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森の再生ー#1しがらみ編ー

八王子、長沼の森の再生作業についてのレポートです。
前回の記事で森の藪化が全国的に広がっている旨については触れましたが、それが一体自分たちの生活にどんな悪影響があるのか?

昨年もニュースをにぎわせた各地での土砂災害は異常気象のせいだと思っている方も多いかもしれません。もちろんそのような側面もありますが、多くが斜面の土中の水脈がつまっているために大雨が降ると耐え切れず地すべりを起こしているのです。

このように土砂崩れの危険がある地域に住んでいる方はもちろんのこと、離れたエリアに住んでいても国土の7割が森林である日本人にとって森が荒れていくのは大きな損失となってしまいます。

土中環境が悪化する要因は他にもありますが、土中環境が悪いと樹木や下草が健全に育たず、植物の根の水の吸い上げによる水と空気の循環や菌根菌など微生物による土中の活性が得られず悪循環となります。

宅地の庭など狭い範囲であれば、土に土壌改良剤混ぜるという選択肢もありますが、森全体を再生するには、土中のこと、樹木のこと、生物のこと俯瞰して地域全体を考える必要があります。また時間の経過も考慮した4次元的な視点で取り組む必要があるように思います。

前置きが長くなりましたが、森の再生に必要なのは、土中の水と空気の流れ、微生物の活動を健全化することです。それにより適した樹木が育ち根がしっかり張ることで、地すべりや倒木のない多様な生物が息づく健全な森に再生していくといえます。

今回、長沼の森の中の「鎌田鳥山」という歴史的な古建築周辺を毎月ワークショップ形式で、生物多様性の先生をお招きしておこなっているのでそのレポートです。

初回は「しがらみ」づくり。
森の斜面と道路の際の部分に溝を掘り、そこに焼き杉の杭を等間隔に打ち、炭をまき、落ち葉と小枝を編むように”しがらませて”いきます。

こうすることで、斜面を落ちる水がいったんこの溝に入り空気を含んだ水となり、落ち葉や小枝に集まる微生物が活性化し周辺の土壌がすこしづつ改良され、雨水が土表面を流れるのではなく、土中にしっかり浸透するようになります。

掘った溝に沿って炭をまいていきます
焼杭を等間隔に打っていきます
小枝を編むように敷き詰めていき間に落ち葉をはさむ
完成!ぱっと見は溝があるかもわからない

古来の日本庭園は山側斜面と通路となる部分の境目には、このような溝があります。昔の日本人はこのようなことを理解していたようです。
現代土木における山の斜面をコンクリートで固めたような場所にはこのような溝はありませんので是非見てみてください。

次回は斜面に設置する”段切り”についてレポートいたします。


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