欲しくてたまらないもの
娘は、かまって欲しい時はこちらの都合など気にもせず、視界に入り込む。
私が何をしていようと、気づいていないフリをしようと、顔をぐいっと持ち上げ自分の方に向かせ、話しかけてくる。
いつものように近づいてきて、顔をぐいっと引き寄せられる。
振り向くと、泣いていた。
待って。とタオルに手を伸ばすももう遅い。
涙と鼻水とよだれが乾燥した私の肌に染み渡る。
顔を引き離すとさっきまで泣いていたのにもう笑ってる。
顔が近すぎて私の視界は定まらない。
目がつながってみえる。
鼻が潰れるんじゃないかってくらいに引き寄せて顔を押し付け、おしゃべりをする。
娘はとてもお喋りだ。
ホンヤクコンニャクがあれば。
何度思ったことか。
煮物のこんにゃくが好きで良く食べる。
あぁ、これがホンヤクコンニャクだったなら。
どんな時に悲しくて泣いているのか、もっとわかってあげられるはずなのに。
ホンヤクコンニャクがあったなら
どんなことにうれしくて、どんなことが楽しくて笑っているのかわかってあげられるはずなのに。
あなたの目の前にどんな世界が広がっているのか、もっと知りたいんだ。
あなたの中に湧き出る思いが知りたいんだ。
ホンヤクコンニャクがあったなら
私のお腹で育っていたはずのあなたが、今私の目の前にいて、そのカラダから作り出した水分で、乾いた私の顔に潤いを与えてくれている。
私が持っている言葉ではうまく伝えられないこの感情をもっと上手に伝えられるはずなのに。
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