約半年ぶりに髪を切った
美容院は苦手である。陰の者による陰フィルターが80%ぐらい掛かっているかもしれないが、なんかこう…イン〇タグ〇ムと同じ雰囲気を感じるのだ。
陽の波動みたいなものを感じる。
美容院で店員さんと楽しそうにおしゃべりなんかしている常連客っぽい人がいるともう腰が引けてしまう。入店一秒後に帰りたくなってしまう。
そんな帰りたい気持ちを殴り倒して髪を切ってきた。
私は基本、人から触られる事が苦手らしい。
髪の毛なんかもそうだし、急に友達に抱きつかれても(お、おう)となってしまう。
引き剝がしたりする勇気はないが、それとなく距離を取ろうとする。
おそらく、パーソナルスペースが直径10mぐらいあるのだろう。
しかし、これはあくまで触られる側であるに限り、自分から触る分には問題ない。人間というわがままな本質が見えている。なんの話をしているのだろうか。
美容院で担当してくれた人が、若い兄ちゃんだった。KP(帰りたいポイント)がどんどこ溜まっていく。
帰りたい。正直めっちゃ帰りたい。
美容院の椅子の棒みたいな足場に足を置くのが苦手だし、視線をどこへ向けたらいいのかも分からない。鏡の中の自分と見つめ合うのもイヤだ。ケープみたいなものを被せられて手がちょっと出ているのもなんか気まずいし、スムーズに動けないのもなんか恥ずかしい。
美容院、という空間が苦手だ。
あの空間に置いて、何もかも自分が異端というか、空間に相応しくない存在であるように思えて気まずい。
しかし、シャンプーは好きだ。シンプルに気持ちが良いので。
美容院という空間だからこそ許されるみたいな感覚がある。
不思議。
シャンプー中、美容師さんが手で頭を支えて首の後ろを洗ったり流したりする時
前まで気を遣って自分で首を若干持ち上げたりしていたのだが
美容師側からすると要らん世話(※要約)、みたいな話を聞いてから、今回は完全にゆだねていた。
こういう、小さな事だけど確実にMP(メンタルポイント)が消費されるのが美容院という場所だ。
シャンプーが終わりいざカットの段階に入る。
美容師さんが「最近暖かくなってきましたね」と話を振ってくれる。
私は当然のように美容師さんとのこういう雑談も苦手である。
しかしそっけない対応というあからさまな態度に出すのも話を振ってくれた美容師さんに申し訳ないため
「ですね~。暑いぐらいですね」と当たり障りのない言葉をきわめて明るい声で返す。
私は子供の頃から【話しかけられたら普通に返すけど、自分からは決して話しかける勇気はない】タイプの人見知りだったのだ。
一言二言交わし、私の【話を振られたら返すけど自分からは話題を振らない】人間性を察したらしい優秀な美容師さんのおかげで
以後雑談を振られることはなく、しかし、しっかりと髪型の確認をしてくれるようになった。
半年ぶりに髪を切ったおかげで頭が軽い。暖かくというかもはや「初夏だが?」みたいな顔の気温なので、ドライヤーの時間が短縮されるのも嬉しい。
ありがたい限りである。あの美容師さんが今後三ヵ月ぐらい渡る信号はすべてタイミングよく青でお釣り等でもらう小銭がキレイ目なやつで突然の腹痛といったちょっとした体調不良が起こることなく過ごせる事を祈る。幸あれ。