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映画 メアリーの総て
先日とっても良い映画を観たので、感想を書きたいと思います。
その映画は
『メアリーの総て(原題: Mary Shelley)』
題名の通り、メアリーについての人生の一部分が描かれています。
Mary Shelley は、あの有名な『フランケンシュタイン』の作者。
今や語り継がれていて数々のホラーに登場する怪物。そしてそれを創り出したフランケンシュタイン博士について描いた作者がどんな人物なのか私はそれほど知らずにいました。
このメアリーという女性の生き様を描いたこの映画は、人の感情の本質を色々な角度から見事に描き上げていて胸を打たれました。
この作品には、メアリー自身だけでなく様々な人の感情や本質が絡みあい味わい深かった。
愛と憎しみ、正義と矛盾、生と死。
そして幸福とは何か。孤独さとは何か…。
1818年に産み出された、『フランケンシュタイン』という作品。
その当時の背景から、若い女性というだけで差別されたメアリー。初版の時点では、匿名での出版だったんですね…。
それにまだ近代科学がそこまで発展していない当時の背景があり、生と死は今よりももっと身近です。
なんだか色々と考えました。生死観は捉え方によって如何様にも変わるなという事も。
今では彼女の名前が世に知られているし、この話を知らない人はいない。これはすごい事ですね。
思想家で詩人のパートナーと出会い愛し、それでいて苦しめられてきたメアリー。
いやそれだけではない、彼女の生い立ちや常に孤独で疎外されているという気持ちは産まれた時から少しずつ増大化していたのであろうと思います。
それは苦しみや憎悪に変わる瞬間も人であれば当然あったでしょう。
その根底には、人の“これが普通なんだ!”と決めつける保守的な思想から繋がる偏見と呼ばれる固定観念の一種。
そしてそれに付随する差別という行動様式です。
常に世間とは違うという孤独から産まれたドロドロとした黒い感情を内に秘めていたメアリー。
お化けや怖いおどろおどろしい話を好む人が居るのもその感情の投影である場合もある。彼女もそれに当てはまります。
ある意味、とてつもなく愛情深い人間味の溢れた情熱的な人物なわけです。
心は脆くも強い訳です。
そんな彼女の最大の理解者がパートナーとなり、後に結婚した詩人であるパーシーであるのは非常に納得できました。
何故なら、この人は徹底された自由主義者であったからです。理想の相手でしょう。
“ルールなんか無視してしまえ、愛だよ愛だよ!”
“自分の感情に従う、それこそ自然な事。”
燃えに燃え盛り、一緒になるんです。
ある意味、最高に人間らしい2人の奇跡の出逢い
当時の保守的な思想で、なかなか理解されず問題児とさえ思われたパーシーが感じていたであろう孤独感。
彼女の感じていたであろう孤独感はある意味似通っている部分があったと思います。
その彼の自由主義具合と人間らしさを愛した筈なのに皮肉な事に、メアリーはパーシーの事を憎む事になってしまいます。
女性関係に付随する嫉妬でしょう。
ただこの事自体が自由主義を持つパーシーを愛した事と矛盾してしまっている訳です。
自分を守ってくれた自由主義という観念がまた彼女を苦しめてしまうのは大きな苦痛となったんでしょう。
自分が愛した事で憎しみまで増幅されてしまう…
愛と憎しみはある意味表裏一体。
愛情を感じる人間は強い憎しみも実感しやすいんです。
パーシーと出逢った事で、彼女の中の孤独感は膨れ上がり。黒いドロドロとした怪物のような感情は膨れ上がり暴れ出しそうになってしまいます。
『フランケンシュタイン』の中に出て来た怪物はそんな彼女の気持ちを表していたんです。
彼女自身を投影しているからこそのインパクトだったなんて全く知らなかった。
この映画を観ていたら、当時の閉塞感と自由主義との対比が非常に興味深かった。
人はどうしたって主観で物事を判断しがち、そこにはどうしても“差別”が産まれそれは無くなることはないでしょう。人の本質なので…
男性と女性の生物学的構造の違いがある以上は、思考の差異があるのも当たり前です。
それだけではない、人は偏った見方をしがちです。誰1人として同じ人はいないので、、
どう折り合いをつけるか、怪物を暴れさせないようにするのか。
自分の中に飼われている怪物は時として自分自身を呑み込むことさえある。
自分の責任を受け入れる覚悟は自分自身に本当にあるのだろうか?
メアリーの人生の一部分だけでなく、共に作品を創り上げた同士のエピソードも知らなかった事もあり大変面白かったです。
後から調べたら、彼女の人生は映画以上に波瀾万丈であり大変辛い思いをしただろう葛藤したんだろうと思いました。強い人であり魅力的です。
人って複雑だなあと思いました。
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複数書いた映画レビューまとまってます!!