飲水思源の、清明節
4月4日(2021年)は、二十四節気の「清明」(せいめい)です。
前回にも記しましたが中華圏の風習では「清明節」といって、この期間にお墓掃除をして、親戚縁者が墓前に集合し、ご先祖をお祀りするのです。これは中国人・台湾人にとって最重要の「孝道」(孝行の美徳)とされます。
似たような風習は、沖縄にも現存していると聞いたことがあります。
もともと古代中国では帝王や諸侯が陵墓で独占的に行なっていた祭祀ですが、漢代以降は庶民にまで普及しました。
といっても古代は「清明」の節句という規定はなく、春節を過ぎたあたりの吉日を選んでいたようです。
台湾では1935年に、春分の後15日目を清明節にすると規定しました。台湾の今年のカレンダーでは4月2日~4月5日の4連休になります。清明節はピクニックや遠出をする習慣もあります。
中華圏の風習として、清明節でお墓掃除を終えた後に、柳の枝をいくつか折って飾ることがあります。柳は邪を除けるとされていて、玄関に枝を刺したり、帽子に刺したりするのです。
また「新しい靴を履くといい日」ともされます。
チベット仏教では墓を持ちませんのでこうした風習は一切ないのですが、最近は中華圏の施主・信者が多数を占めてきたのでこれを尊重して、清明節に特別な法要を催行することが多くなりました。
具体的には観音菩薩を本尊とする盛大なツォク供養、亡くなった方を速やかに解脱へ至らしめる阿弥陀仏を本尊とした「往生法」(遷識法)の法要、地蔵菩薩の法要などです。
いずれも故人・祖先・縁のある魂の苦痛を取り除き、加持し、悪趣に堕ちていたらそれを救うことで解脱へと至らしめる、優れた利益があります。
現世を生きている私たちには、過去世から引きずるなんらかの業の負債があると、仏教では考えます。過去において縁のある魂に対して為した負債があると、現世において何事もうまくいかなかったり、障礙が起こるという結果に結びつきます。
こうした負債は、「遷識法」により縁ある魂に加持を与えたり、私たちが滅罪の行をすることによって返済が可能です。
気吹乃宮でも阿弥陀仏の行や「遷識法」などの特殊な行を予定しています。
春分・お彼岸から続くご先祖様への祈りは、清明節で区切りを迎えます。
清明節は「飲水思源(いんすいしげん)」。日本では「基本を忘れるな」というような四字熟語ですが、台湾ではご先祖のことを指します。水源があるから、今日まで水の恩恵にあずかっているわけです。