黒猫のリュウという猫
朝、少し寝坊して起きて寝室を出ると「待ってました!」と言わんばかりにニャニャニャッ!と鳴きながらダッシュで駆け寄ってくる黒い塊がいる。我が家の黒猫、リュウと名前を私が付け直した黒猫。びっくりするぐらい私のことを愛してくれている黒猫。
朝の私はまずトイレに行ってから洗面所で顔を洗い保湿剤の顔に塗りたくるという作業をするのだが、その間もリュウは私がその身体を抱き上げるまでウニャウニャウニャ……と言いながら私の足元をウロウロしては足の脛に頭突きを繰り返す。結構痛い。
幼児と小学生の娘たちに朝食を用意してテーブルに出すと、ようやくリュウは私に抱きかかえてもらえる。細身の身体を抱き上げると耳をそばだてなくても分かる音量のゴロゴロ音が聞こえだし、四肢の爪をガシリと私にたてて(痛い)私の右耳とアゴのあたりに頭突きと頬ずりを繰り返す。
リュウは私に抱かれてゴロゴロ喉慣らしと頭突きと頬ずりをじっくりと堪能すると、5分ほどで満足するのか自分から後ろ足キックで飛び降り、お気に入りの毛布の上に乗って再びゴロゴロとご機嫌なリズムでフミフミをする。
甘えん坊。この私の甘えん坊も8歳のオスだ。人間にあてはめればもう中年以上のおじさんだ。このおじさんは私のことは大好きだが男性は比較的好きではないらしく、リラックスしている時に夫が手を出すと「ウニャー!」と明らかに怒るよ!という顔をして猫パンチをする。私と夫が並んでソファに座っていると、私のふとましい太ももに前足を置いてギュウと体重をかけて「ウニャー!」と文句を言ったりもする。猫のことを解説する記事をインターネットで探すと、『黒猫は独占欲が強いコが多い』と書かれているのを見かけたことがある。
リュウは出会った時からやや治療を要するような状態になる手のかかる猫だ。保護猫団体の主催する譲渡会で出会った時も結膜炎になっていて眼がしょぼしょぼしていた。その譲渡会はたいへん盛況で私たち夫婦が譲渡会に参加したころにはほとんどの猫たちに貰い手がついていたが、リュウを含む2匹がまだ貰い手がついていない状態だった。ちなみにそのもう一匹がハルだ。保護猫団体にいたころはルーファスを呼ばれていたが、我が家に正式にもらい受けることになってリュウと名前を変えた。
お試し同居のトライアル期間も結膜炎の治療は続いたし、それが終わったあとも下痢っぽくなったりまた結膜炎が再発したりと病院通いが続いた。やっと成猫になってやれ落ち着いた、と思っていた4歳のころ。朝起きるとリュウが猫の居住ゲージでうずくまり「あおーーーあおーーー」と普段は聞かない大声で鳴いてた。尋常でない様子に慌てて顔をのぞくと涎をだらだらと流して口をあんぐり開けて苦しそうな状態。私はあわててスマホをとり動物病院に電話、「アゴ、アゴが外れました!!」
猫ってアゴが外れることがあるんだね。野生だったら死んでしまうよ。
当時3歳だった長女を保育園に送りこんでから急いで動物病院に向かった。お世話になっている中堅~ベテランに見える獣医師の先生も「10年以上やっててアゴが外れた猫を診るのははじめて」とおっしゃっていた。リュウはすぐに病院に預けられて麻酔をされてアゴを整復してもらったのだが、そのあと2か月ごとにアゴを外すことが1年続くとは私も思わなった……。環境を整えたおかげなのか、リュウが大人になって落ち着いたからなのか、8歳の今はアゴが外れることがなく過ごせている。
カリカリフードを食べながらも口からポロポロこぼすことが多いのはアゴの周囲の筋肉が少し弱いからなのかもしれない。老猫になったころに筋力がさらに落ちてまた再発することもあるらしい。できればそんなことなく元気に長生きしてほしいものだ。
育休3年間を世の中の情勢上仕方なくほぼ引きこもりのように過ごしたが気持ちがそこまで落ち込まなかったのも猫たちの存在に助けられた部分が大きい。私の心の支え。魂の一部。ずっとずっと元気に長生きして猫又になってほしい。
よろしくね。