祈祷は効果があるの?お寺で祈祷をする意味や体験談を僧侶が解説
私たちの願いが成就するよう、仏様や神様へ一心にお祈りすることを『祈祷』といいます。
いろんなお寺や神社で大勢の人が祈祷を受けていますが、本当に効果があるのか疑問ですよね?
結論を言うと、祈祷の効果はあります。しかし、その効果は人によって大きく変わるんです。
この記事では、僧侶(お坊さん)である僕が、
祈祷の効果
祈祷の体験談
祈祷札の取扱い方
について詳しく解説しています。
もしもあなたが『何となく祈祷に興味はあるけど、まだ実際に祈祷を受けたことがない。』というなら、ぜひ最後まで読んでみてください。
祈祷の効果はある
祈祷を受けると、
家内安全
交通安全
良縁成就
厄除け
方位除け
など、私たちのさまざまな願いが成就するといわれています。
でも、はたして本当に願いを成就させるような効果が祈祷にはあるのでしょうか?
とりあえず、祈祷の効果はあります。しかしながら、その効果は人によって大きく変わります。
しかも、無条件に全部の願いが成就するわけではありません。
なので、正直に言うと、祈祷は過度の期待をしない方がいいんですよね。
でも、だからといって何の効果もないわけではありません、必ず何らかの効果を及ぼしています。
祈祷の効果というのは、
誰かに祈ってもらうことの効果
気持ちの切り替わりによる効果
の2つがあるんです。
どういうことなのか順に解説していきますね。
■誰かに祈ってもらうことの効果
祈祷というのは、願いが成就するように『祈る』ことです。
ここでまず、祈ることでどんな現象が起きるのか、あるいは何も起きないのかといった《祈ることの効果や影響》について解説します。
じつは、『祈り』について某大学が興味深い検証をしていました。簡単に言うと【祈ることの効果】があるのかどうかを検証したんです。
検証の内容は以下のとおり、
同じ病気を抱える患者を400人集めた。
そのうち半数の患者200人(Aグループ)に対して「病気が早く治りますように」と、さまざまな地域に住む無作為に選ばれた約1,000人がおよそ1年間祈り続けた。
一方で、残りの患者200人(Bグループ)に対しては何もせずにいた。
そして、400人の患者全員と、彼らの治療に携わる医療従事者の全員は、この検証について知らない。
また、祈りを受けている患者200人(Aグループ)と祈りを捧げている人たちは、皆がそれぞれに面識はない。
ただし、祈りを捧げている人たちには、患者200人(Aグループ)の名前・病名・現在の状況が伝えられている。
このような条件をもとに、誰かに祈ってもらった患者とそうでない患者でどんな違いがあるのかを検証していました。
要するに、全く見ず知らずの他人から「病気が治りますように。」と祈ってもらったことで何か変化はあるのかを検証したわけです。
結果は、祈りを受けなかった患者よりも、祈りを受けた患者の方が【症状の回復が早い】または【症状悪化の進みが遅い】という結果が多く出たのです。
もちろん、この検証結果は単なる偶然かもしれませんし、祈りの効果を科学的に証明しているものでもありません。
しかし、私たち人間には未だに解明できていないことが多くあります。
もしかすると、祈るという行為には何か不思議なチカラが働くのかもしれません。僕は、それが【仏様のチカラ】ではないかと思っています。
誰かのためにお坊さんが一生懸命に祈ることで、祈ってもらった人に仏様のチカラが届きます。それによって自然と良い方向へ進むことができ、結果的にその人の願いが成就するんです。
ですから、祈祷の効果は、最速で直接的に願いが成就するというより、時間をかけて間接的に成就します。
祈祷を受けても、すぐに《目に見えるような大きな変化》はありませんが、じつは『お坊さんから祈ってもらった効果』がちゃんとあなたに影響しているんです。
■気持ちの切り替わりによる効果
もう一つ、祈祷の効果で大きいのが『気持ちが切り替わる』ことです。
僕は、祈祷をする主な目的は『祈祷を受ける人の気持ちを切り替えること』だと思っています。
たとえば、こんな経験はありませんか?
