旅の"見どころ"も切り取り方次第
ひとつの題材でもどこに焦点を当てるかでさまざまな受け取り方ができる。雑誌の特集やテレビの企画、もちろんWeb記事も「切り取り方」で面白さは決まってきてしまうものだ。
*
友人を訪ねに行くことが目的で訪れた神山町。事前知識としては、「山の奥でリモートワーカーたちが集まってるところ」くらいのものだった。そのため2日間あっても神山町にずっといることはあまり考えておらず、徳島の他の観光地に行ったり、よさげなカフェがあればそこに行けばいいかな、程度にしか思っていなかった。
けれど友人を始めとした、そこで出会った人を通してみてみると、神山町が2日いても足りないくらいに見どころいっぱいの地域にかわっていったのだ。
友人は神山町に住んで1か月ちょっと。一緒に町を移動していると至る所で彼の知り合いに会った。本人は「忙しくて全く周りのことがわかってない」と言うので、おそらく知り合える最低限の人なのかもしれないが、それでも知り合いの遭遇率が高い。
関係のある人が運営しているというカフェの店長、パンクしたタイヤの交換を手伝ってくれた染物屋の方、社員食堂代わりに使っている食事処の店長。知り合いか、そうでなくても大体は共通の知り合いがいて、次の日別の場所で知り合いに会うと「昨日〇〇だったんだって?」なんて情報が一気に広まっていたりもする。
町で話す人々と、その人との関係性を知っていくたびに、つながりの濃さに新鮮さと温かさを感じた。
Iターンで活躍している人の店舗に行ったり、アーティストの作品に触れたりと、ガイドブックに載っていない場所をゆっくり巡った2日間。きっと「観光旅行」では見どころのない町で終わってしまっていたかもしれないところを、神山町に住む人の観点で見れたことは、その地域を好きになるに十分な要素だったように思う。
*
「もう1度行きたい場所は?」と聞かれると、「〇〇があるから」よりも「〇〇がいるから」がベースになるような、人に焦点を合わせた旅が今までもすごく好きだった。観光旅行ももちろん良いけれど、そこに住んでいる人の生活感がわかる場所や、人と地域とのかかわり方がわかる旅のほうが私は好きだ。そのため今回のような、「友人に会いに行く」を目的に訪れられたことは私にとってとても意味のあることだったように思う。
町へどのように入っていくかで、その土地の魅力も随分変わってくるんだろうなぁ。神山町、また行きたい。