『妊娠中はお葬式に参列してはいけない』と聞いて心配になっているあなた。

安心してください、あなたが聞いたことは『迷信』です。

この迷信は、お葬式で考えられる様々なリスクから【妊婦さんを守るため】に作られたものです。

しっかりと事前準備をして、なおかつ体調が良ければ、妊婦さんでもお葬式に参列しても何の問題もありません。

この記事は、僧侶(お坊さん)暦20年以上の僕が、

  • 『妊婦さんがお葬式に参列してはいけない』という言い伝えの本当の意味

  • どうしても言い伝えが気になるときの対処法

  • 妊娠中にお葬式へ参列するときの注意点

について書いています。

今のあなたの不安が解消され、安心してお葬式に参列できるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。


妊婦さんとお葬式にまつわる迷信

先日、女性信者さんが寺に訪ねて来られたのですが、彼女には何やら心配事があるようでした。

その女性は妊婦さんで、数日後には彼女の親戚のお葬式があるとのこと。

しかし、彼女は知人から「妊婦がお葬式に行くと、お腹の子どもに《悪いこと》がおこるから、妊娠中はお葬式に参列しちゃダメだよ。」と言われたそうで、それをとても心配していました。

昔から『妊婦はお葬式に参列してはいけない』と言われることが多いですが、なぜそのように言われるのでしょうか?

