酒、それは愛しきもの
こちらの世界に出戻りしてからというもの驚くほど健康的な生活をしています。
人間界滞在の終盤は、起きたらとりあえずチューハイの缶を開けていました。食事はUberEATS、ネットスーパー、Amazonで買い込んだインスタントラーメンのどれかで、調理といったらレンジで温めるかお湯を沸かすかの工程だけ。何を食べるか決めるときは酒のつまみになるものという条件つき。お酒もごはんも大好きだけど、真っ暗な生活でした。
魔界では基本的に毎日夕食を作っています。母様が帰ってくる1時間くらい前からキッチンに立ち、右往左往して料理らしきものを作る。母様が料理当番の日は申し訳なさすら湧くようなりました。
最初は母様の前では気が引けて飲まずにいたお酒も、今では生活にないのがあたりまえになりました。あんなに飲みたくて我慢してたのに我慢ですらなくなった。「お酒飲みたい」と思うことはあるけど、毎回何かしらの理由で飲むまで至らない。飲むつもりで買ってきたこだわり酒場のレモンサワーの500mlがキッチンの隅に、350mlが買った日に使ったバッグの中に常温で置かれています。
ある程度お酒が入った状態から始める配信が大好きでした。先に飲む理由はシラフだと喋れないから。とりあえず酔って、配信の気分になったらする。呂律が怪しくなり鼻もつまりまくった状態で、現実世界にいない友達の代わりに電波の向こうの数人に向けて話をする。正直風呂もろくに入れてなかったし、2週間に一度しか部屋を出ないような自分だったけど、そんなの視聴者にとっては何の問題でもなかったのです。
母様の実家で採れた野菜を使った料理は案外いいです。
この先一生肉と酒のつまみしか食べなくていいと本気で思っていた自分が、ししとうが好物だと自覚する日が来るとは思いもしませんでした。
母様に顔がすっきりしたと言われて、久しぶりにしっかり鏡を見たら確かに輪郭がすっきりしたように見えました。
しかし、体重計を引っ張り出してみたけど重さは少しも変わっていませんでした。本当にすっきりしたように「見えた」だけでした。
親戚の家や買い出しなど何かとどこかに連れ出され、三食食べて野菜まで食べてる。起き上がる、立つ、自転車を漕ぐ、人と話す。今まで忘れていたことを徐々に取り戻しています。あとは働くだけ。
健康で文化的な生活だけど、それでも全てを放り出して自分だけの世界に引き篭ってしまいたくなります。
酒を飲む私が好きだと言ってください。
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