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イタリアに渡った日本の着物コレクション~Kimono: Mirror of Modernity at Japan Museum SieboldHuis in Leiden, the Netherlands

海外に長く住んでいると、日本語や日本食、少しでも日本を連想させるものをみると心温かく、特別な感情を抱きます。それも、日本文化に敬意をもって、大切にされてきたものだと特にそう感じます。

オランダのライデンにあるシーボルトハウスで開催していた着物の展覧会では、それを強く感じました。

この展覧会で展示されているのは、イタリアのマナヴェロ・コレクションが所蔵しているもので、19世紀から20世紀に目まぐるしく日本が変化した時代の着物たちです。

西洋文明や文化が洪水のように日本に入ってきたとき、日本の伝統衣装である着物もその波を逃れることはできませんでした。着物の柄や、使用される色彩などにより、着物は当時の「モダン」な世界を映しとっています。

近代の波が日本に入ってきて、西洋人が着ていた「洋服」が一般市民のあいだに広まっても、以前として着物は人気があったそうです。とくに若い女性はまだまだ着物のほうが人気だったようです。

そういった若い人向けに新しいデザインも生まれました。

上の写真の左から2番目、白地に大きな絣模様のようなデザインはオランダのアーティスト、モンドリアンの作品からインスピレーションを受けて制作されたものです。

Piet Mondriaan, Victory Boogie Woogie, 1942-1944, Kunstmuseum Den Haag 

そして、もうひとつ奥の大きな唐草文様のようなものはクリムトの作品から着想を得たものです。

Gustav Klimt, The Kiss, 1907-1908,  Österreichische Galerie Belvedere, Vienna, Austria

どちらも日本の伝統的な文様が西洋作品の影響を受けることで、色は鮮やかに、大胆に大きく変化しています。

この種のモダンなであざやかな色合いや抽象的な文様などがデパートの和服売り場を彩りました。新しい流行は女優や芸妓たちを通じて、広く受け入れられていきました。

西洋的な鮮やかな色合いでさまざまな新しいデザインの反物が次々に作られた背景には、技術の発展が関わっています。それにより、さまざまなデザインのものが、早く安く作れるようになったそうです。

女性の着物のデザインが西洋美術に影響を受ける一方で、男性と子どもの着物には新しい技術や産業、はたまた愛国的精神による戦いに関するモティーフが用いられています。

これらは、羽織裏にさまざまな趣向を凝らしたも黒紋付きのです。着ているときは外から分からない、見えないおしゃれです。

手前の羽織は外国への憧れの表れかマンハッタンの摩天楼があり、一番奥には国威高揚のためか戦艦が描かれています。

戦争関連のデザインも多くて、今とは違う感覚と時代背景を感じてうーんと考えました。

同じく黒紋付きの羽織のなかに、オランダ関連のもので面白いものがありました。

内側にオランダの帆船などオランダにまつわる浮世絵をデザインに採用した布地を張っています。

近くにはもととなった浮世絵作品の説明がありました。

この展覧会には着物をよく知らない人はもちろん、知っている人たちにとっても有益な解説がいたるところに掲示されていました。

反物からいかに一枚の着物に仕立てるのかといのもあって、こういう丁寧な説明にとても好感がもてました。


『着物:モダンの鏡』展
2024年7月19日から同12月8日まで

SieboldHuis
Rapenburg 19
2311 GE Leiden



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ミイル、オランダ在住のアート好き
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