魚のあらで贅沢だし 鱸(すずき)の潮汁
上品なやさしく染み入るおいしさです!おいしくて汁だけで何杯もおかわりしてしまいました。材料は鱸や鯛以外でも。潮汁ほんとすばらしい。
【作り方】
① 青瓜は皮をむいて種を取り除き、7〜8mmの半月切りにする。塩茹でして水に落とす。水気をとる。
② 白葱は縦に切り込みを入れて芯を除き、4cm長さに切る。広げて重ね、繊維に沿って細く切り、水にさらして水気をとる。
③ 土生姜は針生姜にする。
④ 鱸の頭は梨割り*にして切り分け、かまとともにボウルに入れ、振り塩をして約1時間30分おく。塩がまわれば、沸騰したお湯に差し水をして80〜90度くらいに温度を下げたお湯を注ぎ、すぐに箸でゆっくりかき回して霜降りする。表面が白くなったら、水に落として冷ます。残ったうろこやぬめり、血液を洗い落とし、もう一度水で洗い、水気をふきとる。
⑤ 鍋に水と酒、鱸の頭とかま、爪昆布を入れて火にかける。沸騰するまでは強火、沸騰したら火を弱め、液体の表面が1〜2ヶ所コトコトと踊るくらいの火加減にして、あくをとりながら煮る。鱸の頭に火が通って目玉が白くなったら、頭とかまを取り出す。だし汁はネル地で漉し、別の鍋に移して火にかけ、味をみて足りなければ塩を加えて味を調える。頭とかま、青瓜を吸地に戻して温め、椀に盛る。熱い吸地をはって、白髪葱と針生姜を添える。
*梨割りのやり方は、ここで文字だけでは伝えきれないので、他のサイトを参考にしてくださいね。
【料理のポイント】
「潮汁(うしおじる)」とは、材料を水、酒、爪昆布で煮て材料の持ち味を引き出してだし汁をとり、塩だけで味を調える料理です。塩だけで味付けするので、材料の鮮度、あくをていねいにとること、あらかじめ鱸に当てておく塩加減などが重要です。
潮汁を作る工程には、あくやぬめりをとる工夫がたくさんあります。
・ 塩を振る→ 魚の身をしめて余分な臭みと水分を除く。※塩加減は総重量の3%くらいが目安
・ 霜降り→ 臭み、ぬめり、脂肪分をとる。さらに水に落としてうろこや血の塊や内臓をしっかりとる。
・ 酒→ アルコールが蒸発するときに魚の臭い成分を一緒に飛ばす。
・ 爪昆布→ 切り口のぬめりがあくを絡めとる。
・ あくをとりながら煮る。
潮汁といえば鯛の潮汁がよく知られています。鱸はあまり馴染みがないかもしれませんね。鱸の旬は夏ですが、秋から冬の産卵期もおいしいです。今回は潮汁の材料に鱸を使いましたが、鯛や蛤はもちろん、鶏肉などにも応用できます。
【中医・薬膳から】
鱸の適応症には手足のしびれ、食欲不信、だるさ、むくみなど。鯛は貧血、下痢、瘀血、体力回復などどちらも補腎、健脾などの効能があり、滋養食としてよいです。鶏肉の場合は、適応症に体力の低下や食欲不振で、補気、益精などの効能があります。
中国の家庭でもよく作られている滋養スープは、鶏丸々1羽に水、紹興酒、白葱、生姜、塩少々などでじっくり煮たものなどがあります。臭みの出やすい魚ではなく淡白な鶏肉を使って、鍋に材料を入れて気長に待つだけなので、これも簡単でオススメです。
今回具材で使用した瓜は寒性なので冷えるとよくない人や、利尿作用があるので体力のない人や痩せた人は控えめにしたほうがよいです。刺激の弱い大根などに食材を変えてもよいかもしれませんね。
【最後に】
「魚のあらでこんなにおいしい椀物ができるなんて!」と感動した一品です。お魚の国、日本にいるならぜひ試してみてほしいです。魚のあらはお安いですし、いろいろな魚で挑戦してみたらおもしろいと思います。あらの身は食べるのに疲れるので「贅沢なだし」として割り切るのもありかなと思います。さらに鶏肉の手羽を使って潮汁をつくるのもよいですし、青瓜を他の食材に変えたり、ぜひアレンジを楽しんでください。
私が中国に住んでいたときは、まだ潮汁の存在も知りませんでした。その頃は炊飯器みたいな形をした電気コンセントにつないで使う煮込み鍋で数時間かけて烏骨鶏丸々1羽を入れた薬膳スープを週に1回くらいは作っていました。薬膳スープといっても、紹興酒、白葱、生姜、塩の他に常備してあったなつめやクコの実、それからそのとき自分が摂りたいと思う黒きくらげや大根、豆腐などの具材を放り込んでスイッチを入れるだけ。烏骨鶏はカラスのように真っ黒で見た目はグロテスクですが栄養が豊富とされ、なつめとクコの実は増血効果が高くてアンチエイジング食材としても知られています。簡単なのにおいしくてハマります。
自分に合ったやり方を見つけて滋養スープを習慣にしたいですね。じわじわと心と身体が満たされます。
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学校で学んだ日本料理や知識をもとに、そこから思考を薬膳に広げたり、おいしく作るコツなどを紹介しています。いろんな視点から料理や食材を見ていきます。分量は必要に応じて微調整してくださいね。学びや発見があれば随時修正や追加・更新をしていきます。
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