■昔からの迷信

昔からいろんな地域で『妊婦がお葬式に参列するとお腹の子どもに悪いことがおきる』という言い伝えがあります。

はじめに言っておくと、このような言い伝えは単なる『迷信』なので何も心配する必要はありません。

ですから、迷信のせいで大事な【故人との最後のお別れの機会】を逃さないでくださいね。

とはいえ、言い伝えの【お腹の子どもにおきる悪いこと】が具体的にどんなことなのか気になりますよね。

お葬式と妊婦さんにまつわる言い伝えは、地域によってさまざまなものがありますが、この記事では、僕が今まで聞いたことがあるものを紹介します。

僕が今までに聞いた『妊婦さんがお葬式に参列することでおきる悪いこと』には、

  • お腹の子どもにアザができる

  • お腹の子どもが故人の霊に取り憑かれる

  • 故人の霊がお腹の子どもをあの世へ一緒に連れて行ってしまう

といったものがあります。

何だかどれも怖い言い伝えなので、こんなことを聞いてしまったら心配になり、場合によってはお葬式に行くのをヤメてしまうかもしれません。

でも、もう一度言いますが、このような言い伝えは単なる『迷信』です。

【迷信】だとわかっていても気になるというあなたには、ちゃんと『対処法』をお伝えしますね。

■迷信への対処法

お葬式と妊婦さんに関する迷信への対処法には、

  • 服の中で、お腹のあたりに小さな手鏡を鏡面を外側に向けて入れる

  • 服の中で、赤い布などをお腹に巻いておく

  • ずっと数珠を持っておく

  • 式場へ入る前にしっかりと合掌をする

というのがあります。

まずは、服の中(お腹のあたり)へ『小さな手鏡を鏡面を外側に向けて入れる』という対処法があります。

鏡は、真実をそのまま嘘偽りなく映し出し、また、光などを反射させますよね。

つまり、もしも悪い霊が姿を変えて近寄ろうとしても、鏡を持っておくことで、

  • すぐに真実の姿が映し出される

  • 邪念などをはね返す

とされているのです。

なので、妊婦さんとお腹の子どもを守り、悪い霊を跳ね返すために手鏡を【外側】に向けて入れておくというわけです。

この方法は昔ながらの有名なやり方なので、これを実践した妊婦さんも多いと思いますが、正直に言うと僕はこの方法をあまりおすすめできません。

まず、お腹が大きくなっているので、小さいとはいえ鏡が服の中にあるのはジャマです。

そして、お腹のあたりに手鏡があると、それだけでお腹を圧迫しますし、手鏡を落としてしまったら拾うのも大変です。

それに、もしも手鏡をぶつけてお腹を怪我をする危険性もあります。

なので、小さな手鏡をお腹のあたりに入れるという方法があることを知っておくだけでいいかと思います。

手鏡よりも安全な方法が次のやり方です。

どうしても迷信のことが気になるのであれば、『赤い布』をお腹に巻くという方法もあります。

古来から赤色には『魔除け』の効果があるとされています。

赤色は、活力や情熱、または太陽を象徴する色、つまり明るくてパワフルな色なので、明るくてパワフルなものが苦手な悪い霊は近寄ってこないそうです。

ちなみに、神社の鳥居も、神様と神聖な場所を守るために魔除けとして赤色にしています。

以上のことから、『赤い布』をお腹に巻くと悪い霊が近づいてこないといわれています。

ただし、赤い布を巻くときには、くれぐれもお腹を圧迫しすぎないように注意してくださいね。

じつは、さらに安全な方法があります。

それは、『ずっと数珠を持っておく』ということです。

お葬式に参列するときは『数珠』を持っていきますよね。

数珠というのは、使っていくうちに【数珠に仏様のチカラが宿る】といわれています。

それで、数珠を持つことで全身が『仏様のチカラ』によって清められるというわけです。

ですから、式中は数珠を持っているので大丈夫ですし、式が終わっても喪服のポケットやバッグなどに入れておけば、その日はずっと数珠があなたを守ってくれるのです。

そして最後に、もっとも簡単に身を守る方法を紹介します。

手鏡はジャマになる、都合よく【赤い布】なんて持ってない、しかもまだ数珠を持っていない、という場合もあるでしょう。

そんなときは、『式場の入り口でしっかりと合掌をする』という方法がいいですよ。

じつは、合掌は仏様のチカラで自分自身を清める作法なんです。

私たちの『右手』には仏様が宿るといわれており、両手を合わせることで、右手に宿った仏様のチカラで全身が清められます。

悪い霊は『清められた、人・場所・物』には近づくことができませんので、合掌をすることで魔除けができるのです。

式場へ入る前に手を合わせるだけ、物は不要ですし、やり方も簡単なのでおすすめですよ。

■迷信は故人に対して失礼

ここで僕は1つ言いたいことがあります。

これまで紹介してきたのは、あくまで【悪い霊】から身を守るための対処法です。

しかし、故人の霊魂は【悪い霊】ではないので、何も心配はありませんし、何か対処をする必要もありません。

お葬式で迷信への対処をするということは、『故人の霊が何か悪いことをする』という前提になってしまいますよね。

あなたは、迷信で言われているように、故人の霊がお腹の子どもに取り憑いたり、あの世へ連れて行ったりすると思いますか?

例えば、故人の娘が『妊婦』である場合、故人は【自分の孫】を手にかけることになります。

あなたが故人の立場なら、自分の孫にそんなことをしませんよね?

だから、故人の霊魂がお腹の子どもに何かをするという迷信は、故人に対して失礼なんです。

お葬式というのは《故人を仏様に託す》ために執り行う儀式です。

仏様に守られた故人は究極の安らぎを得るので、生きている人、ましてや生まれる前の赤子に悪さをするはずがありません。

ですから、故人が自分の子や孫に悪いことをしかけるなんてことはありませんので安心してください。

◾️お坊さんがしっかりと供養しているから大丈夫!

