「ぬ」という一文字は音なのか、意味なのか、概念なのかーーそれが私がこの9ヶ月向き合った課題とも言えるだろう。今企画「おんがくが『ぬ』とであふとき」の出発点は、上條晃氏の教育的側面を持つ研究であった。古代語の「ぬ」を通して(西洋)音楽を考えるという大枠があり、上條氏は主に演奏の学生に対して研究を実施していた。作曲家の立場としてこのテーマに取り組んで欲しいとのお声がけをいただいたとき、私が最も心踊らされた「ぬ」の特徴は、「花散りぬ」で感じられるような、物事が終わりつつも次の何か
今年はありがたいことに、ピアニストとしては50回以上の本番、作曲家としては10回近く自作品が演奏される機会をいただくことができました。項目別に振り返っていきたいと思います。 ソロ 3月にはフランクフルトのGallus Theaterにて、ルトスワフスキ《2つの練習曲》と《ピアノソナタ》よりAdagioを演奏させていただきました。カッツバッハ強制収容所から始まった「死の行進」を記憶するイベントでした。ドイツの歴史教育を目の当たりにすることができたのは貴重な体験でした。 4
何となく、自分がこれから挑戦してみたい作品(ソロ・コンチェルト)を書き留めておきたいという気持ちになったので、記してみる。 ご興味のある主催者さまがもしいらっしゃいましたら、ご連絡お待ちいたしております。 【ソロプログラム】 Helmut Lachenmann : Serynade (1997/98)(35min) 内部奏法あり 小倉美春(1996~) : 滲み (2023)(24min) 向井響 (1993~) : Love After Love for piano
もっと頻繁に自分というものを言語化すべきだとは思いながらも、時間はあっという間に過ぎていき、いつの間にか師走の暮れに振り返り記事を書くためだけのnoteになってしまいました。今年も多種多様な音楽シーンに関わることができた喜びを噛み締めつつ、振り返っていきたいと思います。 1月 Trio Estaticoさんによる、ヴィオラ3台のための拙作"聲"のオンライン初演から年が明けました。 中旬にはフランクフルト音大にて、Arevik BeglaryanさんとDasom Kimさ
さてさて、年末になったことだし、1年の振り返り記事を書くか…とnoteを開いたところ、前回の記事が「2020年を振り返る」とあります。ああ、1年って早いものですね。 実は、いくつか書き溜めた記事もあるのですが、最近は、芸術や世界について思うことがあっても、それを口にしようとすると、何か大きなものに対する畏れが湧き上がってきてしまって、なかなか公にすることができません。(昔はあんなこんな、青いツイートもしてたなあ…) 今年もたくさんの場所で、たくさんの方々にお世話になりました。
2020年もたくさんの応援をいただきありがとうございました。年が始まった頃は、誰がこれ程まで混乱の年になると予想していたでしょうか。そんな中で、自分がどのように音楽シーンに携わることができたのか(或いはできなかったのか)、振り返ってみたいと思います。 1月ありがたいことに、2020年で一番本番をいただいた月でした。 1月13日にはフランクフルト音楽・芸術大学にて、バッハのパルティータ第4番を初出し。 1月15日には、Bad Homburgという町でコンサートをさせていただ
現代音楽の登竜門と言われるオルレアン国際ピアノコンクール。前編では課題曲などを中心に、コンクールそのものをご紹介しました。後編では、私が挑戦した2018年当時のお話をしていきます。 ※この記事は、全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。 投げ銭は、活動資金の一部に充てさせていただきます。 1. どのように準備したか忘れもしない2016年12月31日。いよいよ新しい年になるのか、来年はオルレアン挑戦の年だな、と思いを馳せ、何気なくコンクールのHPを見たところ、既に
今回は、私の音楽人生におけるターニングポイントとなった、オルレアン国際ピアノコンクールについて、前編・後編に分けてお話ししていこうと思います。 ※この記事は、全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。 投げ銭は、活動資金の一部に充てさせていただきます。 1. 挑戦のきっかけ 私が挑戦したのは大学3年生だった2018年、第13回目でしたが、このコンクール自体を知ったのは、高校生のときだったでしょうか。 トーマス・ヘルさんや永野英樹さん、藤原亜美さんといった、特に現代
ダルムシュタット夏季現代音楽講習会について書いた前回の記事に、思いがけず多くの反応をいただいて嬉しいです。ありがとうございます。 ※この記事は、全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。 投げ銭は、活動資金の一部に充てさせていただきます。 今回も、現代音楽好きなら知っている、キュルテンで行われるシュトックハウゼン講習会について記していく。私が参加したのは2017年だが、それ以前の講習会参加レポートとしては、松平敬先生のブログが素晴らしいので、ぜひご覧いただきたい。
※この記事は、全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。 投げ銭は、活動資金の一部に充てさせていただきます。 さて(実質)「op.1」となる記事、どの過去Tweetから深めていこうかしらと 遡っていたところ、懐かしい写真と再会した。 2018年、ピアノクラスの受講生として参加させていただいた ダルムシュタット夏季現代音楽講習会。 せっかくの機会だから、ピアノクラスのことについて、そして ダルムシュタットという街で何を感じたのか、思い出せる限り記していく。 ※なお
小倉美春。 ピアノを始めて22年、作曲を始めて6年。 幸いなことに、今も弾いたり書いたりできる状況にある。 「ピアニスト」「作曲家」と名乗ることは、今の私に許されるのだろうか、 と考えることがある。 自らその肩書を背負うことで、プロフェッショナルになると追い込むのも 「あり」。 現実は「ピアニストごっこ」「作曲家ごっこ」になっていないかしらと、 厳しく自制することもある。 しかし、私という人間から音楽を取ったら、何が残るのだろうか。 空っぽの自分を想像して、また覚悟を決め