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★7 地獄で仏のたとえ

 さて青丹につきましたのが、夜の十一時頃で、もう霜が降ったような冷たい大地に佇んで、さて何所へどう歩いていこうかと考えながら、空を仰ぐと澄み切った月の冴えが、ひとしお哀愁を思わせました。

 長男は途中沼田に落ち込んで靴をとられてしまい、ハダシでつめたい地面に立っていたが、弱音一つはかないで、我慢していたようである。と申しますのは、途中闇路を歩いている中に沼田に落ち込み、靴を沼田にとられ際、半泣の状態になったが、ここでやさしい言葉をかけてはだめだと思い、大声で𠮟りつけましたので、その効果がまだつづいていたようでありました。

しばらくの後、

「ヨボショ(モシモシの意味)」

と一人の朝鮮人から声をかけられました。

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