それでも進んでいく日々
いつまで夏なの?と誰もが思っていたらある日突然秋が来て、日本中がびっくりした9月。まだ日中は暑い日もあるけど、確実に季節は進んでいて、我が家にも変化の時が訪れた。
ついに娘が入園した。(満3歳入園、幼稚園の年少の一つ下のクラスに入った。)
夏休み明けということもあり、息子も1ヶ月ぶりの登園。こういう時、今までの息子は必ず泣いた。年中になっても、週明けの登園は決まって泣いていたし、なんなら何曜日でもその日によっては泣いていた。大泣きするわけではなく、うるうると涙を溢れさせて手で拭うその姿は、私をじんわりと切なくさせるのだった。
しかし、最初の登園日、息子も娘も泣かなかった。
娘は持ち前のマイペースさを発揮し、ひとりですたすたと入って行こうとしたところを、息子が手を取り、連れて行ってくれた。いつも泣いていた息子が、完全に兄の顔になっていた。
入園初日は1時間半でお迎えに行くと、やっぱり泣かずに出てきた娘。いろんなものに興味津々であちこち見たり触ったりして過ごしたようだ。
「最初は好奇心が勝ってますが、慣れてきた頃にどうかな(登園渋りなど)という感じですね」と先生。なるほど。
最初の一週間は徐々に時間を伸ばして、難なくクリア。息子は二週間かかった慣らし保育を、娘は一週間で終えた。
ところが二週目の火曜日、ついに登園渋りが始まった。「え?また行くの?今日も?」という様子が、まだ言葉にならなくとも、感じ取れた。ようやく、これは遊びに行っているのではなく毎日行くものなのだと気付いたようだ。
靴下をぶん投げて、玄関で寝転んで靴も拒否。説得するも「いかないー!」と大泣き。汗だくになりながら、抱っこで園まで連れて行った。先生は「あら〜どうしたの〜」と言いつつ、全てを理解してわたしから娘と拒否された靴下を受け取り、園内へ連れて行ってくれた。
「かぁか〜!!」と大泣きしてこちらに手を伸ばしながら連れて行かれるその姿もまた、こちらの胸を締め付けてくる。
一方の息子、体調不良で一日休んだ翌日、久しぶりに涙を堪えきれず泣いてしまった。先生が「9月からずっと頑張ってたもんねぇ」と励ましてくれた。
その日からまた泣く日が増えたので、どうしたのか聞くと「かぁかと離れるのが寂しい。かぁかと居る時間が少ない〜。」と涙を流すのだった。
お子たちのメンタルが崩れてきている。息子には、私が来月から仕事に出ることも話しているので、なんとなく理解して何かが変わることに不安を覚えているのかもしれない。
私は、思ったよりも母だった。
かつて自分がそうだったように、息子と娘にとって母である私の存在は安心そのもののようで、自分の存在の大きさを知った。
とはいえ、登園中以外はずっと一緒に居る。他の子に比べるとお迎え時間も早い枠だし、一緒に居る時間が少ないことはないと思うのだが、息子が言うのだからそうなのだ。大人の感覚や、ましてや他の子がどうかなど、息子には関係ないことだ。
きっと大切なのは一緒にいる時間の”長さ”ではなく、時間の”濃さ”なのだろう。
同じ部屋にいるからと言って、テレビを見ながら遊ぶお子たち、家事をする私、たまに描いた絵を見せにきてそれを褒める、じゃダメで。野菜を切りながら声を変えてごっこ遊びの相手をする、じゃ足りないわけで。
一緒に座って何かをする、時間を共有することが、とても重要なのだと思う。
娘の口癖も「かぁか、遊ぼう」「かぁか、これ持って」「かぁか、ここ座って」と明らかに向き合って遊ぶことを求めている。
最近は夫も残業が続き、ワンオペでいつも以上に家事育児を一人で回さなければならない私は、お子たちとの時間を後回しにしてしまっていたことを反省した。
息子の入園当初も同じようなことで悩み、向き合う時間を取るよう意識していたのに、ひとりで遊ぶことが上手になってきたことに甘えていた部分が確かにあって。
向き合って遊ぶことは、それなりに時間や体力や精神的余裕など、こちらの努力を必要とする。それでも、それが母親のできることなのであれば、やりたいし、やるしかない。
3人で一緒にポテトサラダを作ったり、息子と本を見ながら一緒に折った折り紙で遊んだり、娘とシルバニアの人形をちゃんと手に持ちながらストーリーを組み立てごっこ遊びをしたり。意識してお子たちとの時間を作ると、満足したかのように次の日の登園は泣かなかったりと、わかりやすくお子たちのメンタルが整ってきた。
先日、運動会が開催された。娘、入園数週間にして最大行事。そんなのできるの…?と不安だったが、かけっこ、競技、ダンス、全てしっかりとできていて感動した。ダンスなんて一番上手で一番可愛かった(これはただの親バカ)。私が誰よりも娘の力を信じていなかったのではないかと思うくらい、驚いてしまった。
頑張っているのだ、お子たちも。私と離れたところで、慣れないことに向き合い、やるしかない状況を乗り越えている。
そんなお子たちが帰って来る家が、楽しくて、安心できる場所であってほしいと心から思った。
私はというと、数年ぶりの履歴書作りに奮闘し(現在は手書きではなくパソコン作成が主流であることに今年一の衝撃を受けた…)(わたしが家に居る間に社会は進んでいた…)、ど緊張の面接を終え、ありがたいことに来月からの職が決まった。5年半ぶりの社会復帰。
また日々が変わる。その時その時の不安や悩みと向き合いながら、それでも大切にしたいものを見失わず、私も頑張りたい。
家族みんなで頑張るぞ。