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満月だけだと物足りない

友人と手をつないで歩いた夜、月がきれいだった。

私は満月だと思ったけれど、その子は違うという。けれど、きれいなことについてはお互い一致だ。歩きながら(私にとっての)満月を眺めていると、ふと“あるもの”が足りないことに気づいた。

以前は月のすぐ下にあった、星がいない。

満月を眺めた数週間前に、三日月のすごくきれいな夜があった。キリリとしていて、「美しい」という言葉を体現しているような月。単体だけでも十分きれいだけれど、月のすぐ右下で輝いている星がなんだか唇の下にあるホクロみたいな気がして、さらにセクシーで魅力的に写った。

その日は何度も外に出て、セクシームーンを写真に収めようとしたけれど、途中で雲に隠れて見えなくなってしまった。しかしあの日の「ホクロ星」に、私はすっかり気持ちをもっていかれてる。

満月はすごくきれいだけれど、大好きなホクロ星が見えないことがちょっと残念。「前は月のすぐ下に星があったのになぁ」とつぶやくと、友人が「明るいと見えないものもあるからねぇ」と答えた。

その時、頭の中で「明るい」友人たちの顔がパッと現れた。明るいと、見えないものがある。私ももう1度、その子の言葉を反芻してみた。


いつも元気いっぱいで明るい人に憧れている。毎日楽しそうだし、周りにいる人も楽しませてくれて、その子の存在感は計り知れない。常に誰かの頭の中にいて、必要とされて、エネルギッシュな子はどんな場面においても得なんだろうなぁと思う。

けれど、そんな子たちと一緒にいると見えないものがあるのかもしれない、と考えた。言葉が誰かの声にかき消されて、独り言で終わってしまった時の気持ちとか、「あれ、あの時いたっけ?」とナチュラルに覚えられていなかった時とか、私にしか映らないものは、多分いくつか、ある。

「明るい」子のそばだとわからない気持ちの変化とか、実は見えなくなっていた行動とか、その中に、外からみていた他の人が「いいな」と思えるようなものもあるのかもしれない。

私がホクロ星に抱いた気持ちみたいに、「満月ちゃんだけだとちょっと物足りないんだ」とか、「三日月ちゃんと一緒にいると、すごく素敵だね」とか、言ってくれる人だってたぶん現れるんじゃないか。

まだ想像でしかないけれど、あの日のホクロ星を考えるとそんな気がして、「無理しなくても、大丈夫かも」と思った。明るくしてなきゃ、まだ自分はダメだ、と課していた心はどこかへ行こうとしている。

この右手だって、そのままで大丈夫かも、と頭の中で呟いて、蝉の声がする道を帰った。


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テーマ #憧れる気持ち

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もりやみほ
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