定食屋のひろみちゃん
昔住んでいた家の近所に家族で営む定食屋さんがあった。
その定食屋のひろみちゃんは同級生で、遊びに行っては『何か食べてく?』と言われしょっちゅうご馳走になっていた。
ひろみちゃんのママは若く綺麗で野口五郎のポスターを部屋に貼っていた。
その頃はたのきんトリオ全盛期だったから、五郎を選ぶのはすごく大人の選択なんだと子ども心に思った。
ある日いつものようにお昼をご馳走してもらったとき、ひろみママに年齢を聞いた。
24歳だった。
ひろみちゃんにはお兄さんもいて逆算するとサバ読んでなければ15歳か16歳で出産してたことになる。
何故だか憧れが増した。
この頃の私は年上のお姉さんが大好きだったから(主に女性アイドル)、ひろみママの事もママカテゴリーとは違う目線で見ていた。
小学校高学年になったある日、ひろみママが蒸発したという話を両親から聞いた。
じょうはつの意味は分からなかったけど大変な事になったらしいのは分かった。
噂では同じ商店街のおっさんとW不倫して駆け落ちしたらしい。
みんな怪訝な顔してたけど、ひろみママなら綺麗でモテるだろうしここだけの話私は妙に納得してしまった。
この事があってからひろみちゃんの家に遊びに行く事もなくなってしまいすっかり疎遠になってしまった。
風の便りでひろみちゃんは少年院に行くようなゴリゴリのヤンキーと付き合うようになって、その後10代で結婚。
離婚3回、現在子どもは6人いると聞いた。
全く接点はなくなってしまったけどひろみちゃんと遊んだ日々とあの定食屋の味の濃いおそばはすごく大切な記憶としてずっと残ってる。
ひろみちゃんといつか再開してお茶すすりながら語り合える日が来るとしたら何から話そうか。