【インタビュー】「光は必ず差してくる」多発性筋炎・免疫介在性壊死性ミオパチーであるBobさんが見つけた、前を向く生き方。
多発性筋炎は、筋肉に炎症が起こり、筋肉が痛んだり力が入りにくくなったりする病気です。膠原病の1つであり、日本では難病に指定されています。多発性筋炎と似た症状が出る疾患に、免疫介在性壊死性ミオパチーがあります。2003年頃に新たに提唱された特発性炎症性筋疾患であり、急速に筋力が低下することが特徴の1つです。
ミライクを利用しているBobさんは、多発性筋炎と診断されましたが症状が改善せず、再検査により免疫介在性壊死性ミオパチーと診断されました。今回は、Bobさんに診断までの苦労や気持ちの変化、病気のことをオープンにしたきっかけや支えについて、話を伺いました。
多発性筋炎・免疫介在性壊死性ミオパチーとは
診断まで3年の日々。長く続いた発熱や痛みの苦労とは
ーー簡単な自己紹介をお願いします。
Bob(ボブ)です。小さいときに「僕」と言えなくて、そのままニックネームが定着しました。スポーツ観戦や旅行・料理が趣味です。病気で包丁が握れなくなったのは残念ですね。
小学校のときにテレビで見て憧れたアメリカンフットボール部に入り、中学・高校・大学と日本一になれたことが良い経験になっています。
仕事は損害保険会社で事故の査定やプロジェクトチームでPM(プロジェクトマネジメント)をしていましたが、病気になり退職しました。
ーー多発性筋炎の診断に至るまでの経緯を教えてください。
2017年の正月に42度の熱が出て、40度台の熱が2018年の5月まで続きました。近くのクリニックで解熱剤をもらいましたが、全く熱が下がらず。大きな病院に紹介されたのですが、ストレスが原因なんて言われたり…。正直、納得できない気持ちでいっぱいでした。
自分で調べてLOH症候群(※)かなと思って主治医に相談し、2018年5月に東京医大の泌尿器科を紹介していただきました。結果として男性ホルモンの数値がかなり低く重度LOH 症候群との診断。ホルモン治療でやっと熱が38度ほどに下がりました。この時点で最初に発熱してから、1年5か月です。
ですが、それ以上は熱が下がらず、2019年の6月頃から力が入りにくくなり、7月に地下鉄の階段から落ちてしまいました。そこから急速に手足の力が入らなくなり、寝返りも打てない状態に。
入院しながら様々な検査を受け、多発性筋炎と診断されてステロイドを服用し、やっと熱が下がりました。
ーー続いて、免疫介在性壊死性ミオパチーの診断までの経緯を教えてください。
ステロイドで熱は下がりましたが、力が入らないのは悪化していきました。飲み込みにくさも出てきたし、全身の筋肉が痛くて痛くて。
2019年の12月にやはりおかしいということで、ふくらはぎの筋肉を生検に出しました。翌月に結果が出て、多発性筋炎の中でも稀少な免疫介在性の壊死性ミオパチーと言われました。
診断後の変化や不安。家族と友人の支えで乗り越えた日々
ーー多発性筋炎・免疫介在性壊死性ミオパチーと診断されたときの、お気持ちをお聞かせください。
多発性筋炎の診断を受けるまで、僕の中で「指定難病」というものは遠い存在でした。指定難病がどんなものか理解できていなかったし、世の中に治らない病気がそんなにあるとは知らなかった。
「なんで自分が、(多発性筋炎に)なったんだろう…」と。自分の体がどうなるのかもわからないし、先生も病気の展開をはっきりとは仰らなくて、それが余計不安でした。
免疫介在性壊死性ミオパチーと言われたときは、症状の原因がわかってよかったと思う反面、「珍しい上に新しい病気で、まだわからないことが多い」と言われ、余計に不安が募りました。
ーー治療を続ける中で、仕事はどのような流れで退職されたのでしょうか?
仕事は休職を繰り返すようになり、入院後に会社と話をして最終的に退職しました。
今考えると、頑張りすぎずにもう少し早く治療に専念していたらとは思いますが、お金の問題が大きくて…。
指定難病と認定されるまでは、毎月治療費で15万、20万とお金を払いました。それを払うために、逆に仕事はやめられなかった。
退職後に地元の神戸に引っ越したのですが、その通院先で「この症状なら多発性筋炎として難病申請できる。」と言っていただけて、本当に助かりました。
ーー病気による退職はショックが大きかったのではと想像します。その時期をどのように乗り越えたのでしょうか?
