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ジョシュ・ラニヨン先生作品を語る会

 ひとりだけど語る会をしたい。ということで、集っている気分で語りたいと思います。
※ネタバレはしていませんが、あらすじについては触れておりますので、ご注意くださいませ。


『アドリアン・イングリッシュ』シリーズ

 まずはこれ!大変なメロドラマ。もはや壮大ですらある。何がすごいって、読後時間が経つごとに染み込んでいく感動…。唯一無二の作品なのではないでしょうか?
 推理小説家で書店主でミドサーのアドリアンと、LA市警刑事でアラフォーのジェイク。とある殺人事件を通じて出会ってしまった2人が、運命の荒波に揉まれながら(色んな殺人事件に翻弄されながら)遂には結ばれるまでの物語です。運命の人に出会ってしまったら決して後戻りはできない、そんなラニヨン先生イズム(というかロマンス小説のセオリー?)がめいっぱい味わえる作品。
 持病のせいか、どこか厭世的で儚げなアドリアン。いつも強がっていて、皮肉屋さん。そんな彼の一人称視点から語られるのもこのシリーズならではの魅力の気がする。ジェイクもジェイクで、ワイルドで寡黙な感じの刑事さんと思いきや、急に気障なことを言ったりするので油断ならない。そんな2人の前に立ちはだかる大波がすごいんだこれがまた。
 大波その1、民間人アドリアンが殺人事件に巻き込まれまくる。事件捜査ものなので当たり前なんだけど、名探偵コ●ン並みに巻き込まれる。ギリ死神と呼ばれないレベル。いや、もう手遅れかもしれない。そして(全員ではないけれど)悪役らしいカリスマ性に満ち溢れている犯人たちも、大きな魅力!『海賊王の死』なんてまるで映画を見ているよう。まぁね、それはアドリアンが良い感じに解決していくんだけどさ…解決できないのがさ…
 大波その2なんだよなぁ~~~!!!ジェイク~~~!!!もう、これに尽きる。そして、この大波こそが『アドリアン』を『アドリアン』たらしめていると思います。ほんとに。ジェイクが自分の性的指向を受け入れられないことから生まれる悲劇を全部ジェイクのせいにしたくなっちゃうんだけど、彼がそういう生き方を選んでる理由を考えると、そうもできない。誰が悪いの?何が悪いの?シリーズ後半はそんなことを考えながら堂々巡り悶々と読んでおりました…苦しかった…。
 だからシリーズ読了後は、その波を、暗い潮流を渡り切った2人が、ただずっと幸せに暮らせますようにと願わずにはいられない!しかもそんな我々のためにラニヨン先生はちゃんとThey lived happily ever after… な短編をご用意してくださっていますので、BIG感謝。ブログに掲載してくださっているクリスマスコーダもスウィ~~~ト。BIG感謝FOREVER。
 あとこれは小波なんですけど、当て馬(?)たちもみんな魅力的!物語に良い感じのスパイスを加えてくれているので、ロマンスものとしての楽しさが引き立っています。
 総括:全人類読んで欲しい。絶対。

