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特技は何ですか?
できれば一生避けて通りたいセリフがある。
それは、「特技は何ですか?」だ。
就活にはじまり、何か自分をアピールする場では毎回のごとく聞かれる、困った質問。苦手意識は十分あるけれど、フォーマルな場においては無理やりひねり出して答えを作り、今までなんとかしてきた。
けれど先日、まさかの飲み会の場で聞かれてしまったのだ。
就活や転職活動中に使ったセリフじゃ固すぎる。けれどほどほどに言える特技なんてないぞ。これは何を言えば正解なのだろうか……と私の鼓動が速くなる。ちょっと時間が欲しいから、回答の1番手は避けたい。
「えー、何か特技あります?」と逆質問を返して時間を稼いだ。彼女は「●●と●●の歌の、あのフレーズのモノマネが得意です」と言った。……が、元ネタが分からず「やってみてください」が言えない(しかも今となっては何だったか忘れてしまった)。
「もりやさんはどうですか?」と、時間切れを宣言するように質問が返ってきて、とっさに出た言葉が「どこでも寝れることですか…ね…」だった。
なんて会話の広がらない、しかもこの場で再現性のない事を言ってしまったのだろうとすぐ後悔の念に襲われた。
あわわわ…と心に大量の汗をかきながら、うふふっと笑ったのだけれど、相手は「いいですね〜」とコメントしたまま、特に気にも留めていない様子。それから違う話題に移り、共通の知り合いのことや、これまでの仕事の話など楽しく会話をして終わった。
*
帰りの電車の中で1人反省会をした。あの時はちょっと慌てすぎたよなぁ。驚くことを言われるとか、面白い返事が返ってくるとか、そんなことはきっと一切気にしていなくて、単純に場つなぎ程度の会話だったのに。
「特技」というフレーズに過剰反応する自分がなんだか哀しくもあり、笑えてしまった。
とはいえ、もしもの時のために、何か1つネタを作っておきたいものだ。指の第一関節がやけに柔らかいよ、ならその場で披露できるからネタにいいかな。
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