#003自閉症児16歳の自力通学一部始終③【リアルレポート】
こんにちは。
自閉症児Kの母みいこです。
知的障害重度の自閉症児も
支援しだいで交通機関を
一人で利用できるようになる!
それぞれに気づきや難関があり、
そのリアルな一部始終を
お届けしていきます。
自力通学のルートは、大きく分けると5つになります。
1.自宅から最寄り駅
2.電車に乗車と降車
3.電車からバスに乗り換え
4.バスに乗車
5.バスの降車から学校まで
詳しくは
#001「自宅から電車に乗車」
#002「乗換駅からバスに乗車編」
をお読みください。
1.1いざ判定の日
そして判定の日がやってきました。
ちゃんとクリアできるかな?
結果は…
JRやバスに乗るところはオッケーでしたが、「止まりますボタン」を的確なタイミングで押せなかったらしく、目的のバス停を乗り過ごしてしまい、アウトでした。
声掛けがないと、ボタンはまだ難しかったようです…
1.2再判定に向けて練習
再判定に向けて、
再び練習を再開!
その翌日から、また一週間
バスに付き添いました。
私はKの後ろの席に座り、
目的地のバス停の一つ手前の
バス停を出発したタイミングで、
後ろの席から,みいこ作成の
手順書を見せてました。
手順書に貼ってあるガソリンスタンドの写真と同じガソリンスタンドが右手に見えていることを伝え、
K、ガソリンスタンドがあるね。
『とまります』ボタンを押してね。
と、小声で伝えます。
「何やってるんだろう?」と、不思議そうに見ている方もいましたが、そんなこと気にしている場合ではありません。それを一週間続け、私の声掛けがなくても金曜日には的確なタイミングでボタンを押せるようになっていました。
それを見越して、「月曜日に再判定お願いいたします!」と先生にお願いしていました。いきなり「明日やって下さい」と言っても先生たちもお忙しいので、予め伝えておく必要があります。
再判定の結果は…
無事にオッケーが出ました!
これでとりあえずは一安心です。
2.自力通学の残る課題
見事、自力通学の判定がOKになりましたが、まだ気になる課題が2つあるのです。
こちらの課題を1つずつ検証していきます。
2.1自力通学の課題①
1つ目の課題は、電車の窓の外の景色を見ることです。乗り鉄なKは、JRに乗る時に窓の外の景色を見るのが大好きです。
嬉しそうに車窓を眺めるK
(休日のおでかけ時)
何が問題なのかといいますと。
座席に座って後ろを振り返ると
隣の席の人と顔が
かなり接近しまうこと
知らない人が、至近距離で顔をこちらに
向けていたらなんとなくイヤですよね。
小さな子供なら「電車好きなのね~」と
大目に見てもらえることもありますが…
パッと見では、障害があるようには見えない普通の高校生です。
ヘルプマークをつけていても、
それに気づかない人もいるし、
すれ違い様に「え、何、キモい」
と言われたことは何度もあります。
すぐ隣に人がいる時は、
後ろを見ない。
どうしても景色を見たかったら、
席を立つ。
と、Kに説明するが、
ここはどうしても
譲れない部分らしく…。
納得を出来ない表情です。
自閉症特有のこだわりのようです。
好きなことをダメだと言われたのが
イヤだったのか…
納得できないことは、
絶対に肯定しません。
ここはまだクリアできない課題の1つです。
2.2自力通学の課題②
2つ目の課題は、
電車が遅延した場合です。
朝のニュースの交通情報で
遅延情報が流れている時は
1.電車が遅延しているため、
学校には少し遅れていきます。
と、電話で連絡。
遅延が落ち着いた頃に登校。
2.みいこが仕事休みの時は、
学校まで車で送迎する。
の、どちらかでした。
問題は、情報として知らなかったのに電車が遅延していた時。すぐ運転再開すればいいのですが、そうでない場合、「電車が遅延していて、運転再開の目処が立たないから帰ろう」と、臨機応変な状況判断はできないので、いつまでも来ない電車を、いつまでも待っていることが予想されます。
そういう場面に何度も遭遇したら、そこから学習することは出来ると思います。が、そんな場面はあまり訪れることもなく。
指示があれば動くことが出来るが、
「今は困った場面」ということを
自閉症の特性ゆえ、認識出来ない。
困ったから駅員さんに聞いてみよう。
困ったからお母さんに電話かけてみよう
という思考に至らないのです。
ヘルプマークに気付いた職員さんが声を掛けてくれることなどもないだろうし…
難しいなぁ…
ひとたび社会に出ると、いろんな心配事があってキリがないですが…問題が起こるたびに、どうやったらクリアできるか?を考えて、一つずつ乗り越えて行くしかないですね。