『All’s Fair』シリーズ

 とりあえず順に、お次は『フェア』シリーズ!番クリミナル・マインド味がすごい。BAUほぼ出番無いのに。ということで、シリアルキラー追跡サスペンスが好きな方には、かなり楽しめるんじゃないでしょうか。
 とにかく登場人物が魅力的。いやラニヨン先生作品全部そうなんだけども…。でもここまでツンデレなキャラクターは多分エリオットくらいなんじゃないでしょうか?博士号取得、元FBI捜査官で現大学教授という申し分ない経歴、しかも老若男女問わず色目を使われているような描写があるので、きっと容姿端麗。で、ツンデレ。おいおいおいおいおい!盛り過ぎ!とにかく、エリオットが1mmも素直じゃないのが良い。
 対するタッカーは、一見オレ様キャラだけど中身は不器用且つド直球。そこが分かるとなんというかこう…親しみが持てるというか…。「大変ですよね、エリオットみたいなタイプに惚れたら…まぁ飲みましょうや!」と言いたくなる感じ。エリオット曰く雑誌から飛び出てきたモデルさんのような体形らしいし、実際近寄り難い雰囲気なんだろうけど、キャラクターが分かると愛おしくなってくる。エリオット、あんまりタッカーを責めないでやってくれ。
 第1巻の『フェア・ゲーム』で2人が再会し、お互いの気持ちを確かめ合うまでがもう、大変グッドです!他シリーズには無いやきもきした感じ!イイネ!(元気良く親指を立てる)アドリアンたちと違って「結ばれるまで胸が苦しい!」とかではなく、美味しい方のやきもきです。(ウィンクしながら)じわじわ思いが通じ合うのではなく、劇的アクションを経てアドレナリン出まくりな2人の燃え盛るディザイアをぶつけ合う…という展開が最高だった!
 そしてエリオットのお父様であるローランドも外せない。経歴やキャラクターもとっても魅力的なんだけど、この親子の関係性が物語に良い~感じの味付けをしてくれるんだわ~。たまに泣きそうになったもん。良いよね、この親子。この親子の深い愛も、ただ感動的ってだけじゃなくてストーリーのコアにもしっかり繋がっているのがラニヨン先生の巧みなところ。
 全3巻だけど、まるで重厚な犯罪捜査ドラマを何シーズンも見ていたような満足感!劇的な展開のロマンス、サイコパスとの心理戦、緊迫した追跡劇、ユーモアに溢れたやり取り…。そして、ラニヨン先生の他作品とも人物が繋がっているので、ファンにはたまらないシリーズ。(これを私は勝手に「ロス支局バース」と呼んでいます)
 総括:劇的なロマンスとサスペンスを3巻で味わえるので、お得。

『殺しのアート』シリーズ

 ラニヨン先生ソムリエだったら、「色、香り、味わい、全てのバランスが完全な調和を作り出している至極の味わい」と表現すると思う。とにかく、それくらい色んな要素が楽しめちゃう!事件捜査はもちろん、スリリングなアクションシーンも、サスペンス要素も、もちろん心ときめくロマンスも、全部良い具合に味わえる最強のシリーズ。それが『殺しのアート』なんや!
 全部そうなんですけど、キャラクターが良いんですよ、とにかく。主人公ジェイソンは正義感が強く真っすぐ情熱的な性格で、まさに「ザ・主人公」タイプ。とにかく可愛い。愛おしい。こんなに真っすぐに好き好きされたら、そりゃこっちも惚れるよ。そしてちょっと嫉妬深かったり面倒くさい一面もあるけど(自分はそうは思ってない)一度惚れたらそこも可愛くて仕方がない。とにかく可愛い。
 対するお相手役サムは、正反対の冷徹なプロファイラ―。前述の「ロス支局バース」的観点から言うと、様々な作品で伝説的捜査官として語られるBAUの主任です。私は『殺しのアート』から読み始めちゃったけど、刊行順に読んでいた人は本当に驚いたと思う。このサム・ケネディを落とせるってどういうこっちゃ!?!?ってなりそう。とにかくそれくらい、近寄り難いし他人に壁を作るタイプ。なんだけど、堅物ではないんですよねぇ。うふふ。
 出会ってすぐにジェイソンはサムに惹かれているんだけど(描写から結構明らか)本人はまったく無自覚でそこがまた面白い。不器用寄りなこの2人の関係がどうなっていくのか…とにかくページをめくる手が止まらなくて一気に読んでいました。2人の関係はもちろん、アメリカ国中を飛び回るからその土地土地の描写も面白い!犯罪現場となる特徴的なロケーションも読んでてドキドキわくわく楽しい!
 主人公は美術犯罪を専門とするジェイソンなので、サイコキラーとの追跡劇がメインになる訳ではないけれど、別要素でしっかり(?)クリミナル・マインド味も味わえるので、All’s Fairファンも楽しめるはず。
 現在5巻まで発売中で、モノクローム・ロマンスのスペースでは次巻が最終章とのこと。完結まで絶対元気に生きようと固く誓っている。見届けるぞ!おうっ!
総括:読むしかねぇ。

短編、スタンドアローン作品

 もちろん語るぜ!沢山あるぜ!