当時は、生きるのをやめてしまおうと思うこともありました。街を見たら働いている人ばかりで、働けない自分が迷惑をかけてばかりで生産性のない人間のように思えてしまう。
そんな中で支えになったのは、妻と友人です。妻がいるから生きたいと思ったし、病気のことを言ったら、家族ぐるみで支えてくれる友人や神社に寄って新幹線に飛び乗って会いに来てくれた友人もいて、頑張れました。
今は体は以前よりも辛いですが、色んな人の支えがあり、心の面は3年前より断然豊かです。人間って、一人では生きれないなと実感しています。
ーー現在はステロイド治療を続けているのでしょうか?
ステロイドはずっと続けています。悪化したら、ステロイドパルス療法や免疫グロブリン療法をしています。
副作用があるのでステロイドを5ミリ以下にしたいんですが、僕の中では6ミリの壁があって。6ミリにチャレンジしようとすると、炎症(CK)値がバンと上がってしまう。
ステロイドの副作用は、外見の変化のほかに倦怠感とSIBO(シーボ:小腸内細菌異常増殖症)と低血糖症。SIBOで夜中お腹が膨らんで、息苦しくて辛いです。一般的にはステロイドで高血糖になるんですが、原因不明の低血糖があり、何度か気を失ってしまいました。
ーー闘病生活を送る中での工夫や心がけなどがあれば教えてください。
毎朝、鏡を見たらニコッと口角を上げて、しんどくても無理にでも笑うようにしています。1日1日を大切に、周りの人に感謝しながら生きようと心がけてて。
あとは、周りとの比較をやめました。過去の自分との比較もしない。今できることを大事にしようと思うようにしてから、気持ち的にラクになりました。本を読んだり、色々な人の話を聞いてそう思えるように。僕の話を聞いた人が、同じように気持ちを切り替えてもらえたら嬉しいですね。
食事の内容も気にするようになり、今ではかなり健康オタクです(笑)数少ない体調の良い日には、庭に出て太陽を浴びることも心がけています。
病気のことをオープンにしたきっかけ、患者同士のつながり
ーーBobさんはInstagramで病気のことを含め発信されていますが、いつから始めたのですか?
Instagramを使い始めたのが、2020年くらいです。元は病気のことを親しい友達にしか言っていなかったのですが、SNSで発信し始めた理由は2つあります。
1つはアメフトの先輩に「もっと病気のことをオープンにして、周りを信じたら助けてくれる人がいるかもしれないぞ。」と言われたこと。「Bobがこれだけ頑張ってるんだから、その姿を見て勇気をもらえる人がいるかもしれない。」とも。
もう1つは、俳優のマイケル・J・フォックスの自伝を読んだこと。彼も最初はパーキンソン病を隠してたけど、病気のことをオープンにして再ブレイクしている。彼も病気のことをオープンにし、支えてくれる人がたくさんいて人の温かさがわかったと書いていました。
ーー病気のことをオープンにしてから、変化はありましたか?
すごく変化はありました。助けてくれる人が増え、人の温かさを実感しました。Instagramで同じような病気の人と繋がって、情報を共有できるようになったのも大きいですね。
先日、高校卒業以来会っていない先輩が会いに来てくれたんです。SNSで僕の病気のことを知って応援していたけど、声のかけ方がわからなかったと。でも2年前に自分も難病になって「Bobはもっと苦しいんだから、自分も頑張ろう。」と思えたと、涙を流しながら握手してくれたんですよ。
その先輩が「自分の会社のTシャツ部門でデザイナーをしてみないか」と声をかけてくれました。生活の足しになるし、社会と繋がれる喜びもあるのではないかと。「To Be Positive」というブランドを起こし、障害者雇用をする予定です。デザイナーも僕のような難病患者。体調が安定しないので時間の約束ができないことも受け入れてもらい、仕事をさせてもらえるのは嬉しいことです。
ーー今後、ミライクで繋がれたら良いなと思う人や希望のコミュニケーションはありますか?
ミライクが素晴らしいと思うのは、同じ病気の人とだけでなく「ステロイド」などの共通点で疾患を超えて繋がれること。ステロイドを減らして免疫抑制剤を入れている人の話や病気と付き合いながら仕事をしている方の話も聞いてみたいです。
あとはリフレッシュの方法などを共有してみたい。僕の場合はアメフトのビデオを見てるとテンションが上がります。人と話すことも気分転換になりますね。
ーーぜひ、お気軽にミライクで質問や投稿をしてくださったら嬉しいです。最後に、記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
病気や辛いことがあると、暗闇にいる気分になりますよね。
でも光は必ず差してくる。下を向いていたら、その光を見逃しちゃいます。頑張らなくても良いので、その光をつかむために、一緒に前を向きましょう!と伝えたいです。
おわりに
インタビュー終了後、Bobさんが病気を横断してステロイド治療されている方が情報共有やコミュニケーションを取れる「ステロイドグループ」を立ち上げてくださいました!
気になる方は、ぜひ参加してみてくださいね。
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