JAPAN EXPO Paris 2022 WABISABI 出展レポ
初めに
Japan Expo Paris 2022。
もう1年以上前のことですが、全ての記憶が鮮明に思い出せるほど最近の出来事の様に感じます。
実はこの記事は1年前のイベント出展後に下書きをしていたもので、いろいろな理由があって投稿せずそのままになっていました。
ただ、今回この記事を投稿するにあたって、私の中である決断をしました。それについてはこの記事の最後と、もう一つ記事を執筆しているのでそこで詳しく書かせていただきます。
今回は自分の中での整理や振り返り、思い出をシェアする目的でこの記事を投稿します。よろしければ最後までお付き合いください。
Japan Expo Paris 出展の背景
実は2020年に出展のお話をいただき、当時ドイツに移住予定だった私は「パリなら近いし、良い経験になるかな」そんな軽い気持ちでお受けしていました。
(今考えると何も知らない素人作家だからできた決断だったなぁ、とも)
コロナ禍で2回延期になってしまったので、
出展が実現したのはお話を受けてから約2年後でした。
その間はドイツに移住したりコロナに翻弄されたり、私の人生史の中でもかなり激動の2年で、色々と疲弊してしまい一時はExpo出展も取り止めようとも考えていました。
そのため会期が終わった瞬間は、私にとって約2年間の長い旅が終わった気分でした。
出展の率直な感想
4日間パリのVillepinte Exhibition Centerで行われたJapan Expo Paris 2022は、コロナもようやく開けた夏の一大イベントでもあり、
フランスやヨーロッパから集まったアニメ漫画ファンやクリエイター、企業がグッズを販売したり、コスプレイヤーがお互いのコスプレを撮影し合ったり、本当に熱気を感じ続けた4日間でした。
結果的にも総来場者数25万人を超える史上最多来場者数で大盛況。私も休憩時などに他のブースや会場を回りましたがどこも大混雑で、歩くのもままならないほどの人の多さでした。
また、私が参加した日本の伝統工芸やクラフト作家が集まるWABISABIブースも、多い時では会計カウンターが長蛇の列になるほどたくさんのお客様にご来場いただきました。
これほど大きな会場での販売、そしてフランス語の接客など(私は基本英語で、助っ人に来てくれた友人がフランス語を通訳してくれました)、初めての事やイレギュラーなことも多々ありましたが、
ブースに足を運んで水引に興味を持っていただける方が本当にたくさんいて、作品も想像以上に購入していただけたので、総じてとても良い結果、経験をさせてもらいました。
そんな中でも今回は出展中に印象に残ったお客様とのエピソードを2つご紹介します。
「一目惚れでした」
そう言って写真の『花火 -hanabi-』を購入してくださったフランス在住のAさん。
自身もアーティストとしてパリで活動されている方で、一度私のブースを通りがかってこの作品を見た時、立ち止まって水引についてや作品の背景について熱心に質問しておられました。
ただ、その時は同行していた方の付き添いもあり一度ブースを離れていかれ、その後再度戻ってこられて
「この作品をどうしても購入したい」とおっしゃっていただきました。
花火は半立体の接着方法や結びから独自に考案し、使用する水引にもこだわって作った作品でした。
大きさもExpo用に作った今までで最大サイズだったのですが(実際に、このサイズで値も張るので売れるかは期待半分不安半分…だったのが正直なところです)
購入したいとおっしゃっていただいた時は、私自身本当に嬉しく、作品を梱包する手が震えていたのを覚えています。
作品と一緒にご本人と写真も撮らせていただき、これは一生の思い出、宝物になりました。
(後日談になりますが、Aさんは私のInstagramもフォローしていただき、Expoの後パリのご自宅に飾ったという作品の写真と共に「また来年もExpoに来てね」と温かいDMを送ってきてくださいました。
異国の素材であり、その日初めて知った水引作品を気に入って購入してくれる。作家にとってこんなに嬉しいことはなく、
私にとってもパリのお宅に自分の作品が飾られているという現実が信じらません。