お葬式と妊婦さんに関する迷信というのは、お坊さんにとっては非常に不愉快なんですよね。

もしも故人の霊魂が悪さをするのであれば、それは「お葬式でお坊さんが何の役にも立っていない。」ということを意味します。

お葬式でお坊さんがしっかりと故人を仏様に託していれば、故人は悪いことなんてしません。

ですから、本当に故人の霊魂が悪さをしたのなら、それは、そのお葬式をお勤めしているお坊さんが【無能なお坊さん】であることを証明しています。

しかしですね、そうならないように、僕たちお坊さんはツラい修行をし、修行期間が終わってからも勉強を続けていくんです。

僕たちお坊さんは、それ相応の修行と勉強をした上で、何百年と受け継がれてきた方法を用いてお葬式をお勤めしています。

しっかりと故人を供養していますので、故人の霊魂が【妊婦さんのお腹の子どもに《悪いこと》をする】なんてことはありません。

■迷信は妊婦さんの体調管理を最優先させるために作られたもの

お葬式と妊婦さんに関する迷信ですが、じつは妊婦さんの体調管理を最優先させ、お葬式に参列させないために作られたものです。

迷信の根本には、

  • 妊婦さんの体に余計な負担をかけない

  • 妊婦さんを不衛生な環境から遠ざける

という【妊婦さんに対する配慮】があります。

昔はお葬式を『自宅』で行うことがよくあり、そのときは近所の女性達が互いに声をかけ合って総出でお葬式の手伝いをしていました。

掃除や食事の用意など、喪主やその家族の代わりとなって、様々な仕事をあれこれと動き回りながらこなすのです。

しかも、出産をするくらい若い年齢となれば、自ら率先して動かなければいけないような立場になります。

また、手伝いだけではなく、お葬式にも参列しなければならず、お葬式の最中は長時間座りっぱなしで、出棺時や火葬場では立ちっぱなし。

そして、火葬場へ行ったときには、『もし体調が急変しても、すぐには帰宅できない』という心理的な負担もあります。

ですから、お葬式は妊婦さんにとって肉体的・精神的に大きな負担となるものでした。

そこで、できるだけ妊婦さんに負担をかけないように【お葬式に関わらせないための迷信】を作り出したというわけです。

また、昔は『衛生』を保つための物や施設が現在ほど充実しておらず、いろんなものが【不衛生】でした。

お葬式に関して言えば、まず故人の遺体を保存するための環境が整っていませんでした。

現在では、ご遺体の状態を保存するための『保冷庫』のようなものがあり、お葬式の日程が少し先延ばしにされても遺体の傷みは最小限に抑えられます。

しかし、昔はそんなものはありませんから、特に夏期はどんどんご遺体が傷んでしまいます。

さらに【疫病】などもありましたから、うかつに故人に近づくと感染をしてしまうリスクもあったのです。

ですから、故人のご遺体そのものが衛生面でのリスクとなってしまったんですよね。

このような理由で、いろんな衛生面のリスクから妊婦さんを守るため、【お葬式や火葬場など、不衛生な環境から遠ざけるような迷信】を作り出したのです。

妊婦さんでもお葬式に参列して大丈夫!ただし、体調が良いことが条件です

妊婦さんの体調管理を最優先させるためにいろんな迷信が作り出されたことはお分かりいただけたと思います。

ですから、迷信など気にすることなく、妊婦さんでもお葬式に参列して大丈夫ですよ。

ただし、それは【妊婦さんの体調が良い】ということが絶対条件となります。

もし、少しでも「体調がすぐれないな。」と思ったら、無理をせずに参列は控えましょう。

あなたの体調はもちろん、お腹の子どもにとっても好ましいことではありません。

また、もしも出産予定日を間近に控えた妊婦さんの場合は、十分に体調管理をして参列することも可能ですが、基本的には参列をしない方向で考える方がいいと思います。

妊婦さん自身も心配でしょうし、周りにいる人も同じように心配になってしまいます。

それに、臨月の妊婦さんがお葬式に参列できないことを悪く言う人はいないでしょう。

とにかく、絶対に無理をすることのないよう、あなたの体調を第一に考えてください。

妊婦さんがお葬式に参列するときの注意点

体調さえ良ければ妊婦さんでもお葬式に参列できますが、いくつか注意点があります。

■服装

まず、お葬式へ参列する際の『服装』です。

本来ならお葬式のときには喪服を着用するのがマナーです。

でも、少しでもお腹を締めつけるようであれば、妊婦さんは無理に喪服を着なくてかまいません。

とにかく【楽な格好】であることを優先して、可能なら黒色で光沢のないマタニティー用の服を着てください。

また、冬はとても寒いので、身体を冷やさないよう十分に防寒をするようにしてください。

特に下半身が冷えやすいと思いますので、厚手のものを身に付けましょう。

お葬式では黒いストッキングを履くのがマナーですが、妊婦さんの場合は、カジュアルだとされているタイツを履いてもOKです。

靴は、なるべく靴底の低い平らなものにし、簡単に脱着できるようなものにしましょう。

■持ち物

服装に続いて、持ち物にまつわる注意点を紹介します。

