採血こわがり女がはじまりからおわりまでの時間を計ってみた話
「みいここさ~ん、採血室にお入りくださ~い。」
きた、きてしまった。
かばんの持ち手をぎゅっと握りしめながら採血室に向かう。
その距離およそ15歩。
あぁ早く、早く終わって・・・
わたしは逃げ出したい気持ちをこらえていた。
今日は健康診断の日。
予約どおり10時半に受付をすませる。
私が健康診断で一番嫌なのが採血なのである。
採血の嫌なところは
痛い。
動いてはいけない。
たったこの2つなのだが
この2つが怖い。
だから毎年いろいろな試みをしているわたし。
前回はしゃべり続けるという作戦。
「緊張するので何か話してもいいですか?」と聞くやいなや、
なんでだろうか・・・「今日は寒いですね。」という天気の話をしだす始末。
その前は頭の中でしりとりをする作戦だったが、これは失敗だった。
言葉が浮かばない。焦ると動きたくなるから危なかった。
かろうじて「りんご、にんじん、りんご、にんじん、りんご・・・」としりとりを無視したマイルールで乗り切ったのだった。
そして、今回。
私はふと前日に疑問に思ったのだった。
採血している時間って何分くらいなのだろう?
それがわかれば、次回から対策しやすくなる。
何をどれだけの時間やるかを知らないから余計怖いんだ。
人間は未知の物に恐怖を感じる。
何をどれだけの時間やるかを知っていればちょっと心強い。
ってことで今回のミッションは
「採血の時間を正確に測ること」
とした。
前置きが長かったのでここからはサクッと。
みいここよ、来年の健康診断の前日はこの記事を読むのだぞ。
時間を戻して・・・
「みいここさ~ん、採血室にお入りくださ~い。」
かばんの持ち手をぎゅっと握りしめた私は15歩進んで採血室に入った。
キャスターつきのラックの上に若草色のかごが乗っている。
看護師さん:「そちらにお荷物を置いてください。」
長机をはさんで看護師さんの向かいに座る。
椅子は丸くて背もたれがついていないタイプ。銭湯においてあるあの椅子。
看護師さん:「まずは両腕見せてください。」
私はササっと両腕を机に乗せる。すでに両腕とも腕まくりズミ。ぬかりなし。ヘヘン。
看護師さん:「普段はどちらの腕で採血されてますかー?」
私:「やけどするまでは左腕が多かったんですが、どっちでも大丈夫です」
(私は2年前に腕にやけどをしてしまったのだよ)
看護師さん:「うーん、じゃあ右腕でやってみましょうか。」
私:(あぁ、お願い一回で終わってください。)
右のひじよりも上の方をゴムのチューブとクリップでぎゅっと締められる。
ふにふにふにふにふにふにふにふに・・・
私の血管を青手袋をした指がふにふにとプッシュする。
看護師さん:「消毒でかぶれたことはないですか?」
私:「ないです・・・。」
ここからは私は右腕から体ごと背けていた。
刺すところを見たくはない。
視界に銀色の入れ物が見えた。
そのなかにちょうちょみたいな針とか管とかおしぼりみたいなのが見えた。
このおしぼりみたいなのが消毒綿らしい。
新幹線で食べるサンドイッチについているちいちゃいおしぼりみたい。
ティーパックのような見た目のやつ。外袋の色は緑っぽかった。アメリカのお菓子みたいな緑色。
看護師さんはたぶんそれを開けてさささっとわたしの腕を拭く。
私:(え、もう刺す?刺すの?)
手元の時計を見るとこの時点で入室から1分7秒。
看護師さん:「は~い、
チクッ、ググっ
チクッとします、ごめんなさいねー。」
私:(「は~い」でもう刺してたよ・・・!?)
ここからは早かった!!!
筒みたいなカプセルの中に血が溜まっていく。それを取り外しては新しい筒を装着する。すると、また血が溜まっていく。
3本の筒に血液が収容されていく。
看護師さんは脱脂綿で針が刺さっているところを抑えながら針を抜いた。
手際のよさっ!あなたは神か!!!
看護師さん:「この綿を指1本でギュッと抑えておいてください。」
私:「・・・はい。(指1本なら人差し指でいいんやろか?)」
私が人差し指で抑えていると、そこに小さな絆創膏みたいなのを貼ってくれた。
これにて採血終了。
かばんを持って採血室を出ると、
汗ばんだ手のひらが待合室の風で冷やされる。
私:(もう採血終わったから、実質終わったようなもんやわ。)
ハァーっとリラックスする。
ここで思い出した。
「あ!!時間計ってない・・・!
・・・まぁええわ。だって終わったもーーーーーーん( ̄▽ ̄)」
足取り軽く帰宅したのだった。
ということで採血の時間を計るというミッションは失敗に終わった。
でもここに書けたからよしとしよう。
私の採血経験値はまたひとつレベルアップしたのだった。
以上、
採血こわがり女がはじまりからおわりまでの時間を計ろうとした話。