交わる魔装 黎と紅黎~黎の軌跡Ⅱプレイ感想~
前置き
この記事は日本ファルコムの"黎の軌跡Ⅱ -CRIMSON SiN-"をクリアした感想及び個人評です。
内容はネタバレ前提になるのでご注意ください。
はじめに
先月カービィをクリアして、次に着手した積みゲー崩しは黎の軌跡Ⅱになりました。いつものようにトロコンクリアしたので感想を書いていこうかなと。
1周目ナイトメアとかできる腕じゃないから、1週目Easyで稼ぎつつクリアして2周目でナイトメア挑戦って感じでした。
全体評価
総合評価 70/100
システム 80/100
シナリオ 50/100
キャラクター 90/100
やりこみダンジョン 45/100
難易度・バランス 85/100
システム評価
システムは軌跡シリーズ定番の進化なので間違いなし。
まずはバトルシステム。
前作 黎の軌跡から導入された アクションバトルとコマンドバトルの切替 は、面倒な所と便利な所の両方あるけども、全体で言えば便利な面の方が大きいイメージ。
特に(それがいいかは別として)やりこみダンジョン"お伽の庭城"や2周目のダンジョン攻略で雑魚敵スキップしやすいのはとても助かる。
次に軌跡といえばのクオーツシステム。
こちらも前作と同様AIであるホロウコアを中心に攻撃・防御・アーツ・Exの4ラインにクオーツをセットしていき、属性値の組み合わせでシャードスキルがパッシブスキルとしてセットされる。
アーツはアーツドライバでセットするシンプルなシステムになったので、初代のようなパズル要素はシャードスキルに移った感じ。
使用可能アーツの違いによるキャラ毎の特徴が薄くなった面は残念だけど、プレイ上の都合としてはストレスフリーになったので、これでよかったのだとおもう。
ただそのせいで、えてして強アーツによる蹂躙ゲーになりがちなのはよし悪しかなぁ。今回は特に鯨ゲーだった。鯨強すぎる。
最後に、シナリオのウリでもあった分岐シナリオ。これは厳密には2つのシステムの複合。
1つ目はパラレルにシナリオを進行する形式で
ヴァン主人公のAシナリオ
→共和国各地に出張してのシナリオ
スウィン・ナーディア主人公のBシナリオ
→ヴァン不在中の首都を活動するシナリオ
とそれぞれのシナリオを楽しめるシステム。これはとてもよかった。
対象は全3章のうちの2章までだけど、今回は各章のボリュームが大きいので十分なシナリオ量だったし、Bシナリオのスウィン・ナーディアペアは今回のサブ主人公みたいな立場なので適役だった。
もう一つが巻き戻りシステム。
これはキーアイテム"ゲネシス"が今作で発揮するようになった"時間の巻き戻し"に関するシステム。
具体的には"所持者が窮地に陥った場合に自動発動して少し前の時間に関係者の記憶だけを引き継いで巻き戻す"というもの。
要は「DeadENDへたどり着いたら、分岐点まで戻れる"というアドベンチャーゲームのような仕組み。
これ自体はシナリオに組み込むにはよいシナリオフックなのだが…その問題点はシナリオ部分で後述。
シナリオ
本作の問題点の1つ目。
軌跡シリーズはそのシナリオがウリ。そして本作も全体のプロットやテーマはとても良質…なのだが、大きな問題点が2つ。これが自分のシナリオに対する評価を大きく下げている。
問題点の1つ目は、先述の巻き戻りシステムに絡む点なんだけど、死に戻りの頻度が高め&BadENDへの入り方が雑なルートが結構多い。
特に顕著なのが第3章で、「敵に奪われたゲネシス6つを死に戻りしながら取り戻していく」という流れなのだけど、1つを取り戻す間に3~4回は死に戻りをする。
加えて「呼び出しに応じて1人で出向いて死ぬ」とか「明らかなジリ貧なのに策もなく粘って死ぬ」とか、ヴァンの特徴である「抜け目なくしぶとい上に鋭いカンを持っている」という所を卓袱台返しするような展開がそれなりに起きてしまっている。