あなたが「これは自分の実力では無理かもなぁ・・・」と思っていたところ、誰かに「私には到底できないけど、あなただったらできるんじゃないかな?」なんて言われ、思いきってチャレンジしてみたら以意外とこなせてしまった、みたいなこと。
祈祷の効果もこれと同じだと思いますよ。つまり、祈祷を受けた人の心を『前向き』に誘導するのです。
祈祷を受けることによって、仏様が「これでもう心配しなくてもいいよ。」と、あなたを優しくて包み込んでくださいます。
あるいは、なかなか一歩を踏み出せないあなたに、仏様が「大丈夫だから、やってみなさい。」と背中を押してくださいます。
祈祷を受けた後は、「よしっ、これで何とかなりそうな気がする。」と気持ちが少し『前向き』に切り替わることでしょう。
気持ちが前向きに切り替わると、自然と行動も前向きに変わります。
そうすると、あなたは無意識のうちに【願いの成就】に向けて積極的に動きはじめ、それだけあなたの願いが成就する確率が上がります。
結果として、【祈祷を受けて積極的に行動できた人】と【祈祷を受けていない人】とでは、同じ願いがあったとしても成就する確率は大きく変わるのです。
では、同じ願いのある2人がいたとして、その2人が同じ場所で、同時に、同じように祈祷を受けた場合、まったく同じ効果となるのでしょうか?
おそらく、同じ効果にはならないでしょう。
というのも、【祈祷の効果を信じる度合い】が人それぞれに違うからです。
例えば、同じように祈祷を受けた2人でも、【祈祷の効果を強く信じた人】と【何となく疑念を持っていた人】とでは祈祷の効果は違います。
【祈祷の効果を強く信じた人】と【何となく疑念を持っていた人】とでは気持ちの切り替わり方が全然違うからです。
強く信じた人の方が、より『前向き』に気持ちが切り替わり、疑念を持った人よりもずっと積極的に行動をしていきます。
その結果、2人のその後には大きな差が出てしまうんですよね。
ですから、祈祷の効果というものは人それぞれに『信じる度合い』で変わるものなのです。
祈祷の体験談
ここからは、
僕が祈祷を受けた体験
僕が祈祷をするときにやっていること
を紹介します。
祈祷は実際に受けてみて初めてその効果を実感できるものなので、実際に体験してみることが大事です。
もちろん祈祷は宗教行為なので、それを怪しいとか信じられないという人に対して無理にはすすめません。
でも、せっかくこの記事を読んでくださっているあなたには、ぜひ一度体験してもらいたいです。
■祈祷を受けた体験
祈祷をしている寺はたくさんあります。
あなたの近くに有名な『◯◯大師』とか『◯◯不動』というような寺はありませんか?そのような寺は祈祷をしてくれるはずです。
僕は今までいくつかの寺で祈祷を受けてきました、同業者がどのようなやり方をするのか参考にしたかったんですよね。
祈祷は寺によってやり方が違いますし、それぞれの寺の特色が出るので見ていて面白いですよ。
では、今まで祈祷を受けてきたときのことを簡単に書きます。
祈祷はお堂の中で行われることが多いです。
お坊さん達が堂内に入ってくると、一気にピーンと空気が張りつめます。
そして、祈祷が始まると、読経の声や太鼓の音が堂内に響きわたり、次第に圧倒されて自然と背筋が伸びてきます。
しばらくすると、どこからか火を焚くニオイと煙が漂い、このあたりからが祈祷の最大の見せ場です。
火が大きくなり、お坊さんが全力で祈り、鳴り物もガンガン音を出していきます。太鼓の大きな音、きれいに揃った読経の声、燃えた木の節が弾ける音、これらの音を聞いていると鳥肌が立ち心が震えてきます。
ここで心が震えているのは、仏様のチカラが体の中に入ってきているからでしょう。きっと、心が仏様を感じて大きく反応しているんですね。
もしも僕が、最初から【怪しい】とか【信じられない】という気持ちで参加していたら、あまり心が震えないでしょう。もしかすると、全く震えないかもしれません。
でも、僕は仏様のチカラを全面的に信じているので、バンバン心が震えます。
祈祷を受けるときのコツは、恥ずかしがらずに【信じてみる】ことです。『信じる者は救われる』という言葉がありますけど、あながちウソではありませんよ。
せっかく祈祷を受けるのですから、そのときだけでも仏様のチカラを信じてみましょう!
