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初めてのライブの話

私の初めてのロックコンサート参戦は人気絶頂で解散したBOØWYのLAST GIGS。
中2になったばかりの13歳の春だった。
チケット発売日は都内の電話回線がパンクしたというニュースが流れ、引きの強さに感動ひとしお。

BOØWYは2つ上の兄が好きで部屋から漏れ聞こえる音を聞いて小学生の時に知った。
わがままジュリエットが良く聞こえていた。
兄は既に思春期モード突入していてあまり話をしなくなっており気を引きたくて私も聴き始めた。
それまで聞いていた聖子ちゃんたちとは違う世界にときめいた。

当時の情報源は兄の部屋にあったPATI PATI(パチパチ)っていう音楽雑誌。
中学生になってからはしばらく自分でもパチパチ買ってたと思う。

『CASE OF BOØWY』というライブのレーザーディスクを父に買ってもらい毎日リビングのテレビで見ていた。
兄が食い付いてくるのを期待したけど素通りして自分の部屋に行ってしまう。
おかげで父はイントロを聞くだけで曲目が分かるまでになってしまった。
本当は兄と観たかったのに。

ライブのチケットは2枚取ったけど夜の外出OKが出るローティーンはなかなかいなかった。
そもそも私も高校生までライブはダメと言われ続けてたけど解散するのに行かせないのかとゴネにゴネて権利を勝ち取った。
兄が一緒に行くって言わないかなって思ってたけど声を掛けてくれなかった。
父は最後まで一緒に行くつもりだったようで全曲覚える勢いでCDを聞き込んでいた。

結局光GENJIファンの友だちと行くことになった。貴重なチケットなのにと複雑な思いだったけど父とは行きたくないししょうがない。
やたらと濃いめの覚えたての化粧と原宿の竹下通りで買ったヴィヴィアンのパクりみたいな服を着て東京ドームに向かった。
時はバブル真っ只中で会場は原色ボディコン風お姉さんも多く、明らかに私たちは子どもっぽくて精いっぱいの背伸びが途端に恥ずかしくなった。

ライブが始まると悲鳴のような歓声に包まれた。
東京ドームがこの年にオープンしたばかりで音響を心配したりしたけどそんなの関係なかった。
メンバーは遠いステージで豆粒くらいの大きさだったけど大人たちに混じってライブを見てる高揚感にノンアルコールで酔い踊った。
かーくんファンの友だちも楽しそうだった。
この光景は忘れないように目に焼き付けておこうと思った。

電車で迷惑なくらい巨大なポスターとパンフレットを抱えて最寄りの駅に着いたら父が改札で待っていた。
ライブは不良が集まる場所だと本当に心配してたから。
携帯のない時代、いつから待ってたんだろう。
あのとき父と一緒に観に行けば良かったなと思ったのはだいぶ大人になってからのこと。
兄とはこの日の話を1度もした事がない。
私よりもずっとBOØWY好きで絶対に行きたかったはずなのに。

解散までの数年間が濃密でその後はたまにしか聴かなくなってしまったけど、20代そこらの数年で伝説のようになってしまったバンドの勇姿を拝めて光栄だった。
リアタイの方はあの時代の空気感分かってくれるかな。

1度味わったライブの高揚感は当然忘れられるわけもなく、お気に入りのバンドもたくさんいた私はその後勝手にライブ解禁時代に突入した。
その後の話はまたいつか。
そしてあのとき焼き付けた光景を思い出そうとするとチョコプラ長田の氷室が浮かんできてしまうからもうどうしようもない。

30年以上前の宝物のような話。

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