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たかが観光客。なに偉そうになってるんだ

「中国一綺麗な古城は麗江古城だと思う」

麗江?どこにあるのだろう??
雲南省、麗江との出会いはこの時だった

2016年9月私は中国の湖南省にある鳳凰古城を訪れた
古城…ぱっとイメージできる言葉に置き換えたら旧市街地になるのでしょうか

鳳凰古城は少数民族のトゥチャ族とミャオ族が多く暮らす土地で、沱江(だこう)という川沿いに昔ながらの建物が並んでいる
その沱江を小舟でゆっくりのんびり下ってみた

鳳凰古城に来るまでの道はたくさんのクラクションと静かに突っ込んでくる電動バイクに色んな感覚が疲れ切っていた
そんなへとへとの身体に心地よいものが流れ込んでくる

古城っていいなぁ

この鳳凰古城の体験から中国の古城に興味を持ち、帰国後中国内の古城調べにたくさんの時間を費やした

広い中国にはたくさんの古城がある
やがて中国一綺麗な古城は麗江古城ではないかという数人の言葉にたどり着いた
頭の中の世界地図に雲南省と麗江古城が刻まれ、いつか行きたい場所リストに入った

麗江古城に対して綺麗だと絶賛する声はたくさんあるが、観光地化が進んでおりがっかりしているという声もチラホラ見かける

まぁ観光地化なんてどこだってそう
大阪城だって中身はバリアフリーで展示場になっているし...なんて思っていた

時を経て2024年
3月から4月にかけて土曜日出勤が3週続くことが確定した

ちょっと待て意味わからんそれなら2月に海外行ったるわ!
ということで2月にどこかに行くことが決まった
この休日が連続で潰れると海外旅行に行こう行ってやるという思考回路は自分でもよく分かっていない

2月は超繁忙期で休みが取れても3連休+1日の4日間だ
狙いは2月22日〜25日

2月といえば中国は雲南省にある元陽の棚田が一面水が張り、空が映って綺麗らしい
よし元陽に行くぞ!

と調べてみたものの最低5日はほしい日程だった
ん?雲南省といえば麗江古城がある?よし麗江だ!

ということで何年か越しの麗江古城への旅が決まった
4日の滞在であるが2024年2月時点は中国入国に短期滞在でもビザが必要だった

飛行機を取り、ホテルを取り、旅程を確定させてビザを申請する
手元に中国入国のビザが届いた時はなぜか不安がいっぱいだった

7年振りの中国、楽天モバイルはネットが通じると言うが本当に大丈夫だろうか、一応SIMカードを買っておこう、現地でアリペイはちゃんと使えるのか...
こんなにも行く前に不安を感じた旅は初めてかもしれない

そして旅行当日
入国後まずはネットの確認、楽天モバイルも購入したSIMカードも使える
次にコンビニでアリペイの支払い、地下鉄でアリペイの支払い

全て大丈夫だった

7年振りの中国はスマホの有無で左右される国になっていた

乗り継ぎの上海で諸々の確認を済ませていざ麗江へ
麗江空港は霧に包まれ標高が2400mということで上海と比べて少し空気が薄いような気がした

空港を出てすぐバスで麗江古城に向かう
バスの券売機は中国人の身分証明カードが必須でバス会社っぽい人の腕を掴んで「我是日本人」と助けを求めた
結局QRコード決済も中国の電話番号の登録が必須で現金20元を渡して乗せてくれた

出発してすぐ、周りの民家は白い壁に何十も積み重なった瓦葺きの屋根だ
この地域に住む少数民族の昔ながらの家として様々なネットで紹介される家が出てきた
頭の片隅に記憶された「麗江古城は観光地が進んでいる」という言葉が思い起こされて、どうか今目の前にあるような昔のままの生活が残っててほしいと祈った

古城付近に来ると道路の案内表示に少数民族が使用している象形文字、トンパ文字が現れやっと麗江に来れたと実感した

古城内にホテル取っていたのでとりあえずホテルを目指して歩く
迷路のような古城の道にあーでもないこーでもないとスマホとにらめっこして道を行ったり来たりして何度か道を間違った挙げ句やっとホテルに辿り着いた

一息ついてさて古城の観光へ
迷路のような石畳の道にズラッと立ち並ぶ昔ながらの家…は全てお店に改築されていた

あぁこれが観光地化が進んでいると言われる所以かと思いながら歩き回った
途中雨が降ってきて軒下に座り雨宿りをしながら往来する観光客と店で商売する人をぼーっと見るなどしてみた

