9/23 秋分話
こんにちは。逗子にあるカウンセリングサロンthe worldの奥乃美帆です。
近頃は、日々起こる悲喜交々を日記にしたり、詩にしたり・・・自由に発信させて
もらっています。今日もこの秋分のエネルギーの中で巻き起こった様々な経験をベースに、日記か詩をお届けしようと思っていたのですが、ふと物語を書いてみようと思いついたので、勢いに任せて書いてみようと思います♡
「全く人生とはなんという舞台だ!」
彼は粗野な格好でトマトを食べながら笑う
薄汚れた生成りのタンクトップには赤いシミがついていた
「なんで僕たちは生きているんだと思う?」
薄ら笑いを浮かべながら聞いてくる彼に
迷惑そうな顔をしながら私は答えた
「さぁ。私たち何か生きているってことを感じたい生き物なんじゃない?」
「もしそうだとしたらおかしいよ。生きてる実感なんかじゃなくて、
神様は僕たちに苦しめる種を植えてこの世に誕生させたとしか思えない。なぜ僕たちは動物たちのように素直になれないんだろう?恋愛もお金も自由も何もかも破壊という結末の前の茶番のようにしか思えてならないよ」
「そうね。私たち年をとって、シワができて、病気になって死んでいくというのに、やれ化粧品だ、服だ、食べ物だってキラキラしたものにしがみついているのはある意味滑稽なことなのかもね…」
「だからだよ。生きているのなんて面倒くさいし、全部が茶番で、バカで、アホの集まりなんだよ人間なんて。僕はここで貧乏かもしれないけど、トマト食って、詩を書いている方がよっぽど幸せなんだよ」
私はそんな彼を横目に”それもまた極端な発想だけどな…”と心密かに思った。
なんとなく私がここに佇んでしまうのも、
今日も彼の家へとふと足を運んでしまうのも、
あのどこか寂しそうな眼差しをもう一度見たいと思ってしまうからなのかもしれない。
だって私たちはピュアに生きていくことはできない。
この世には様々な重みのようなものがあって、
誰しもがその重みをかいくぐって生きていかなきゃいけない場面がやってくるからだ。
でもどこか傷付いたような彼の身体には、そんな生が私たちに押し付けてくる重荷を全て跳ね除けるようなパワーがあった。そしてその力強さの後ろに隠れている脆さも。
やってくるもの全てをぶった斬ってしまうような彼の内なる剣は、
時に隣にいる私をも傷つけてしまうような鋭さがあったのだけれど、
彼のそばにいれば、今まで私を傷つけてきた人々をその剣でやっつけてくれるような気がして、
無意識のうちに私の足は彼の隣へと運ばれている
「ねぇでもさ?詩を書いている時は幸せなんでしょう?それって人生の喜びとは違うの?」
「僕が詩を書く理由はね、このバカらしい世の中の中で、唯一まともなものたちの声を残していくためなんだ。それってなんだと思う?風の歌とか、木陰とか、波のさざめきとか…彼らはああやって話すんだよ。言葉を話すんだ。ただ僕らはそれを受け取れていないだけで、とても巧みにさまざまな情報を伝えてくれる。僕はそれを紙に書いていくことで、なんとか…人間としてのまともな感覚を保っていられるんだよ。」
そういう彼の横顔は、実際半分怒っているような鋭い目をしていたのに、どこかその仮面の下では涙が溢れているような感覚を私に持たせた。
ああ、こんな人だけは好きになっちゃいけないなぁ…とぼんやりと思う。でも一方でその脆さに魅力を感じてしまう自分も厄介だなと私は思った。