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FREEFALLというタイトルを聞いて思ったこと
TOMORROW X TOGETHERに関しては、BTSの弟で、顔がかっこよくて、曲も聞きやすかったというところから入ったわたしですが、しばらくしてカンテヒョンの良さに気づいたことと、Cat & Dogという曲に出会ったことでさらに深く好きになりました。
Cat & Dogをこんなに気に入ったのは、私の인생 영화(人生映画)の一つである「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」を見て感じたのと同じ切なさがあったからです。
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(以下ビューティフルドリーマー)は1984年に公開されたアニメ映画です。胡蝶の夢と浦島太郎が話の下敷きになっています。それ以降につくられた多くのタイムリープ系アニメ作品の制作者たちがこの映画に影響を受けたと発言していて、タイムリープものアニメの祖とも言われています。わたしは中学生のときテレビで見てからこの映画にすっかり魅了されました。
今回、The Name Chapter: FREEFALL というアルバム名を聞いて、やはりビューティフルドリーマーを思い出しました。そこで、これらの作品からわたしが感じたことをこれを機に書いておこうと思います。具体的には、1. 永遠に繰り返される一日、2. 誘惑、3. 現実への帰還と名前を呼ぶ意味、4. 夢からの逸脱は悪なのか、という4点に沿って思ったことを書いていきます。
※以下、「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」のネタバレを含んでいます。
1. 永遠に繰り返される一日
Cat & Dogでは、毎日ずっと永遠にきみと楽しく遊んで過ごしていきたいという気持ちが歌われています。MVにはそれが実現したような美しく楽しい映像が満載です。ただ、とてもきれいで楽しげではあるのですが、季節感がなく、街に出て誰かと道ですれ違うこともなく、労働もなく、完璧なまでに美しい物だけで構成されていて、世の中から断絶された感じが強いです。だから、Cat & DogのMVを見て正直「不気味だ…」と思った人もいるのではないかと思うのですが、わたしはその不気味さ込みでかなりこの曲が好きです。
一方、ビューティフルドリーマーでは主人公たちが「学園祭前日」を永遠に繰り返しています。「大すきなダーリンやその家族や同級生たちとずっと一緒に楽しく過ごしたい」というラムちゃんが抱く夢を、夢を操ることができる鬼が叶えてあげているからです。そのうちに、その夢に巻き込まれた人物が、記憶があいまいになって季節さえわからないんだと病むシーンが出てきます。また、下校してから帰宅するまでの間には人っ子一人いない不自然に静まり返った街並みが描かれます。ラムちゃんが夢で欲しているもの以外はこの世界には存在していないのです。こちらの作品ではこれらが正面切って不気味に描かれていますが、やっていることはCat & Dogとほぼ一緒だとわたしは思っています。
この共通点を見つけて以来、わたしは完全にTXTのストーリーのとりこになりました。そして、この「変わりたくないぼく」というか「変わるわけがないぼく」がどうやって現実にうまく対処していくようになるのかが一番の関心ごととなりました。彼らは、943では永遠を求めて汽車に飛び乗りました。553では一瞬の中にある永遠に気づくことができました。0X1では全身全霊で恋をしました。SRRでは悪魔の誘いに乗りました。これらはすべて、彼らが世界と折り合いをつけるための試行錯誤だと思って見ています。そして、FREEFALLではどんな方法で世界と deal/cope していこうとするのか今から本当に楽しみです。
2. 誘惑
ビューティフルドリーマーでは、中盤以降、ラムちゃんの夢に巻き込まれた人々が「これはおかしい」と気づき始めます。気づいた人物は夢から排除されていきます。そして、ラスト近くにはラムちゃんのダーリンである諸星あたるが、夢を操っている鬼に対し「現実へ戻せ!」と詰め寄ります。そのときの鬼の返答がこれです。
