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schooで学ぶユーザーインタビュー【分析編】

先日schooにて「よりよい体験設計のためのUXリサーチ」の授業を担当させていただき、その中でご紹介した私のユーザーインタビュー設計方法をnoteにまとめました。

今回のnoteではユーザーインタビューの分析方法についてご紹介していきたいと思います。前回のnote同様、schooにて「schooがリニューアル後も大事にすべき価値を分析する」という架空のリサーチプロジェクトがあったとして、私だったらこのように分析を進めるかなというのをまとめてみました。(※schooで実際にこのような課題や事実があるわけではなく、インタビュー設計のプロセスを具体的にイメージしていただくために仮にこのような設定を置かせていただきました。)

はじめに:注意点

これからご紹介する内容は私がこれまで本や大学院の授業、デザインスクールや研修などで学んで現場での実践を繰り返し、時にはUXリサーチバックグラウンドのない方とワークショップ形式で分析を行ってきた経験より、初心者の方でもわかりやすいように簡略化したものです。ユーザーインタビューを始めとする質的調査は主観的な方法であり、リサーチを実行する方のスキルや経験によってはバイアスに引きずられてしまったりして、導く結果が大きく異なる場合もあります。そのため、初心者ほどしっかり型を修めていくのがいいのではないかというのが個人的な考えです。幸い、質的分析には社会科学など学術的なバックグラウンドがあり様々な手法がすでに確立されています。一方、学術的なバックグランドがゆえに難しそう…とハードルを感じるのも事実かと思います。このnoteでご紹介するやり方を入り口に実践してもらえたら嬉しいですが、あくまでこれは簡略化したものであり、削ぎ落とされた部分も多くあることを念頭においてきちんと質的分析法を学ばれることをオススメします。最後にいくつか本もご紹介します。

分析の3ステップ

簡単にまとめると、以下のような3ステップがあります。「schooがリニューアル後も大事にすべき価値を分析する」が目的だった場合どのように進めるか、順に説明していきます。

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1. 抜き出す

まず始めに、インタビューデータから発言や行動などの事実を抜き出します。私が実際に分析を行うときは全発言を抜き出しますが、それは結構大変なのでワークショップなど行う場合には「5つの興味深いエピソードを抜き出してみてください」と伝えています。これは以前デンマークにてCIIDサマースクールへ参加したときにIDEOの講師が教えてくれたやり方で、彼らはダウンローディングと呼んでいました。ここでは青の付箋に5つのエピソードを抜き出しています。対象者のことを思い出しやすいように簡単なプロフィールを黄色の付箋のように書いたり、上部に記したようなキャッチコピーをつけることもよくやります。

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このとき注意点は、事実をそのまま抜き出すことです。仮説や考察はこの時点では不要です。また、抜き出す基準もスコープを絞ったほうがいいでしょう。例えば、日常生活でのことも含めるのか、サービス利用に絞ったことだけを抜き出すかでも異なってきます。ここでは「schooがリニューアル後も大事にすべき価値を分析する」がお題のため、schooの利用に関する5つのエピソードを抜き出してみました。

2. 言い換える

次に、抜き出した事実に対して「言い換えると〜なのではないか?」という気付きや考察を書いていきます。ポイントは、気づきや考察の粒度や抽象度を揃えることです。ここではKA法を参考に「〜(動詞)価値」で揃えてオレンジの付箋に書いてみました。これにより、ユーザーの行動やアクションに紐付いた考察が出てくるため情報の粒度が揃い、次の分析プロセスが進めやすくなります。こういったルールを定めずに自由に気づきや考察を付けていくと、例えば「生放送」「友達」といった単語での単なる分類になってしまったりして、あまり分析として深みが出ないかもしれません。

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KA法については安藤先生のブログが参考になります。

3. 共通点を探す

そして最後に共通点を探していきます。例えば1人目と2人目のデータが以下のようになったとします。

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そこから、「周りにいないタイプの人と出会える価値」という共通点をみつけました。このように抜き出した個々のエピソードは異なっていても、言い換えると似ているものをみつけていくのがこの共通点を探すというプロセスです。

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例えば10名にインタビューを行った場合、全員データを横断的にみながら共通点を探していき、多くの人に共通するものや、対極にあるものなど、価値同士の関連性を可視化していき、それがこのリサーチの目的であった「schooがリニューアル後も大事にすべき価値」の仮説となります。もしうまく共通化ができないと感じる場合、「言い換える」や「抜き出す」に戻ってやり直してみるといいでしょう。この3つのステップは直線的なものではなく、時には戻ったりしながら進めるものです。また、「抜き出す」以後の「言い換える」「共通化を探す」でやっていることは要は抽象化です。普段あまり抽象化の訓練をしていないとはじめ苦戦するかもしれませんが、やればやるほどスキルが上がっていくと思います。抽象化のスキルを盗んで磨くには、他の人と一緒にこの一連の分析を行うのもオススメです。

共通点を探した後は構造化して価値マップをつくったり、カスタマージャーニーマップやペルソナにしたり、アイディエーションをしたり、いろんなアクションが続きますが、それはリサーチの問いや目的次第なのでここでは省略します。

質的分析を学ぶには

これまで私が参考にした本や論文をいくつか紹介します。

KJ法
KJ法は文化人類学者の川喜田二郎が提唱したものです。この本のタイトルどおり分析方法でありながらも「発想法」であるというのが特色でしょう。いくつか著書がありますのでぜひ読んでみてください。

SCAT
SCATについての紹介サイトです。「このページのコンテンツ」欄にある「SCATについての論文」というところで紹介されている2つの論文がわかりやすいです。

こちらの本も同僚に勧められました。

グラウンデッド・セオリー・アプローチ
これは私もまだ勉強中なのですが、このシリーズの本は読んでみました。まだ実務で実践したことはないので、近々やってみたいと思っています。他にもいい本や論文があったらぜひ教えてください。

参考

schooでの授業は有料会員の方は録画が見られるそうですので、ぜひ気になる方はご覧ください。

「抜き出す」のパートでご紹介したCIIDサマースクールについては以前noteに書きましたのでご参考まで。


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