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旅人の気持ちに沿うおもてなしとは
会社員時代は、10年以上観光情報の事業部に所属していました。
旅館やホテルの広告の営業をしながら、時には集客のためのアイデアをご提案したり、改善点を指摘させていただいたり、地域の自治体と共に、未来に向けた取り組みを構想したりしました。
旅人の心に寄り添えないかぎり、おもてなしは機能しません。
例えば、私は個人的に、九州新幹線のアナウンスがきらいです。主要な駅に到着するたびに、日本語・英語・韓国語・中国語でアナウンスが流れます。きっとウエルカムの気持ちを表現するために企画された戦略であろうと思いますが、実にナンセンスです。
皆さんは、異国情緒を味わうために外国を旅した時、へんな発音の日本語アナウンスや、「ようこそ日本のみなさま」なんて垂れ幕のある飲食店を見て、うれしいですか?入ろうと思いますか?私はうんざりします。
考えるに、旅行会社が主催する団体ツアー時代の人は、こういうウエルカムが好きかもしれません。しかし、もう時代が異なります。
1、九州の新幹線に乗る客には、英語圏外の欧米人もいるし、中国、韓国外のアジア人だっている。ヨーロッパの国々は、英語よりドイツ語、イタリア語、フランス語を話せる人が多いのです。彼らはアナウンスを、どんな気持ちで聞くでしょうか。
2、九州の新幹線には、ビジネスマンだって大勢乗ります。博多鹿児島間は、日帰りの出張だって普通になりつつある昨今、行きかえりの新幹線で、この長々しいアナウンスを聞かされるビジネスパーソンの気持ちになってみてください。
3、きっと発音がおかしい。中国人らしい旅行者が、アナウンスを口真似して笑っていました。京劇かと思うようなイントネーションです。中国人、韓国人の友人がいたら、感想を聞いてみてください。
旅とは、非日常を楽しむ機会です。非日常にわくわくするのです。
旅人の心によりそうならば、言葉は通じなくても、丁寧にコミュニケーションをとり、料金、食事内容などをできるだけ便利にわかりやすくすること。交通機関は、外国語アナウンスなどいいから、公共機関などは特に、料金やチケット購入が便利であること。(ヨーロッパでは、交通系ICのしくみは、20年前にとっくに導入されていましたよ)笑顔で接すること。
どれだけ外国人旅行者が増えても、媚びてはいけないと思います。
日本の日常を味わいたくて来た人たちは、日本語を覚えようとしたり、かねてしない正座に挑戦してみたり、はじめての食材を食べてみたり、日本人とコミュニケーションをとろうと試みてみたりします。誰も、自分の国の言葉でアナウンスしてくれたり、垂れ幕さげてほしいと思っていません。
コロナ禍によって、日本の、誇れる文化は大切にして、観光客を心から歓迎するなら自然体で、旅人の気持ちを思いはかったもてなしを、今一度思い出す機会を得られているようにも思います。