『ウィンター・キル』

 普通に単独で楽しいのはもちろん、殺しのアート2巻目『モネ・マーダーズ』を更に楽しむことができる一冊。どちらを先に読んでもヨシ!
 タイトルの通り、オレゴンの冷たい空気をずっと感じながら、不可解な事件の行く末を捜査していく。ド派手なアクションシーンがある訳ではなく、確かに華やかではないけれど、事件捜査は他作品より読み応えがあるなぁと思ってます。(個人の感想です)主人公アダムの性格も手伝って、何となく硬派な雰囲気がする。
 その一方で惹かれあっていくアダムとロブの描写はスウィ~ト…!ロブが甲斐甲斐しくお世話を焼いちゃうのがとにかく愛おしくて、なんだか暗く冷た~い事件捜査の中で甘〜い癒しなのです。ちゃんと最後までスウィ~トが詰まってます。
総括:温冷交互浴

『ドント・ルック・バック』

 大好きィィィ!以上!
 の一言で終わらせたくなるくらい、みんなの大好物王道ロマンスって感じ。韓国ドラマとかで起きそうな、ベッタベタな「記憶喪失モノ」です。
 何者かに襲われ、外傷のせいで記憶喪失の上、犯罪容疑までかけられて、もうこれ以上不幸になりようがないくらいどん底の主人公ピーターが、あまりに不憫で…。こんなに孤独感に苛まれてるキャラクターはラニヨン先生作品で見たことがないってくらい。そんな彼の前に現れる、やたらトゲトゲした強盗殺人課の刑事さん、グリフィン。やたら現れ、やたら意味深な発言をしてくる。
いや!どう見てもそういうことだろ!
の一言で終わらせたくならないくらい、不器用な2人にやきもきときめき。事件の構造はシンプルだけれど、ピーターが自分の人生を取り戻していく様子が他の作品では味わえない唯一無二の魅力です。
総括:王道は正義

「クリスマスの航路」

 美術犯罪捜査班のシェイン・ドノヴァンが主人公。おや…?聞き覚えがありますかな?そうです!『殺しのアート』主人公ジェイソンの相方の物語なのです。この短編を読んだ時、私は思わず叫んだ。
ロス支局のみなさ~ん!恋、してますか?
オモコロチャンネルの永田さんになってしまったのである。
 ジェイソンに負けず劣らずシェインの恋模様もびっくりするくらいドラマチック。数年前突然姿を消した恋人(的存在)が、再び目の前に現れ…彼は何者!?というところから始まる。ホリデーシーズンらしさと、ちょっとした日常のミステリーと、すれ違い、この3要素が最終ほっこりロマンスとして完成。私は最後の一文(正確には二文?)がものすごく印象に残ってます。
総括:読んでしあわせ~!

「雪の天使」

 引退した大泥棒ノエルが主人公のとんでもねぇロマンス。すごすぎる。この短さで心臓ってこんなにドキドキできるんだ…。アドリアンなら病院に運ばれてたぞ!?正直何を言ってもネタバレになってしまいそうなので、多くは語るまい。これ大好きィィィ!はい、この一言で伝わったはずです。
総括:ホリデーシーズンを彩る「トゥンク…♡」の嵐

「夜の眼」

 邦訳されている作品の中では割と異色に感じる作品。脱獄した殺人犯に命を狙われているかもしれない記者パーカーは、警察官に護衛されながら人里離れた山荘で過ごすことになる…。そんな感じで、決して明るい感じはなく、「これロマンス?」と首を傾げてしまうこと間違いなし。パーカーの後悔や苦悩や恐怖が描かれ、命を狙われているという極限状態の中でとんでもなく張り詰めた空気がひしひしと伝わる。そんな中、護衛を務めた警察官のヘンリーが…!とにかく素敵!派手ではないけれど、心に爪痕を残すような、そんな作品です。
総括:ロマンスってこういうのもあったんや!

 以上!
 語る会って楽しいね。またやろうね!一人だけど。


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