旅を通じて成長するではなくて旅でしか成長できないだった
世界中で今この瞬間は私が一番幸せなのではないかと感じたことがある
インドの最北部チベット文化圏が色濃く残るラダックに行った際、現地で原付を借りて1人で旅をした
もともと自分の知らない世界が見てみたい、日本と"差"が大きなところに行ってみたいという気持ちが強くあり、標高3000mを超える人里離れた場所に位置するチベットのお寺の写真にずっと心惹かれていた
本当は5日の休みでインドのダージリンで紅茶を飲みトイトレインに乗るつもりだったが旅程を組んでいくうちに5日では足りなさそうなことが判明し、いつの間にかラダックに行くことになった
もちろんラダックも5日では足りない
身体が標高になれること、じっくり回りきるにはもっともっと必要だ
でも普通のサラリーマンはそうは言ってられない
ラダック滞在3日の弾丸旅を決行した
googlemapや過去渡航した方のたび記録を見て、ラダックの中心地レー付近のチベットのお寺を巡ることに決めた
方法は車をチャーターする、現地でバスを乗り継いでいく、そしてバイク旅をしてい人も結構いた
3日間という短い時間でバス乗り継ぎは非効率だった
行くなら車チャーターかバイク旅、小型バイク免許を保持しているがスーパーカブ納車後15分で軽に追突されたことがある私は乗るなら原付だなと決めていた
最終どうするかは現地で考えよう
一人旅のこうゆう気軽さが大好きだ
インドの首都デリーからレーに降り立った
いきなり標高3500mになるので空気の薄さを感じる
少し歩いたら息が切れる
が、高山病の頭痛はなくなんとかいけそうだ
到着日はゆっくりして次の日、ホテル裏のレンタルバイク店で原付を借りた
インドスズキのAccess125
少し試運転させてもらい、これならいけそうだと確信して出発
まず目指すのはレー付近で一番多きな寺院ティクセゴンパ
レーの街を抜けるとインダス川を右手に一本道になった
黄土色の大地、目線と同じ高さにある白い雲、日本より青く見える空、全身に感じる風、照り付ける太陽
そこを1人原付で走っていた
1時間程度でティクセゴンパに到着
チベットの寺院に来るのは初めてだ
ビビットカラーの装飾、僧侶が読経する場、敷地内に学校もありなんとも興味深い場所だった
次は少し移動してチェムレゴンパへ
ここは見た目にとにかく惹かれて今回一番行きたかったとこだ
途中Mapsmeがとんでもない場所に連れていき、原付がはまってしまうというハプニングがあったがなんとかたどり着いた
遠くにチェムレゴンパを目にした時の高揚感は忘れられない
欧米人グループが観光しており、その後ろに1人着いていった
外観のかっこよさも良いが、祈りの場が吹き抜けで外の明かりに頼っているところが特に気に入った
大満足のまま帰ろうとしたところ「tea tea」と僧侶から呼び止められた
チベットのteaと言えばバター茶か?バター茶体験もできるのか?
と過去チベット文化圏を旅した人の旅行記にあったバター茶に期待に胸を膨らませて僧侶に着いていった
入口すぐのキッチンで1杯のコップを渡された
チャイのようなものだが飲んでみたらバター茶だった
口に含んでみると遠くの方にバターがいるようなうすーい味、そして唇はテカテカに
バター茶を堪能していると気づけばカレーが盛り付けられたお皿を渡されていた
「そんな…いいのに…」と思う気持ちと「やった!お腹空いていたんよね!」と思う気持ちがあった
僧侶と一緒にカレーを食べる
途中猫が私のリンゴを取ろうとしてきた
会話は「where are you from?」「Japan!」それだけ
ここは本当にインドか?と思うくらいあっさりしていた
だからこそこの空間を俯瞰して見る余裕があった
ここに行きたいと夢見た場所に航空券を買い旅程を立て、原付を使って自分の足で来る
見たい景色が見れた
それだけで充分なのにカレーとバター茶を僧侶と一緒に食べるという体験もできた
カレーの美味しさとあの空間の暖かさは忘れられない
あぁ多分今この瞬間世界で1番幸せなんだろうなぁ
帰国後もこの出来事を思い出すといつも幸せな気持ちが身体に広がる感覚があった
辛いことがあっても私はラダックで見たい景色を自分の足で見に行って、そこで人の温かさを感じたんだぞ?こんな幸せなことあるか!?と思ったらなんか乗り越えられた
旅以外でも生きていて幸せだと感じることは沢山ある
けれども頭を使って足を動かして自分で取りに行った幸せはより長く幸福感として自分の中に残り日々の生活で活かせている気がする
旅を通じて考え方が変わった
考えを変えるには行動するしかない
行動するには好きなことでなければ動けない
私にとって好きなことは旅すること
だから旅を通じて成長する
そう思っていた
時は流れて1年後
仕事で2年目の社員と話していた
「知識を入れるだけでは実感が伴わない
実際にやってみることで理解出来る
行動することが大事、それは仕事を通じて学んだ」
まったまった
私がラダックまで行って理解した概念を仕事を通じて20代前半の子が得ているだと?
私だって仕事を通じて成長したことはある!
相手が受け取る状況を考えてメールの文面を作成する
資料を共有する時は箇条書きで要点をまとめて一緒に送る
催促はさりげなーく遠回しにクッション言葉で
考えてみたらどれも具体的なことばかりでいかにトラブルなく自分の仕事をサクサク進めてお金をいただく作業の効率化に重きを置いているだけだった
サラリーマンなんだから与えられた仕事をこなせばそれで良い
だけどたくさんの時間を仕事に費やすなら仕事を通じて考え方が変わることや技術や経験など成長できるならもっと良い
それを現に実践している私より若い人が目の前にいる
あぁ私は旅を通じて成長するではなくて旅でしか成長できない人間だったんだ
成長するには旅でなくてもいい
その先に成長はないかもしれないし、成長しなくてもいいかもしれない
何でも旅と同じように前向きに楽しんで取り組んでみてもいいんじゃない?