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別れは突然やってくる。
それは突然の出来事だった。
あまりに悲しくて声をあげて泣いてしまった。
大事な大事な家で使ってるマスターキーボード、YAMAHAのS90ESが動かなくなりました。。
ずっと電源をつけっぱなしにしていて、いつでも弾けるようにしていて、それが当たり前だった毎日。
わたしの家に来てから約12年。
ボタンが一切動かなくなって、あれ?おかしいな?と思って電源を入れ直すとディスプレイに映る「YAMAHA」の文字のまま、うんとも、すんともしない。。。
ボタンも光らない。。。
え?え?って思いながらも、「あぁ、寿命なのかな。。」と。。
大粒の涙があふれてきました。。。(これ書きながらも涙止まらない)
どんな時も一番私が向き合ってきた存在。
家族や恋人や友達よりも、誰よりもずっーーーーっと傍で私を見守ってくれていた存在。
白を基調とした部屋に住んでいるのだけど、その中で異彩を放つ黒光りするこの子を「ベーダー卿」と名付けてずっと一緒に過ごしてきました。
喜怒哀楽を共にして、怒り狂って弾いたことも、嬉しくてルンルンで弾いたことも、酔っぱらいながら弾いたこともある。
千鳥足のように指のコントロールが効かなくて「あーー千鳥指だーー。うへへ」って弾いた夜。
うなだれてひたすら鍵盤の前でうずくまった日。
たくさんたくさんいろんなことがあった。
私が作曲家としてデビューしたのが、2010年でそこから一体何曲この子と一緒に生み出したんだろう。
世に出てる曲以外にも個人的にだったり、コンペ用だったり数百曲はあるのかな。
「nerve」を作った日、パジャマで鍵盤の前でワクワクしたの今も覚えてる。
初期BiSの「ODD FUTURE」という曲があるのだけど、この曲のラストの鍵盤ソロは"弾き狂う"という表現がぴったりの勢いで録ったっけ。
中腰で鍵盤を叩き物凄い顔と勢いで弾いた渾身のソロ!
S90ESにはMOTIFラックが入ってるから、どの音源も使いやすくて、これで生み出したストリングスのアレンジはどれも気に入っていて。
アニメ「ピンポン」のエンディング曲「あの夜明け前の僕らについて」のストリングスはこの中の音源をたくさん重ねて作って、そしたら久しぶりの友達から「あのストリングスってどうやったの?」と連絡がきて嬉しかったなぁ。
最近作ったやつだと、この曲もピアノとストリングスとっても気に入ってます。
ギター以外全部の音をこのベーダー卿で打ち込みをしてきました。
ドラムもベースも鍵盤も弦もブラスもパーカッションも、FX系も全部ぜーーんぶ。
ピアノ音源はYAMAHAだからこその、本当に素晴らしい音色で。
実家のピアノもYAMAHAなんだけど、YAMAHAは丸くて甘い音がするのです。
ちゃんとそれが表現されていて、そこにより輝きがプラスされているような音で大好きな音。
音自体は新しい機種にもきっと受け継がれているんだろうけど、S90ESって鍵盤が深くて、独特の弾き心地があって。
鍵盤が変われば指への跳ね返りも変わってくるので、これも無いんだと思うと本当に悲しい。
最近のヤマハのシンセやエレピは当時のものより鍵盤が少し浅くなっているんだって。
それはそれで弾きやすいんだけど、この指への跳ね返りとこの音、という組み合わせでずっとやってきたからなぁ。。。
「YAMAHA」の文字のまま動かなくなったディスプレイを見るたびに
ごめんね。。
って気持ちになる。ちゃんと使ってないときは電源をオフにしてお休みさせてあげればよかった。
(。。。。ううううまた涙が。。。)
ベーダー卿はわたしの家に来て幸せだったかな?とか真剣に考えてしまうくらい、かけがえのない存在。
機械だけど、それ以上の意味がわたしにはありました。
「相棒」
うん。この言葉がぴったりかも。
機械だけど、わたしが弾けばそこから奏でられる音には命が吹き込まれていて、その音でたくさんの人の心を動かしたんだよー。あなたはすごい!!と褒めたたえたいです。
壊れる日が来るなんて、全く考えてなかったよ。。。
実家のピアノはYAMAHAのグランドピアノで。
母の嫁入り道具でもあって、1年に1回はきちんと調律をして、たぶん買ってから40-50年は経ってると思うんだけど、アコピだから音が一切鳴らなくなるってことはなくて。
きちんとメンテナンスもしているから調律師さんにも褒められるピアノだって母が嬉しそうに言ってた自慢のピアノ。
ピアノといえば私の中では実家のピアノから始まってるから、音が鳴らなくて動かなくなるなんて、考えたこともなかった、というのが正直な気持ちです。
楽器も命あるものなのに、ずっと電源入れっぱなしで無理させちゃったね。
でもね、いつでもすぐ弾けて私は救われてました。
小さい頃からずっとピアノをやってきたので、言葉を話すように鍵盤を弾く毎日で。
テレビで見た曲をすぐ弾きたくなっていつもの椅子に座って手を伸ばして弾くっていうのが日常だったから、音が鳴らないことにこんなに絶望するなんてね。
いなくなってから気づく大切さ、ってよく言うけど、ほんとーーーーにそう。
そこにいてくれて、いつだって私を受け止めてくれてありがとう。
私は12年間寄り添ってくれて幸せだったよ。
ベーダー卿はどうかな?
このままだと仕事にならないので、新しい鍵盤を迎え入れるのだけど、ベーダー卿を手放さなければならないのが辛いです。
引き取り業者の下で修理されてまた大事にしてくれる誰かの元に行って愛されるといいなぁ。
お別れが悲しくて写真もいっぱい撮りました。
このシールは毎年伊勢神宮に行ったときに芸能の神様の佐瑠女神社に寄るんだけどそこのシール。
毎年帰ってきてから「もっとうまくなりますように!」と丁寧に貼っていって。シールの通りちゃんと少しずつうまくなってると思う。(このシールは綺麗にはがして手帳に貼りました)
物が壊れるタイミングは私の中では次のステージに行きなさい!と言われていると思っていて。
このベーダー卿で最後に作った曲はとあるコンペの曲で。
わたしがずっと作りたい!と思っている人の曲。
コンペに通る、通らないに関わらずすごく満足のいく出来になって、ここまで私できるようになったんだ。。。!と噛みしめていたので、それを作り終えて電源が入らなくなったのは、ベーダー卿としての役目を全うしたのかなぁ。って思いました。
自分が気に入るとずーーーと同じものを使い続けるタイプなので、ベーダー卿からも次のステージに行きなさいって言われている気がします。
(。。。はあああ涙止まらん。。。。。)
当たり前にそこにある、って尊い。
ピアノだけに限らず毎日それをちゃんと大事にしていきたい。生きたい。
お別れする前にちゃんとベーダー卿のこと書き残さなきゃと思ったらとても長くなってしまいました。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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