感情というものを教えてくれた
朝から結構な雨が降っていた。
部屋の掃除をして、今日は1日家で過ごそうと、
溜まっている録画をチェックしていた。
バラエティ番組か何かで芸人たちが、
この自粛期間中に何をしていたのかという話題になったとき、あまりにもヒマすぎて自分の顔のホクロを数えていたという人がいて、ちょっと笑った。
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窓を開けて、雨に濡れた地面を何気なく見ていた。
水が道路を伝って排水溝に流れていく様子を眺めていたら、昔の記憶が甦ってきた。
昔、寝ないでも平気だった頃、毎週のように音楽と触れ合う時間を過ごしていた。
そのときはまだ自分が音楽をやりたいと微塵にも思っていなかった。
ただ、ひたすら受け取り続けて浴び続けたかった。
田舎と違って都会は常に音楽に溢れていた。
週末は必ず何かのイベントがあったし、
飽きることがないくらい楽しかった。
月曜日から金曜日まで普通に働いて、
金曜日の夜になったら、急いで家に帰って身支度をして外に繰り出した。
友達とファミレスでご飯を食べながら時間を潰して、夜が深くなってきたら、クラブやライブハウスで音楽を浴びた。
ライブも最前で食い入るように見ていた。
ライブが終わってからも、アーティスト達と一緒に飲んだり、会話を楽しんだりしてた。
とにかくあの頃のわたしは、
音楽を貪るように浴びていたと思う。
そうすることで、
栄養を吸収し、血となり骨となっていくように。
朝方まで楽しみ、疲れた重い身体を引きずって、
始発の電車、もしくは昼前の電車で帰り、ベッドで泥のように眠り、夕方むくっと起きて、また支度をして出ていくという。
週末だけ夜のお仕事の人みたいな生活をしていた時期があった。
今思うと、恐ろしい体力だったなぁと思う。
もう昔みたいなことは絶対にできないし、死亡の予感しかしないが、あのときのわたしには必要な時間だったと思う。
その生活や経験があったから、
音楽に救われたことも、感動することも、
切ない感情も笑顔になれる瞬間も音楽を通して感じることができた。
あのとき、わたしにそういう気持ちを教えてくれた全てアーティストに感謝とリスペクトを送りたい。
育ててくれてありがとう。
今度はわたしが昔のわたしのような人達のために栄養を与えたいと思って音楽を始めた。
今日の激しく降る雨を見ていたら、
あの頃の全身で音を浴びてずぶ濡れになっていた自分を思い出した。
おしまい。
※今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
<今日のうた>
にーよ先生のセクシーさには敵いません。
Ne-Yo「Because of you」