3.自力通学にはスモールステップの積み重ねが重要
電車の好きなK。土曜日はみいこと一緒にいつもJRに2駅乗って、買い物へ行くというルーティンを何年も続けています。
そのルーティンを利用して、中学生の時から自力通学に向けて少しずつ慣らし始めていました。
知的障害重度の自閉症児なので、スモールステップの積み重ねが重要。ということで、3つの段階にわけて積み重ねていきました。
3つの段階
・目的の駅で降りられるようにする
・私とは離れた車両に乗る
・私は電車を1つ遅らせて行く
このステップで、
どんな変化がでてきたのかを
1つずつお伝えしていきます。
3.1目的の駅で降りられるようにする
私は隣の車両に乗って、Kが目的の駅で降りられるようにする。
2駅乗って降りることはわかっているので、Kは1人で座り、私は隣の車両に乗りました。
目的の「S」駅に着いたら、ドア越しに目配せをして電車を降りる。
私が側にいないことが
多少不安なようでしたが、
Kが電車に乗るタイミングで
みいこは隣の車両に乗るところを
目視で確認できると
「私は隣の車両に乗っている」
ということがわかって安心の様子
何回か繰り返すうちに、
目配せしなくても自分で
目的の駅で下車できる
ようになりました。
そして「ここがS駅の改札だよ」と
改札を出る前の精算機のあたりを
待ち合わせ場所にするべく、
乗るたびに伝えました。
3.2母とは離れた車両に乗る
第2段階としては、
私は離れた車両に乗り、
S駅の改札前で待ち合わせをすること。
今度は3両ほど離れた
車両に乗車します。
電車に乗る時に、
「お母さんは、あっち側の車両に乗ってるからね。S駅の改札で待っていてね。大丈夫?」
と伝え、「大丈夫!」と
返事をした時は離れて乗車します
しかし。
「いや!」とか「NO」等の
意思表示ができないKが
返事をしなかったり、
不安そうな様子の時は
「今日はやめとく?」
と聞くとやはり
「やめとく」と言います。
そういう時は見送ることも
何度かありました。
いつも出来ることが
精神状態によっては
いつでも出来るわけではない
ということも特性の一つです。
ムリなく続けられるよう、
Kのその日の精神状態や
気持ちを最優先しました。
目的の駅で降りて、私が降りた時にちゃんとKも下車していることを目視で確認します。そして、改札前でバッタリ会うタイミングで私は反対側の階段から上り、
K、1人で改札前まで来れたね!
バッチリだね!
と、褒めちぎる。
本人も「あ、お母さん来た!」とは
喋りませんが嬉しそうな表情(^^)
ていうか、
「どうせ隣に乗ってたんでしょ?」
ということはバレていたのかも
しれません(^^;
3.3うまくいくことばかりではない
Kが下車したと目視で確認したと思ったら、よく似た服装の別人だったことがあり、下車せずに一人で終点まで行ってしまったこともありました。
しかしKは昔から、慌てたり
泣いたりすることは一切しません
だから迷っていても迷子に見えなく
発見に時間がかかってしまいます…
駅員さんに事情を伝え、
探していたのですが、
30分ほど経った頃。
そのまま終点の駅で下車せずに
折返しの反対方面行きの電車に乗って
何事もなかったようにKが戻ってきた。
むちゃくちゃ心配したのに、
何事もなかったように
いつものルートを歩き始めました。
なんか「ちょっとツレない彼氏」
みたいな感じです。
無料のアプリを使用して
GPSで位置情報を確認する
ことができます。
「いつものバスに乗車してるな」
などと確認できるので安心です。
「き」がKで、
学校にいるのがわかります。
3.4電車を1本遅らせて行く
最後の段階は、
私は1本後の電車で行くこと。
ここまでくると、だいぶ
1人での乗車にも慣れてきました。
Kは13:00分の電車に乗ってね。
お母さんは13:10分の電車に
乗っていくから、S駅の改札で
待っていて。
と、伝えます。
Kが電車に乗り、
私は発車する電車の中で
座っているKに手を振ります。
そして10分後、S駅の前で
ちゃんと待っていてくれました。
これを半年かけて行いました。
この準備段階があったので、
私の付き添い1ヶ月ほどで、
学校までの自力通学が
できるようになりました。
もし、定員が空いていて
座れるようだったら
スクールバスに乗ったほうが
ラクですよね。
親も、本人も。
でも、あえて自力通学を
身につけることの重要さと
将来性について、書いていきます。
次回、シリーズ最終回、まとめ。
#004特別支援学校卒業後の進路の選択編です。
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