【ボイトレコラム】歌が良くなるかどうかは最初の見立てが肝心。
今日、ボイスサロンに来た生徒さん。5月の頭に一度体調不良でキャンセルをされて久しぶりのレッスン。
「おはようございまーす」
という第一声を聞いて、
「あ、声枯れてるじゃん」
と私。
ご本人は、え?そうっすか?全然マシになったと思ったんだけど…
と。
声に張りがなく、枯れてる状態。
鼻も重くて鼻声。
あと、全体的に浮腫んでいる。
そのことを伝え、病院でどう診てもらったかをヒヤリング。
口を開けて診てもらい、扁桃腺の赤みを指摘され、
「そんなにひどくないからそのうち治るよ。もしひどかったらこれオススメだよ。と、漢方を勧められただけとのこと。処方ではなく勧められただけ(笑)市販薬で購入しそれを飲んでいるとのことだったが、本人名前思い出せず。「銀翹散じゃない?」と聞くと、そうだと。
このほか、響声破笛丸を飲んでいたとのこと。
私的見立てでは、副鼻腔炎になってるか、上咽頭も多少炎症起こしているような気がするし、彼の場合、具合が悪い期間が長い&一年に3回くらい大きな風邪を引くらしく、もしかしたら扁桃腺が大きいのかな?(大きいと風邪引きやすいから気になる人は手術したりも)とも思いつつ、声帯の状態が気になった。炎症なのか結節なのかありそうだなぁと。
そして肩周りの筋肉の厚みもすごくて、聞くと鍛えているとのこと。
首、肩周りの筋肉をつけすぎると、その分外喉頭筋も硬くなりやすいので、甲状軟骨や輪状甲状筋が動きづらくなり、それで高音が出づらかったりとする。ただでさえ、風邪で粘膜系統がやられている時に無理して歌うと声帯周りの筋肉に負荷がかかり、さらに痛めてしまうということもある。
その辺を全て伝え、まずは病院に行ってちゃんと診てもらうよう伝えた。
「そんな状態だと思ってなかったです。声聞いたらわかっちゃうんですね」
と生徒さん。
確かに、一見『風邪の治りかけ』ぐらいの感じだろう。
しかし、歌をやっていない人の「良好」な状態と、歌手のそれは違う。
また、「喉を診る」とは、口を開けて扁桃線のあたりをみるので、普通の風邪で声帯まで見ることはそんなにないと思う。
プロは、『プロが行く耳鼻科』という感じで、有名な病院が都内にいくつかあって、だいたいみんなそこに行く。そうすると、歌手を診慣れている先生だったりするので検査もすぐしてくれたり専用の吸入器を販売していたり、どうしてもすぐに歌える状態にしなければいけない場合の注射(あんまりススメないけど)の対応などあり、ボイストレーナーとしても安心できる。
偉大なる師匠から紹介していただき、昔からお世話になっている山王病院の渡邊先生なんかは、私がまだまだ詳しい声帯の仕組みを知らない時期から、
「声帯写真撮るからこれ先生に見せて」
と生徒さんに言うらしく、生徒から声帯の写真が送られてきたりする。
なにもわからなかった時期から、声帯写真を見て、
「あー、ほんとだ浮腫んでるね〜」
とかわかるようになったのはここ数年くらい。
そんなこんなで今日のレッスンは、
1、リップロール&タングロール
2、ヘッドボイス発声
3、ピッチトレーニング(ピッチが弱いので)
4、喚声点トレーニング
をやった。
最初、姿勢のとり方が気になったのでレクチャー。
大脚で反り腰。全身硬かった。
いや、でもこの姿勢も声がしっかり響かない要因でもあるんだよなぁ。
反り腰で腹に力が入らないと結局は呼吸も浅く重心が上がり、鍛えている上半身の重さに反り腰と大脚が耐えきれず、どんどんバランスが悪くなる。負担が腰に幾分、背中、首、と悪くしやすくなったり、ね。
内転筋に力を入れ、反り腰を改善させるとそれだけで声の響きは変わったけど、反り腰改善がどうしても一時的になってしまうので宿題に。
「正しい姿勢になるとそれだけでけっこうお腹周りきついっす」
とのこと。
そうなんですよね、筋トレしてるわけじゃないのに慣れないときつい(笑)
まぁ、そんなこんなでいろんな課題が出た今日。
すぐに病院に行ってくれるとのこと。
結果を聞いてまた色々調整していこうと思う。
けどほんと、治りかけ、とかの状態で頑張りすぎない方が良いです。
慢性的な声帯炎になってるひとのほとんどは、ちゃんと治すことが苦手な人たち。私も今回はちゃんと薬飲み切ろうと思う。
病院も整体院とかもそうだけど、ボイトレも一緒。
『歌が良くなるかどうかは最初の見立てが肝心』
だと私は思う。
どの方向から良くしていくかは、ボイストレーナーのキャラクターによって変わってくると思う。『合う合わない』はめっちゃあるよな。
ちなみに『合う合わない』の目安は、
「通い出したら良くなったねと言われるようになった」
だと思う。