観音超渡の、功徳
観音様を本尊とする超渡法要が、17日(日)に開白しました。
今回用いる儀軌は、クンキェン・ジグメリンパが発掘された「ロンチェン・ニンティク」法の体系に属します。
クンキェン・ジグメリンパが感得した観音「トゥクジェ・チェンポ・ドゥンゲル・ランドル」(大悲尊 痛苦自解脱)が、その正式名称になります。
「ドゥンゲル・ランドル」はチベット仏教では、もっぱら死者の引導(いわゆる葬儀)や年忌法要に用いられますが、儀軌のメインパートそのものは、観音(観自在)菩薩を本尊とする成就法です。
観音菩薩といっても、この教えの体系においては菩薩ではなく、仏陀そのものであるというのが、師の口伝です。
よってここでは「観音様」もしくは「大悲尊」と称することにします。
ドゥンゲル・ランドルの曼荼羅には四事業(息災・増益・敬愛・降伏)をつかさどる明王が四方に配置され、さらに財運や長寿、恋愛などをつかさどる尊天(摩利支天や作明仏母など)も曼荼羅におられ、1つ1つ尊天の祈祷と真言を唱誦していくため、世俗的な成就も達成できるのが特徴的です。死者のための行に特化しているわけではありません。
ですが台湾や中国の中華圏ではご先祖様を供養するお彼岸や清明節を大切にするため、最近ではその時期になると中華圏の人々がスポンサーになって、盛大に「ドゥンゲル・ランドル」の超渡法要が営まれます。
私自身、「ドゥンゲル・ランドル」の灌頂および口伝は、ネパール等で伝授を2回受けていて、自信をもって行じております。
「ドゥンゲル・ランドル」の体系には様々な儀軌が付属しているのですが、超渡もその1つです。
「超渡」もしくは「超度」という言葉は聞き慣れないと思いますので(そもそも中国語であって日本語でないため)、ここで確認をしておきたいと思います。
超渡とは、悪趣(地獄・餓鬼・畜生)に堕ちた故人や先祖、両親・親戚、何世にもわたる冤親債主、中陰にさまようすべての衆生、現実世界を生きる私たちに至るまで非常に有益な行です。
超渡の儀軌も様々ですが、今回使う「ドゥンゲル・ランドル」の超渡には死者への授戒と灌頂、遷識法もすべて含まれています。
さらに特徴的なのは、「ドゥンゲル・ランドル」の超渡は六道輪廻の世界1つ1つにアプローチしていき、そこの世界を浄化していくのです。
破地獄、破餓鬼、破畜生・・・という具合に。
そこはさすが、観音様ですね。
とはいっても六道すべての衆生を浄化しきれるかといえば、私たちと縁のある(有縁の)衆生になってしまうのは、仕方ないことかもしれません。そこで私たち仏教徒は、日頃からあらゆる衆生と善い縁を作りつづけることで、済度の範囲を拡大していくのです。祈りの射程範囲をより広く正確に絞ることができるためです。
「済度の範囲を拡大」というとすぐ布教や説法を連想しがちですが、少なくとも私たちが空性を悟り菩薩の地に入るまではすべて邪なものですから、そのような活動はできないのです。ましてや教団の拡大や、組織拡大は論外です。
私たちが修行をして空性を悟り、さらに空性とセットである慈悲を体現することは、衆生の済度にそのままつながります。そうしないことには、いくら経っても本当の衆生済度がスタートしません。
洞窟に長年籠って瞑想している行者も世界を救っているというのは、そういう理由です。
話が少し逸れましたが、超渡とツォク供養も含んだ約3時間にわたる儀軌を、8月7日まで毎日修しています。昨日(7月18日)は2日目でしたが、ちょうど観音様の御縁日(日本の伝統)にあたりました。
さらに京都アニメーションでの痛ましい事件から3年目にあたりましたので、亡くなった方々のために祈ることができました。
引導法は今年4月の清明節でも執り行ないましたが(過去記事:2022年4月7日)、今回は「ドゥンゲル・ランドル」の体系で、前回とは異なるものです。しかし基本構成は一緒です。
入壇と授戒・灌頂・遷識法はチベットの金剛阿闍梨が導師となって執り行ないます。
前回は位牌を私のほうで作成しましたが、今回はすべて台湾のチベット寺院に送ってまとめて修法されることになりました。そのタイムラグとコストを考えると、今回は皆さまに広く賛同を募ることはできないと思いましたが、少しでもご縁のある方が済度されればと思い、ご希望あれば7月21日(木)迄の期間内で受け付けます。
※定数に達しましたので、いったん超渡の受付は終了させていただきました(7/21 18:00)
前回までは、位牌の写真を希望者にお送りしていたのですが、今回は上記の理由でそのようなことができません。ご了承ください。
位牌を作成した超渡法でなければ、ツォク供養への供養や祈願と同様、これまで通りのサポートでけっこうです。いつでも受け付けておりますのでよろしくお願い致します。
サポートは、気吹乃宮の御祭神および御本尊への御供物や供養に充てさせていただきます。またツォク供養や個別の祈願のときも、こちらをご利用ください。