今考えてもとても温かい気持ちになるAさんとの出会いでした。)
ワークショップで得たもの
4日間の会期中、水引のワークショップも行いました。スペースの関係で毎回1名限定、時間にしても数クール。内容は水引では一番基本となるあわじ結びを一緒に結って小さいカードに貼り付け、そこにお好きなメッセージを添える簡単なものでした。
英語フランス語を交えての説明の難しさなどもありましたが、お一人お一人とじっくり向き合いながら水引について、その意味や歴史をお話ししながら一緒に水引を結う時間は私にとってもすごく特別なものになりました。
そんな中、今でも強く印象に残っている参加者の方がいます。
お一人でブースを回ってたまたまYuinobiのブースに立ち寄ったSさん。アニメや漫画が好きで毎年Expoに来られる常連だとお話ししてくださいました。
水引についても「これは何ですか?」「水引、初めて知りました。綺麗ですね。」と作品を眺め、ワークショップもぜひやってみたいと着席。
一緒に水引を指で柔らかく扱きながら(水引は最初の状態だと紙の硬い質感ですが、指で少し圧をかけながら撫でる(扱く)と柔らかく結いやすくなります)、
「クラフトは本当に好きで、今回新しいものに出会えて嬉しい」とおっしゃっていただきました。
そうしてあわじ結びを完成させ、カードに貼り付けた後、
私が「水引は人の心と心を結ぶ、そんな役割があります。このカードをどなたか大切な人にメッセージを書いて送ってみませんか?」と言ったところ、Sさんは
「それでは、ここに私自身にメッセージを書きます。実は最近病気が見つかり手術したばかりで、新しい人生を歩み始めた自分にエールを送りたいんです。いいですか?」
とおっしゃいました。「もちろん、水引は人の”想い”を守る役割を果たしてきたものでもあります。ぜひご自分への気持ちを、エールをお書きください。」
そう私が言うと、Sさんは少し目に涙を浮かべながら丁寧にカードにメッセージを書かれていました。
完成した後、Sさんは
「何気なく立ち寄ったブースでしたが、今日あなたと水引に出会えて本当に良かった。また明日からこのメッセージを胸に頑張ります」
そう言って心なしかブースに座られた時より力強く立ち去っていかれました。
Sさんとの出会いは今も私の中で本当に心と記憶に残る瞬間でした。
そして何だか私の方がSさんから勇気と水引の結いの力をもらった様な気がします。
2023年現在の自分から見たJapan Expo Paris 2022
Expoに参加したのは水引を結い初めて2年半経った頃でした。
それまでも水引を通して出会う方やご縁はとても温かく大切でしたが、特にExpoではご紹介したお二人だけでなく、ここには書ききれないほど多くの温かいご来場者の皆さんと出会い、作品を通しても本当に多くのかけがえのないご縁をいただきました。
コロナで開催が延びた2年間は水引を続けるか迷ったり出展を諦めそうになったこともたくさんありましたが、この日の為に結び続けて本当に良かったと
心から思います。
終わりに
Japan Expo Paris 2022はドイツで駆け出したばかりの水引作家にとっては本当に実り多いイベントで、記事を下書きしていた当初は出展に関してのエピソードだけを発信するつもりでした。
ただ、ブランドとして、ドイツで水引を生業にしていこうとする者として、Japan Expo出展をただの”良い思い出”として心に留めておくのは勿体無い。
そしてExpo後にドイツで活動を続ける中で少しずつ水引作家としての自信がついてきたこの段階で、
去年の経験で得たもの、逆に自分の経験不足で達成できなかった事に改めて向き合い、次の目標に向けての思いを自分だけでなく周りの人にも知ってもらいたい。
その為にはまずこの記事が必要だと思い、1年の時を経て今回の投稿に至りました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回以降はもう少し具体的に、自分が経験したJapan Expo paris 2022の反省点や次の目標について書いていこうと思います。
もしよろしければまた、読んでいただけましたら幸いです。
それでは。