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フィクションなのか。ノンフィクションなのか。原田マハさんのアート小説の世界。
年始に「ファンゴッホ。僕には世界がこう見える」の展覧会に駆け込んだ。
最終日前日、というギリギリのタイミングで。
でも、どうしても観たかった。
それも、原田マハさんの「リボルバー」にはじまり、「たゆたえども沈まず」を読み終えたばかりだったから。「史実をベースにしたフィクション」小説。もはや、私には、完全ノンフィクションのような鮮やかな情景が目の前に広がってしまう。毎晩、22:00過ぎから繰り広げられるこの世界に没頭していた。どちらの小説も後半から全速力で走り抜けるような爽快感があって、最後は自然と涙が流れ、ふと我に帰る。ありきたりだけど、切なくて、優しい。原田マハさんの作品って、いつも優しい。
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駆け込んだ展覧会は、大盛況だった。日本人が大好きな「ゴッホ」。ここにいる誰もに同じようには映っていないだろう。私も小説を読む前に観ていたゴッホの風景と、この小説を読んだ後では全く違っていた。
とても色鮮やかな作品たちは、もがき苦しんだ日々の強い反動だったのだろうか・・・。謎が多くて真実が分からないからこそ、色んな想像が膨らむ。それにしても、史実をベースにしたフィクション小説、というだけあって、展覧会で紹介されているヒストリーや、プロフィールは完全に一致していた。小説の中に登場していた場面がたくさん出てきて、もはや、何が真実で何が作り話なのか分からない。それほどに繊細な描写が完璧なリアリティを作り上げていた。この日私は、いつものようなアート鑑賞ではなく、もっともっと深いところでゴッホを知ることが出来たような高揚感でいっぱいになった。
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そんな高揚感を胸に、帰り道に手にしたのが「風神雷神」だった。日本画の小説であることを意外だなと思いつつ、早速、その日のうちに読み進めることにした。
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学生時代は日本史を専攻していた。カタカナに弱すぎて、世界史を全く暗記できない、という理由からだった。つまるところ、歴史をストーリーとして読むことはできず、全て暗記で乗り切った。それでも一応、暗記していた甲斐あって、俵屋宗達、織田信長、狩野永徳、天正遣欧少年使節・・・。聞き覚えは十分にある。よく聞く「初めて点が線になり、面になっていく」感覚。そうか、想像力があったなら、こんな風に物語を綴れるように想像できたなら、歴史を学ぶのもきっと楽しかったんだろうなあ、とふと思う。恥ずかしながら、歴史小説を読んだこともない私にとっては新しい感覚だった。
「風神雷神」。もちろん、アートが主題ではあるけれど、やはり、人間が織りなす物語があってこその小説。また新しい時代と世界に誘われて、いつの間にか引き込まれていた。そして、読み終えた今、またゴッホの時と同じように、いつか「風神雷神」と「カラヴァッジョ」を観てみたいと思っている。
史実という縦糸に、登場人物の繊細な描写という横糸で編み込まれた織物のよう。最後の解説に書かれていたひとことに深く頷いた。ただひとつ、その解説には、「堅固」な織物と書かれていたけれど、私にはまるで、丁寧に織られたリネンのように、柔らかくて肌触りも良く、使い込むほどに馴染んでいく織物に思えた。やっぱりどこか優しくて、心地いい。
さて、これからも原田マハさんの本を読んでいきたいと思う。もう既に何冊かスタンバイしているものの、次、何を読もうかなとふと思い、原田マハさんのホームページを覗いてみた。なんと、プロフィールがもはや一つの読み物になっている!一つずつ読み進めるごとに、笑みがこぼれてくるほどのエンタメコンテンツだ。そもそもキャリアの作り方がかっこ良すぎる。スケールが違う。そして、その裏に隠されているお人柄。行動力の高さ、度胸もあって豪快なのに、さりげない。知的で、努力家、そして、なんといっても、ユーモアに溢れている。
以前、少しだけライティングを学んだことがある。大変だった課題に毎回打ちのめされていた記憶とともに思い出されるのは「文章には人柄が滲み出る」という言葉。今日まで原田マハさんのプロフィールを詳しく知ることはなかったけれど、文章もお人柄も本当に素敵。プロフィールを読んで、さらにそう確信した。
次は、「カフーを待ちわびて」にしようと思う。史実をベースにしてフィクションを書くというスタイル小説の第1作目だそう。
久しぶりの読書記録。
今年からは本を読んで色んな旅をしたいと思っている。