「こういうの知ってまっか。蝶になった夢を見た男が目を覚まして、果たしてどっちの自分がほんまやろ、もしかしてほんまの自分は蝶が見ている夢の中におるんちゃうやろか。まあね、夢やから現実やからゆうてしょせんは感え方ひとつや。ならいっそのこと夢の中でおもしろおかしく暮らしたほうがええのんちゃいまっか。あんさんさえあんな無茶言わなんだら、わてなんぼでもええ夢つくらせてもらいまっせ。わてのつくる夢は現実と同じなんや。せやからそれは現実なんや。悪いようにはせえしまへん。そうしなはれって。ほな、わて、上で待ってますさかいな。決心ついたら来なはれや。いやいや、その階段上ってきたらそれでええんやがな。はあ、あ、待ってまっせ。」
これって、Sugar Rush Rideの「もっと遊ぼう」という悪魔のささやきとほとんど同じだと思います。
3. 現実への帰還と名前を呼ぶ意味
それでも、あたるは夢から脱出することをあきらめず、ラスト直前で、いよいよ現実へ帰る方法が明かされます。鬼によって夢から夢へと渡り歩かされ、疲れてうなだれているあたるに、突如現れた少女が方法を教えてあげます。
「誰でも知ってるよ。ただ、目が覚めると忘れちゃうの。こうやってここから飛び降りるの。そして、下に着くまでに目が覚めたらどうしても会いたい人の名前を呼ぶの。名前を呼べない人はきっと目が覚めるのが嫌なのね。」
これこそ、TemptationのクロージングトラックFarewell, Neverlandが歌っている内容そのものだと思いましたし、The Name Chapterを楽しむための大きなヒントになると思いました。
こちらの曲の和訳と解釈はりーさんのnoteがめっちゃ核心をついているのでぜひごらんください!
4. 夢からの逸脱は悪なのか
ビューティフルドリーマーに出てくる鬼は、夢に巻き込まれた人たちから見ればたいそう迷惑な存在です。そして、この映画の中では、歴史上の人間の業(ごう)のいくつかは、この鬼が見せた夢によって行われたともされています。例の中にはあきらかにヒトラーとおぼしき人物もありました。
しかし、鬼の主張には同情すべき点もありました。こんなことを言っています。
「けど、勘違いしてもろうたら困りまっせ。わてがつくるのはその人が見たいと思うとる夢だけや。せやから、夢が邪悪なもんになったんやったら、それはそのお人に邪悪な願いがあるからや。」
「いい夢かてぎょうさんおましたんやで。せやけど、みんな長続きしまへんねん。みなわてを追い越して悪夢になって、最後はがしんたれにくわれてしまいまんねん。」
ヒトラーのように夢がどんどんゆがんでいき人道的に完全な悪になったものは擁護のしようがなく論外です。しかし、そのほかの一般人の「当初願っていた気持ちとは変わってきた」程度の逸脱だったらどうでしょうか。たとえば、ただただかわいくて守られるべきことを当然だと思っていた存在だった人がこれからは自分の意見を持って自立したいって願い始めたらどうでしょうか。それも悪夢になるのでしょうか。
つまり、Cat & Dogの子たちが「こんな楽しいだけの日々を終わりにして違う世界に行ってみたい」と思うようになったらどうか。これもやっぱり鬼の言う「みんなわてを追い越して悪夢になる」の一つではないでしょうか。TXTのストーリーの主人公たちも、Cat & Dogのあのかわいらしい部屋に一生住んでいれば、生えたツノは早々に折って捨ててしまえば、天使に振られて傷つくこともなく、金に困ることもなく、ポンっと爆発しそうになることもなく、ゴミ箱に捨てられることもなく、墓に埋められることもなく、悪魔に毒を盛られることもなく、今も "幸せな" 日々が続いていたかもしれないです。
でも、あらゆる危険がくるとわかっていても、変わりたいのがやっぱり人間だと思います。家から出てみたいし、自分の町から出てみたいし、働いてみたいし、恋もしたいし、知らないことを知ってみたいし、自分の力を試してみたいと思ってしまうのは止められないと思います。そんな、当たり前だけど本当は恐ろしい(?)事実を、TOMORROW X TOGETHERが描くお話はグイグイとつきつけてくるから追うのをやめられないです。
☆☆☆☆☆
いろいろと書きましたが、今はとにかく本当にカムバが楽しみです。そして、カンテヒョンがどのくらいかっこいいのかが超楽しみです。
おわりです。