その最たるものが第3章Dルートの爆死。いくら修羅場経験のある情報屋とはいえ、素人のハルが仕掛けた(それも違和感を感じていた)トラップにノコノコとひっかかって死亡、はさすがにキャラ崩壊と言われても仕方ないかと。
これがまだ間章のように"選択肢や条件を揃えることで初手から回避可能"であったなら、探索が不十分だったペナルティでいいと思うのだけど、今回はシナリオ経由が必須なので…
2つ目の問題点は、単純な文章力。
これは閃の軌跡Ⅰから起きていたことなのだけど、ライターの文章力が低い。特に「キャラクターごとの言い回しのメリハリがついていない」事が特に目をつく。
主要人物だけに絞っても「一般的でない独特の言い回し」や「セリフの癖」がどのキャラクターをとっても類似してしまっている、言い換えれば「口調を使い分けられていない」のが大きな問題点として続いてしまっている。
流石に閃の軌跡の頃に比べたら、"一般的には使わない言い回しを色んなキャラが共通して使う"という例はかなり減少したが、それでも同じような言い回しを多くのキャラクターが共通して使用するのは、他の作品ではあまり見られない悪癖と言わざるを得ない。
数多くのキャラクターが登場する軌跡シリーズでは、口調の使い分けはとても大変なポイントであることは理解できるのだけど、その口調パターンがあまりに少ないので擁護できる状態ではない。
ここは引き続き改善を極めて強く要求したい点だと思った。
キャラクター
今回も新旧キャラのいずれも魅力的なのはシリーズ恒例。ここについては間違いなし。主人公のヴァン・Wヒロインであるエレイン・アニエスを始めとした解決屋メンバーの面々もさることながら、今回の主役とも言えるのは創の軌跡以来の登場となるスウィン・ナーディアのカップル。
今回の事件の黒幕絡みで出番が多く、《庭園》に所属していた過去の精算が話の重点におかれていたので、ヴァンよりも主人公していた面がある。
ただ一方で、キャラクター周りでの不満点は黒幕がかなりポッと出のオーギュストであることと、グレンデル=ゾルガの正体がディンゴ・ブラッドであること。
どちらも単純に"匂わせ不足"で、正体が明らかになる所でも「言われてみれば!」とはならず「えぇ…??」ってなっちゃう。ヴァンやエレインたちは一部勘づいてたりするんだけど、匂わせ語りなさすぎて自分には唐突すぎた感があった。
特にオーギュストの方は「へぇ、敦盛みてきたのね」「ここが本能寺かぁ」からの「やはり黒幕は信長か」くらいに間がぶっ飛んでる。もっとあからさまに存在匂わせていけ。
とはいえ、ぽっと出して「お前だれよ」となった黒幕とか、それこそFF4のゼロムスやDQ5のミルドラースを始めとしてちょいちょいいるわけだから、今更といえば今更かな。
今回はキャラクター個別評は長いので最後に後回しへ。
やりこみダンジョン
今回のやりこみダンジョン《お伽の庭城》
VRチャットが黒幕に乗っ取られてダンジョン化しちゃったもの。
軌跡定番のやりこみダンジョン…ではあるんだけど、流石に今回はダンジョンの階層が多すぎるのと、タフな敵が多いのでだるさが際立ってしまっていた。
とはいえ、クラフトの強化はありがたいし(PCが多すぎて逆に大変さが際立ってるけど)やりこみには必須だし、なにより最深層ボスは今後の匂わせも含むので、避ける選択肢は取りづらいのが悩ましい所…
もうちょっと道中は手軽に稼げるように、敵を弱くするか各種ドロップ率をあげるかしてほしいなというのが率直な感想。
いずれもやりこみダンジョンの割にシナリオの伏線が混じっていて、嫌なら回避というのができないのが最大の問題点なので、ここはなんとかしてほしいなぁというところかなぁ?
