UXリサーチのはじめかた
最近よく「UXリサーチャーって新しい職種だけど、どういうキャリアパスでなったの?」と聞かれることがあります。そこで、自分がUXリサーチをどうはじめていったかを記します。もともとUXリサーチなんて言葉は知らなかったし意識もしていませんでしたが、PMとしてあれこれ模索した結果UXリサーチをしていたという形です。
ある日、PMになった
組織改編によって、ある日突然PMになりました。そして任されたのは女性の転職サービスのアプリリニューアル。PMの経験のない自分がまず思ったのは、「仕様を決めるのに自信がない…」ということでした。
つてをたどってユーザーインタビュー
女性の転職サービスを担当するにあたって、そもそも自分自身も転職をしたことがまだなく知識に乏しかったので「転職」という領域理解を深めたいと思いました。そこで全社にメールをして協力者を募り、転職したことのある女性の話を20名ほど聞きました。また、「知り合いに自社サービスで採用された人がいますよ〜」と紹介いただき、実際に自社サービスで転職した方にアポイントをとって5名ほど話を聞くことができました。これが今思い返すとデプスインタビューですね。普段どうやって仕事を探すのか、その中で自社サービスがどういう位置づけか、どういう理由で使ってくださっているのか、逆にどういうところに困っているかなどを聞いていきました。
この時点である程度、ペルソナのようなものが自分の頭の中にできていったように思います。どんな価値観を持っていて、どんな風にサービスを利用しているというのがインプットされ、そして現状のサービスの仕様に疑問が出てきました。この検索動線よりも、こういう探し方をしたいんじゃないか?とか。これがサービス改善の仮説に繋がっていきます。また、これは副次的な効果ですが「誰のためにサービスをつくっているのか」を知ることで俄然やる気が出ます。
社内でユーザビリティ課題を洗い出す
ログ分析も並行して行っており、どの画面や機能に課題がありそうかはある程度特定ができていました。しかし、それがなぜなのか?はあまり仮説が出せていなかったため、再び社内にメールを投げて協力者を募り10名ほどにユーザーテストを行いました。当時の上司に「樽本さんのユーザーテスト研修はマスト」と勧められて1日研修を受けたのと、さらに樽本さんの著書のユーザビリティエンジニアリングを読み込んで試行錯誤しながら進めていきました。この本は必読ですね。
実際にこの本の通りにやってみると、タスク設計と評価は現場ごとにカスタマイズする必要があり少し難しく感じるかもしれません。そのような場合、はじめはリサーチ会社など外部の力を借りてみて、プロセスやノウハウを学ぶのもひとつの手だと思います。
結果としてのUXリサーチ
このような感じで、私にとってはPMとして意思決定の確度を高くするために手を動かしたのが、結果としてUXリサーチだったという形でした。UXリサーチというと仰々しい感じもしますが、PMやサービスの企画に携わる人にとっては当然のようにやっていることかもしれません。また、社内の協力者を募ったので大してお金はかかりませんでした。サービスによっては特殊なターゲット層で集めるのが難しい場合もあるかもしれませんが、特にユーザビリティテストなどは社内でも十分実施できるものがあると思います。
もちろん順風満帆にいったことばかりではなく、「ユーザーインタビューに協力してください!」と社内メールを送ったところ隣の部署の偉い人に「そんな無駄なことしなくていい」とか言われたりもしました。私はとりあえず無視しましたけど(笑)どうしてもリサーチはお金がかかるとか、遅いとか、一人の意見を聞いても無駄だとか突っ込まれることはあることもあると思います。数々のUXリサーチをやってきた今では、たしかに多少手はかかるものの事前にリサーチしたほうが結果として無駄なものを作らなくて済むということを体感として思うし、実績からも語ることができますが、芽が出るまではこっそり小さく自主的にやるのも手かもしれません。