いろんな形に名前がほしい。「インスタントラブ」
「まずはお試し、1週間!」
テレビドラマ「おっさんずラブ」で、好きな人への告白をすぐに断られないために使った戦法。それに対してドラマの中で、「インスタントラブ?」と名付けていたのを見て、今までもやもや実態のわからなかったものが、一気にクリアになったような気がした。
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あらゆる事象に対して、言葉が先なのか、事象が先なのかという問題はとても興味深い。例えば「椅子」は、椅子と呼ばれる前から椅子なのか、それとも「椅子」と呼ばれて初めて椅子となり得るのか。個人的には名前をもらって初めて、その事象は形をつくり、世に存在するようになれるのではないかと思っている。
体調が悪い時も風邪なのか、ほかの病気なのか、きちんと病名をもらえてようやくほっとするし、自分の存在だって、名前をもらって自分が認識できるような気がする。
とはいえ、名前がついていないものもこの世にはたくさんある。とりわけ男女の間での言葉のバリエーションは、あまり多くないのかもしれない。「好き」の言葉一つとっても、どう好きなのか、どんな気持ちで好きだと思うのかは人によって大きな差がある。
男女の関係性も「友達」と「恋人」の間にはもっと違う関係がたくさんあっても良いはずなのに、あまりいいイメージがなかったり、すぐに死語に変わってしまう言葉だったりと、出来ては消え、出来ては消えを繰り返しているような気がする。
今回私がいいなと思った「インスタントラブ」も、たぶんこのドラマの中だけで終わってしまう言葉だろう。けれど「まずは試しに、会う時間を増やしてみない?」とか、「期限付きで付き合ってみない?」とか、ちょっと異質に思われるような、表現しづらい事象を端的に表した、新しい関係が作れるような言葉に感じたのだった。
名前がついてなくて埋もれてしまっている関係性は、きっとたくさんある気がします。
気になる言葉、魅力的な言葉を集める共同マガジン「コトバツムギ」を始めました。共同運営者は以前ライティングスクールで一緒に学んだスミヨ。さん。月~土までのうち、私は月・水・金を担当しています。
去年の毎日note この関係性にも、まだ名前がないよなぁ。