難易度・バランス
やりこみダンジョンはだるい所が多いものの、メインシナリオ的にはバランスは良好なイメージ。
黎の軌跡で導入したアクションバトル←→コマンドバトルの行き来するシステムのおかげで、レベルが十分なら敵をスルーするのも楽になったし、稼ぐときも格下の敵ならアクションパートで数を狩りやすい。
じゃあコマンドバトルはというと、アクションバトルでは攻撃手段が少ない影響でダメージが叩き出せないので、同レベル~格上の敵であればコマンドバトルに持ち込む必要があるというのが良いバランス。
特に今回ラスボスが"強制的にコマンドバトルを解除してアクションバトルに持ち込む"なんて展開はかなり焦ったし、演出としても戦闘バランスとしても良好だったと思う。
キャラクター個別評
軌跡シリーズはキャラクター数が多いので主要の5人に絞る
(PTメンバーに絞ってすら20人近くいるので…)
ヴァン・アークライド
我らが主人公、裏解決屋。
相変わらずのお節介焼きの甘党。今回は首都の事務所をスウィンとナーディアの二人に任せて前半は共和国各地の出張めぐり。
グレンデル周りの中心人物ではあるので話の中心にはいるのだけど、シナリオの軸はどちらかというとスウィンとナーディア側なので1よりは気持ち出番が少なめ。
今回は巻き戻りに巻き込まれまくってひたすら死にまくる担当。とはいえシナリオの所で言った通り、現代版シティーハンター的なキャラなのに、シナリオの都合でちょっと勘が鈍ってるような場面がちょいちょいあるのが残念な所。
アニエス・クローデル
Wヒロインの片翼、裏解決事務所のバイト秘書。
彼女のもつゲネシスは相変わらずの厄ネタ(共和国編の重要アイテムなので当然だけど)…というか、絶対秘宝絡みでしょこれ。
今回は学校の学祭のために首都に残ってスウィン・ナーディアの二人のお手伝い。学生生活も初めて描かれて充実した毎日を送れている様子。
まぁ、今回のDEAD ENDでそれをぶっ壊されるシーンを何度も見せられてて労しい限りだけど…
前作以上にヴァンへの恋愛感情ははっきりと自覚している一方で、エレインとの関係も良好であり、三角関係としてみるとかなりすっきりした関係の様子。
エレイン・オークレール
Wヒロインのもう片翼。遊撃士協会のアイドル(言い方)
今回は序盤からPTインとしたと思ったら早速DEAD ENDに巻き込まれた不幸なヒロイン。
前回は解決事務所の面々が中心に話が進んだ影響で、ヒロインなのに若干蚊帳の外だったけど、今回はしっかりヒロインしてた。
ヴァンとはさっぱりと付き合ってるように見えて、頭で割り切ってるつもりで感情で未練タラタラだったりして、だけどそれを自覚したくないようなところもありと面倒な所がよく描写されてて、ヒロインの面目躍如という所
(大体ヴァンが悪い)
スウィン・アーベル
新生帝国ピクニック隊より共和国編に参戦。《3と9》の3の方。
今回はナーディア共々、《庭園》に縛られた過去を精算するお話なので出番は多め。
今回の事件を経てナーディアとはより一層強い絆で結ばれ、その仲睦まじさはエステルとヨシュアを思い出させるほど。
もっとも、スウィンはナーディアの恋心に気づいてないニブチンなのでその成就はまだ暫く先のようだが。
ナーディア・レイン
相方のスウィン共々新生帝国ピクニック隊より参戦。《3と9》の9の方。
スウィンと同様出番は多め。彼女は中盤でスウィンに置いていかれて双頭つらい思いをしたけど、過去に区切りをつけれた上にスウィンとも絆を深められて、雨降って地固まるといった結果に。
その社交性と観察力の高さと、他人との距離のとり方の上手さは今回も健在。物語の中心となる前半は縦横無尽の活躍と言っても過言ではないかも。
それはそれとして、スウィンには妹と見られっぱなしなのでもうちょっと直接的にアプローチしないとこれ以上進むのは難しいかも?
まとめ
今回は「共和国編」としては8つ目のゲネシスとその力の謎というパートではあったんだけど、全体的にはスウィン・ナーディアのお話の比重が多めで、共和国編の進捗としては閑話休題となっていた感じ。
正直、伏線回収はほとんどできず、伏線が山程追加された状態かな。
実際話の進行はプラスマイナスでいうなら微プラスといったところ。
次回作の<界の軌跡>でガッツリ動いてくれるとは思うけども、もう物語をたたみに向かってると言う割に、実際は風呂敷を広げまくってるので本当に終わるかな?というのが心配になる。
一方で、先述の通りシナリオの文章力は成長しつつあるとはいえ客観的にはレベルは標準に達していない状態が続いているので、せっかくの高水準なシナリオプロットを(台無しとまでは言わないけど)低評価にとどめてしまっているのは極めて残念な点。これは引き続き改善してほしい。
おまけのぼやき
シナリオ担当の方は、一度古典含めて小説を手当たり次第に読み漁ってインプットを増やすと、一気にクオリティあがる気がするんだけどなぁ…
あと20周年インタビューで空の軌跡の移植について言及があったけど、せっかくなので今の技術でリメイクしてもいいんじゃないかな?こっちも期待してます。