バスで祈った昔のままの生活はここでは見れないかもしれない

夜はオレンジ色のライトアップが綺麗でそりゃ観光客もたくさん来るわと一人で火鍋を食べながら考えていた

翌日は一足伸ばして電車で1時間半の街、香格里拉(シャングリラ)へ
trip.comで電車を予約し、乗車はパスポートを見せると大丈夫らしい

…本当か?予約表とか要らないの?パスポートだけでいいの?いささか不安を抱えたままtrip.comの予約表を握りしめて麗江駅へ向かう

改札でドキドキしながらパスポートをかざすと本当に通れた!

元々麗江から香格里拉はバスで5時間程度かかる場所だった
そこが2023年11月に電車が開通し、外国からネットで乗車予約ができる、そして片道1時間半ということで日帰り旅行が可能になった

時代の進歩はすごい
が、電車で香格里拉市に入った途端購入したSIMカードが使えなくなった
結局、香格里拉では楽天モバイルしか使えなかった

スマホが使えないということは翻訳アプリもアリペイも地図も使えなくなり、一気にこの旅の難易度があがる
それは避けたいので、アリペイが使えるサブ機に楽天のSIMカードを入れ替えた

サブ機なので最低限のアプリしか入れておらず、ラインやツイッター、インスタグラムなど日本との繋がりは一旦断って香格里拉を旅した

香格里拉の目的はチベット仏教のソンツェリン寺に行くこと
雲南省最大とも言われるお寺で、数ヶ月前に訪れたラダックのお寺とはどう違うのか興味があった

香格里拉駅からバスに乗りソンツェリン寺へ向かう
もちろん支払いはアリペイだ

ソンツェリン寺はなにやら今日はお祭りの日らしい

ごった返す人、楽器の音と人の歌声(お経かも)、線香の香りで鳳凰古城に入る前の感覚が疲れる体験が再び訪れた

なんとか人の流れに乗りお寺の広場にたどり着いた
担ぎ上げられた僧侶が広場を経由してお寺に入っていこうとする
どうやらお寺に入るとお祭りは終了でこの広場はクライマックスの場所だ

標高3500m、2月下旬、最高気温は1度
眼の前にはさぶいぼが出ながらもえんじ色の袈裟を身にまとった若い僧侶、その僧侶がカターと呼ばれる白い布を投げる

そこら中でカターが投げられる

こうしてお祭りは終わった

次に広場の椅子が移動されて集まってくる僧侶
河口慧海の本で見た問答修行が突如目の前で始まった

2人1組で問いかける方と答える方の二手に分かれ、問いかける方は手を叩き、なにかのリズムに則っているような声で問いかける

活字でしか知らなかった概念が立体となり目の前で繰り広げられている
この瞬間幸福感が身体にじわっと広がった

香格里拉の日帰り旅行はあっという間に終わり麗江駅に帰ってきた

行きは不安が大きかった麗江駅、今は心がホクホクしている
アリペイの支払いも慣れたものでバスで麗江古城に帰ってきた

昨日は雨だったからだろうか、今日が土曜日だからだろうか、古城は昨日より人でごった返している
マクドは順番を抜かされまくって注文ができず店を出た
一番人だかりができている店を覗いたらクラブのような場所で下着姿の女性が踊っていた

店は観光客向けの商売に改築されており、昔ながらの少数民族の生活は見られないかもしれない
けれども古城内で見かけた人は誰一人悲しさや怒りを表している人はいなかった

観光で訪れる人もここで働く人もみんな笑顔だ
じゃぁもうそれでいい
麗江古城にいる人がみんな幸せそうならそれで充分だ

自分の心が満たされているからだろうか、ここに来た時感じた多少のがっかりはなくなっていた

少数民族が民族衣装を脱ぎ古城を離れ、郊外のマンションに住んでいる人も最近は増えているらしい
しかし、昔ながらの家に住んでも住んでいなくても生活の美しさが損なわれるわけではない
その土地の人が今どんな生活をしているのか、その背景は何なのか、古くから受け継がれるもの、新しく生まれ変わるもの、色んな視点から物事を判断できた方が旅を楽しめるのではないか

がっかりからスタートした旅は何事も自分の見方・考え方次第でどうにでもなること、期待通りでなくても楽しめばいいんじゃね?ということを教えてくれた旅になった


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