祈祷が終わると、少しだけ前向きな気分になると思いますよ。そうです、だいたいの場合は【少しだけ】です。
僕自身の経験や今まで聞いてきた話では、祈祷を受けて大きく気分が変化することは少ないです。祈祷というのは、目に見える大きな変化はなくても地味に効果が出てきます。
だから、祈祷を受けたからといって「あ〜、なんかすごく気分が変わった〜っ!」ということはないでしょう。
僕は、そういう【あえて全部を分かりやすく与えない】ところが仏様のよいところだと思いますし、好きなところです。全部を一気に与えてしまうと人間はダメになることを仏様はよくご存じなんですよね。
でも、安心してください、ちゃんと祈祷の効果を信じた人は後からジワジワと祈祷の効果が出てきますから。
■祈祷をする側が行なっていること
僕はお坊さんなので、僕が【祈祷する側】にもなります。
仏様のチカラをお借りして祈祷することを、別名『加持祈祷(かじきとう)』といいます。
仏様を自分の中でじっくりと感じながら、仏様と私たちが心を通わせ一体となることを【加持】といいます。
つまり、仏様と僕たちお坊さんが1つになって、あなたの願いを成就するよう一心に祈ることが加持祈祷なのです。
仏教の祈祷では、主に『護摩(ごま)』という方法を用いて複数のお坊さんが読経する中で行いますが、そのときにも加持祈祷でお勤めしています。
護摩とは、お坊さんが壇上で火をあげて、そこへ仏様をお招きして、その仏様とお坊さんが一体となって願いが成就するように祈ることです。
あなたもテレビなどで、お坊さんが四角い壇の上で火を焚いているのを見たことありませんか?
あれをしているお坊さんは、目の前で火を上げるのでとても暑いんですよ。しかも、火の近くにある金属の仏具が熱せられて、うかつに触るとヤケドをします。
しかし、しばらく護摩の修法(作法)をしながら火を見ていると精神が集中していくんです。精神が集中したくらいのタイミングで【祈る】体勢に入ります。
まず、仏様と自分が一体になる様子をイメージします。これがとても大事なので、じっくりと時間をかけます。
具体的には、【仏様が自分の体内に入ってくる】というイメージをし、それから、【仏様と自分の身体が完全に一致した】とイメージする、みたいなカンジです。
次に、本格的に【祈り】に移ります。
願主の顔を思い浮かべ、願いが成就して笑顔になる様子を頭の中に描きながら祈ります。
病気を治したいという願いがあれば、事前に患部の場所を聞いておき、患部に仏様の力が届く様子を頭の中に描きながら祈ります。
このように祈ることに集中していると、目の前で火が上がっていても、そのときにはさほど暑さなんて感じません。
祈祷を終えて、祈祷を受けた人の顔を見ると、だいたいは少しだけ【明るく】なっています。
僕はそれを祈祷の効果があった証拠だと思っています。
護摩札の置き場所は?
祈祷を受けると、護摩札(祈祷札)をもらうこともあります。
祈祷をした護摩札には仏様のチカラが宿り、札に書かれた願い事を成就してくれる、といわれています。
そして、もらってきた護摩札は、一般的には1年間ほど自宅に置いておきます。
では、護摩札は自宅のどこへ置くのがよいのでしょうか?
あなたの家に仏壇があって、なおかつ仏壇の中に護摩札を置けるスペースがあればそこへ置いてください。仏壇がなければ、他のどこか【あなたの目線より上となる場所】に置いてください。
もしも、あなたの目線より上で、なおかつ【家中を見渡せる場所】があるのなら、そこへ置くと更にいいです。
もしも現在あなたの家に仏壇がないのなら、いっそのこと購入してもいいのではないかと思いますよ。
多くの人はご存じないのですが、仏壇というのは、誰も他界していなくたって購入していいものなんですよ。
まとめ
祈祷を受ける多くの人は「自分の願いがすべて成就してほしい」と思っています。
自分にはできないことを仏様のチカラで実現させてください、と願うわけです。
しかし、残念ながらそれは仏様のチカラだけではどうにもなりません。
仏様は私たちのことを真剣に考え守ってくださっているので、そんな簡単に願いを成就させてはくれません。
仏様は、ただ【大事なきっかけ】を与えてくださるだけです。その仏様からいただいた【大事なきっかけ】をちゃんと活かすかどうかは祈祷を受けた人次第。
だから、祈祷の効果はあるのですが、人によって大きな違いが出ます。
あなたも、もしも祈祷に興味があるのなら、まずは一度、試しに体験してみてください。
この記事を最後まで読んでくれたあなたのような人には、きっと大きな効果があるはずですよ。