妊婦さんは体調が不安定になりがちなので、お葬式の途中で急に体調が悪くなるということも十分に考えられます。

ですから、緊急時には最寄りの病院へ行くことも想定しておき、健康保険証と母子手帳を持って行く方が無難です。

いつも行く病院の診察券があるとさらに安心ですね。

また、体調が急変して気分が悪くなった場合、すぐにトイレへ行けるとは限りません。

それに、転倒してはいけないので、トイレに走って行くわけにもいかないですから、念のためエチケット袋を用意しておくといいでしょう。

■【※最重要】体調の良し悪し

お葬式は誰でも疲れます、喪主も家族も参列者も。

ですから、体調が不安定な妊婦さんは、少しでも身体に異変を感じたら絶対に無理をしてはいけません。

お葬式の出発前に異変を感じたら、参列を諦めて安静にしておくのがベスト。

体調が悪い上に疲れてしまっては、お腹の子どもに悪影響があるかもしれません。

また、家を出る段階では体調が良くても、お葬式の最中に急変することもあると思います。

ですから、体調が急変することを想定して、式中はなるべく【最後列】で【出口に近い】場所に座る方が安心です。

◆【つわり】で大変なときは無理をしない

妊娠中でツラいことの一つが【つわり】だと思います。

僕の妻はよく「つわりは、一日中ずっと船酔いをしているようなカンジ。」と言っていました。

船酔いの状態が1ヶ月以上ず〜っと続くなんて、女性はそんな大変な思いをしながらお腹の子どもを育ててくれているんですね。

だから、男は一生涯、女性に対して頭が上がりません。

もしもあなたが【つわり】がまだ収まっていないツラい状態であれば、無理をせずに参列を辞退した方がいいかもしれません。

◆匂いへの対策もしておく

あなたは妊娠をしてから様々な感覚が変化していませんか?

僕の妻は、妊娠中に【匂い】にもかなり敏感になっていました。

調べてみると、妊娠中は【匂い】に対して敏感になる人が多く、それまで全然気にならなかった匂いでも妊娠中は不快に感じてしまうのです。

お葬式は、大勢の人の匂い、または生花や焼香など、わりと強い匂いが漂う環境なので、それが原因で気分が悪くなるかもしれません。

もしも、式場に着いて匂いが気になるようなら、無理をして式場内にいる必要はないので、他の場所で待機していても大丈夫です。

◆お腹が大きくなったら参列は控える

また、大変な【つわり】の時期が終わる頃にはお腹が大きくなってきます。

そうすると、腰が痛くなるし、歩くことはもちろん、立っているだけでも一苦労というような状態になるでしょう。

そのような妊娠後期である場合は、動くこと自体が大変だと思います。

お葬式の式場や火葬場への移動だけでも身体への負担が大きくなります。

故人が身近な関係でないのであれば、お葬式への参列は控えることをおすすめします。

◆空調による体感温度の急激な変化に注意

お葬式の式場はエアコンなどの空調が効いています。

夏は涼しく冬は暖かいので快適ですが、外の気温との温度差で体調が悪くなることがあります。

冬場はもちろん、夏場でもエアコンで身体を冷やさないように、羽織る物を持って行くとよいでしょう。

もしも、急に気分が悪くなったら、式場のスタッフにお願いして、別室で休ませてもらいましょう。

◆長距離の移動

お葬式の式場が遠方である場合、故人との関係性によっては参列を辞退した方がいいです。

長距離の移動はとても疲れますし、長時間乗り物に乗っていることが身体にもよくありません。

おそらくあなたも、婦人科の医師から「長距離の移動はしないように。」と言われているのではないでしょうか?

長距離の移動は、あなたが思っているよりも身体への負担が大きいので、体調とよく相談して、決して無理をしないでください。

◆慣れない場面での気疲れ

基本的に、お葬式は頻繁にあるものではありません。

ですから、お葬式をするときには、喪主や遺族はもちろん、参列する側の人も気疲れをします。

人間は慣れない環境に身を置くと、精神的にとても疲れてしまうんですね。

ただでさえ気疲れをしてしまうお葬式です、妊婦さんにとっては更なる負担となるはず。

もしもお葬式に参列するときは、「みんなごめんね、今回は何もお手伝いとかはできないからね」くらいの気持ちでいた方がいいですよ。

まとめ:体調次第で妊婦さんがお葬式に参列しても大丈夫ですが無理は厳禁!

お葬式と妊婦さんに関するいろんな言い伝えは単なる『迷信』なので、まったく気にする必要はありません。

僕は今までお葬式に参列する妊婦さんを何人も見てきましたが、みなさん無事に出産されていました。

妊娠中のあなたがお葬式に参列するときに気にすべきなのは、迷信ではなく自分の体調が良いかどうかです。

そして、もしも途中で体調が悪くなったら絶対に無理をしないでください。

それさえ気をつけていただければ、ぜひともお葬式に参列し、故人を見送ってあげてください。
















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