『ラーメンカレー』(滝口悠生著)書評|ラーメンとカレーは別々がおいしい
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本のタイトルに少し違和感があった。「ラーメンカレー」という料理はあまり見かけない。人気の料理のコラボレーションなのに、よく考えると不思議だ。
この本には、とある2人の結婚式に出席した人々のストーリーが第三者視点で描かれている。前半は、仁と茜夫婦。後半は窓目君。結婚をした2人はけり子とジョナサンといい、仁と窓目君、そしてけり子は高校の同級生だ。
結婚式のあと、仁と茜はイタリアにいる由里さんに会いに行く。由里さんは茜の友人で、ブラジル人の夫チコと娘のハル、夫の母とペルージャで暮らしている。仁と茜も、由里さんとチコも、それぞれがちょっとした違和感をパートナーに抱いていた。とくに仁と茜は、帰国した年の暮れに夫婦仲をこじらせ離婚話にまでなっている。
一方で窓目君のストーリーでは、彼の手記を誰かが読んでいるかたちでシルヴィへの強烈な愛が語られている。シルヴィは、ジョナサンの従妹で年下の女の子だ。結婚式のときに知り合い、木立のなかでキスをしてから窓目君は釘付けになり、帰国をしてもメッセージのやりとりが続いた。2人はボーイフレンド、ガールフレンドの関係なのだという。
手記には2人のやりとりも記されている。「Tell me more about your job.」というシルヴィのメッセージに対して9ページにわたる自分語りを送る窓目君。それに対して「That sounds wonderfully amazing. xx」と一文でのみ返信するシルヴィ。2人の結末はなんとなく予想ができたものの、最後まで見届けずにはいられないような気持ちにもなった。
惹かれ合った者同士が一緒になった結末が、必ずしも幸せであるとは限らない。その人のもつ魅力に惹かれ合った2人が、お互いの「魅力に感じられない」部分も受け止めて一緒にいられるかというと、それはまた別の話なのだろう。
ラーメンもカレーも魅力的な食べ物だ。けれど、2つが1つになったとき、それぞれの魅力を消さずに、「ラーメンカレー」としておいしくいられるのだろうか。
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読書会での書評