紫の声

その小さな草はらは、私が月一で通院する時に通る道の左側にある。

先月は河津桜が早くも咲いていた。

交通量の多い道路のすぐ横にあり、
フェンスもあるから中に入ったことはなかった。

なんとなくいい感じだなあと、足を止めてうっとりし、通りすぎていた。

今日は花大根が沢山咲いていた。

その薄紫色があんまり可愛いくて、つい引き込まれてしまった。

フェンスが開いていたので、中に入る。

まるで別世界だった。

隣では変わらず車がガンガン走っているのに、整えられた聖地の様な静けさだった。

フェンス一つ超えただけで、こんなに世界が違うことに呆気に取られた。

何か大事なことを体験しているような気がする。とりあえず座ろう。

薄紫の蝶々がたくさん止まっているような花大根は包まれて、私も植物になった気分になる。

人間でいるから仕方ないけど、もう色々、飛び越えて花のようになりたい。

昔から一番やりたいことは叶わないと信じていた。人生はそんなに甘くない、我慢しなくちゃいけないって。

でも小さな私が言う
「我慢ばかりさせないで、もっと大切にして!」

小さい私の訴えは今の私にとっては、
ワガママで突拍子もなく、非常識だらけで、
とっても怖い。

「今までの私」がどんどん壊れていくのは、
ある意味、痛快。

結果や出来事は、二の次で、
「私は私の味方でいる」てのが一番大切。

ゴロンと寝転び、花に埋もれる。
指先から、染まっていきそう。

花びらを何枚か食べる。
喉にすーっと風が通る。

どんどん、どんどん、
境目の無い世界に。





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