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-philic/-phobic:油が好き、水が嫌いは同じ意味?

油汚れって落ちにくいですよね?

油汚れはいくら水洗いしても綺麗になりません。油と水は混ざらないからです。ここで登場するのが、水と油の間を取り持ってくれる界面活性剤(surfactant)です。多くの台所用洗剤には界面活性剤が入っています。

今日のお題は、界面活性剤の構造です。

hydrophilic group
hydrophobic group

界面活性剤には、2つのパーツ(group)があります。


単語を分解してみよう

一見知らない単語は分解してみると、理解出来る「共通のかたまり」が見えてくることがあります。詳しくは、接頭辞のレッスンをお読み下さい。

hydro philic 
hydro phobic

二つの単語似共通するのは、接頭辞 hydro- です。
「水の」という意味です。

後半部分にも、決まった意味があります。

hydro philic   水が好きな
hydro phobic  水が嫌いな

日本語の教科書では、以下のように登場します。

hydrophilic group  水基
hydrophobic group  水基

親水基が水とくっつく部分、疎水基が油とくっつく部分です。その結果、油と水が混ざります。

ところで、○○恐怖症という時には、○○phobic/○○phobia と表現することもありますが、かなり硬い印象になります。会話の中で説明するときは、「○○が嫌いだ」という表現に置き換える方が自然です。

△ I'm a nyctophobia.
○ I'm scared of darkness.

おまけ(読み飛ばしてもOK)↓

日本語は抽象的で、英語は具体的という特徴があります。これは、日本語が名詞中心の文化であるのに対し、英語は同士中心の文化であるからです。この特徴を上手く説明している本があります。


英語きっかけで理科に踏み込んでみる

中学生向けの授業で界面活性剤を扱った時のこと。

油にくっつく部分は、疎水基(hydrophobic group)だと紹介したところ、一人の生徒がぽつりと呟いたのです。

「なんでoilphilic group(親油基)って言わないんだろう?」

その発言に、「確かに!」生徒たちの顔が上がりました。

“oleophilic” (“oilphilic”とは言わない)という言葉は確かに存在するのですが、界面活性剤に関する解説に登場することはありません。ただし、”lipophilic” という言葉は見かけます。

英和辞典によっては、どちらも「親油性の」と訳されている場合がありますが、厳密には少し意味が違います。

“oleo-“は「油」
”lipo-“は「脂質」
油は脂質の一種なので、”lipo-“の方が”oleo-“より広義

つまり、油だけに反応するなら”oleophilic”ですが、油以外の脂質にも反応するなら”lipophilic”ということです。界面活性剤の場合、反応するものは油に限定されるわけではないようですので、”lipophilic”という表現の方が適切かと思います。

とはいえ、“hydrophobic”という言い方が一般的です。界面活性剤のそのパーツが水に溶けないことは間違いないので、最も誤解の少ない表現だからではないかと思います(もし理由をご存じの方がいたら教えてください)。


目的にあった言葉を選ぼう

ただし、界面活性剤のどんな特徴について説明するかによっても、「hydrophilic」の適切な訳語は変わってくるかもしれません。

例えば、台所用洗剤で界面活性剤が活躍するのは、油汚れを落とす時です。ごく一般的な台所用洗剤のユーザーに説明をするなら、「親水基」と「親油基」と説明する方が、読み手には分かりやすいのではないでしょうか?

日本語と英語は必ずしも1対1で結びつくわけではありません。また、状況を説明するのに相応しい単語も1つではありません。誰にどんなこと説明するのかに応じて、適切な言葉を使えるようになりたいですね。


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