第一回全日本スイカゴルフ選手権大会 決勝戦
スイカゴルフ。それは、ゴルフボールの代わりにスイカを使った、新しいスポーツである。
今、スイカゴルフの初代チャンピオンを目指した2人の男の、魂の勝負の火蓋が切られる!
解説「スイカゴルフのルールは、従来のゴルフといくつか異なる点があります。ですよね、実況の山中さん。」
実況「そうなんです。まず1番の特徴は、『自分のスイカ、または相手のスイカを割ってしまうと失格』となる点ですね。いかに優しく打ち、優しく着地させるかがポイントとなってきます。」
解説「本大会でも、失格者が続々出ていますから。やはり熟練者でもこの制限を乗り越えるのは難しいのでしょう。」
実況「ええ。それと、不正防止のため、打った後のスイカはどかさずに次の人のプレーに移ります。このルールも曲者で、自分のスイカと別の選手のスイカが当たって割れてしまう、なんていうこともあり得てしまうんです。」
解説「なるほど、当たってはいけないということですね。ありがとうございます。それでは、決勝戦の対決を見ていきましょう。決勝戦は1対1、交互に打っていきます。全長120ヤード、比較的平坦な地形です。山中さん、本日は追い風みたいですが、このスイカゴルフは風の影響はあるのでしょうか。」
実況「ありません。」
解説「そうですか。さて、現在守谷選手が残り3m、磯貝選手が残り2mといったところでしょうか。」
実況「スイカゴルフの1m差は大きいですねえ。」
解説「さあ先攻守谷選手、どこまでカップに近づけるか。おや、カップに体を向けていませんね。」
実況「なるほど、磯貝選手のスイカとカップの間にスイカを置いて、邪魔しようという作戦ですね。先攻の立ち回りとしては珍しい戦術です。」
解説「おおっと、作戦通り、守谷選手のスイカの進行方向を完全にブロックした!」
実況「ナイスショット。守谷選手はこれで少なくとも、引き分けに持ち込めましたね。」
解説「この場合、磯貝選手はどう立ち回るのがベストなんでしょうか。」
実況「基本的には先攻のスイカを避けつつカップに近づけますね。あるいは、守谷選手のスイカにギリギリまで近づけて、次の守谷選手のプレーを邪魔するという選択肢もあります。」
解説「なるほど、おや?磯貝選手、重心が右足に向いていますね。」
実況「ま、まさか!?」
解説「おおっと!?磯貝選手、見事なロブショットで、守谷選手のスイカを飛び越えました!!そして……そのままカップイン!!」
実況「これはすごい……。」
解説「なんと、磯貝選手のスイカは割れていません!!」
実況「守谷選手のスイカをクッションにして、うまく着地しましたね。こんなプレー、見たことありませんよ。」
解説「いやあ、私もです。……おや、山中さん、どうやら守谷選手のスイカが……。」
実況「……割れていますね。」
解説「磯貝選手の打ったスイカは守谷選手のスイカをクッションに使って割らずにカップインしましたが、その衝撃で守谷選手のスイカが割れてしまったようです。これにより、優勝は、守谷選手となりました!!」
実況「いやあ、磯貝選手、ナイスチャレンジでした。きっとこの勝負は、歴史に名を残すでしょう。」
解説「ええ、きっとそうだと思います。磯貝選手、準優勝おめでとうございます。」
解説「さて、来週のこのお時間は、『全日本バナナフェンシング選手権大会』をお届けいたします。」
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