この作品を見にきた!「松林図屏風」
今日は一枚の作品を見るためだけに上野へ。というのも展示期間が明日1月13日までしかないということで慌ててきた感じ。
ということで「今月(2020/01)行きたい美術展たち」で書きました長谷川等伯の「松林図屛風」を見に上野にある東京国立博物館へ行ってきました。
行った時間は13時ごろだったかと思いますが、この展示よりも即位礼正殿の儀で用いられた高御座・御帳台の特別展示のほうが圧倒的に人が多かったですね。なんでも待ち時間は1時間ぐらいだったとか。
本当はこれもあわよくばと思っていましたが今日のメインの目的ではなかったので断念。ただこれを見るだけなら入場無料なのと平日の午後なら待ち時間はそこまでなさそうなの来週タイミングがあえば行くかもしれません。
ということで母の勧めもあった松林図屏風ですが、まっさきに見に行っただけの価値はありました。霧の中の松林を表現しているこの作品ですが、一見するとさっと描いているように見えます。
しかし実体は近くで見ても遠くで見ても松の枝一本一本が精密に描かれていて黒もまったくつぶれていません。
そして驚くのは白の使い方で松を通り過ぎる霧はどこか不定の形のようにみえ余白であるにも関わらずより幻想感を強く表現しています。
さらにすごいのはこれだけではありません。霧という空気を表現する中で重要なのは見えそうで見えない、あるいは見えることができないようで見えている、いわば白でも黒でもない部分です。墨でこのあたりを表現しようとするとなると水と墨のバランスが重要だと思われます。この作品では絶妙ないろ加減がとても興味深かったです。
ということで別のところでやる企画展に貸し出されたとすればこの作品だけで大行列が並ぶレベルの「松林図屏風」。そこまで混んでいない時間で見れたのは本当に光栄なことです。
最後にやはり思ったのは「本物は違う」という点です。ポストカードや他の媒体で見る時そこにはデジタル、あるいはアナログのなんらかの処理が入りますが最近の技術を見るとほとんど変わらないように見えます。
また今回の「松林図屏風」は学校の社会の資料集などに日本画の典型的な作品例として多く目にしてきたことでしょう。そして墨の絵の感じや、空白の多さから「あまり・・・」といった感想を持っていた人も多くいたと思います。
自分もその一人でした。
しかし実物を見て思ったのは他の媒体で見てきたものと同じようなのにどこか違うという感覚を受けた点です。この感覚は昨年のコートールド美術館展であったマネの「フォリー・ベルジェールのバー」を見た時の体験と一緒です。
よく見たことがあるはずなのに実物はどこか違う。絵のはずなのに立体的な構図がそうさせるのか空気感という実物を見ないと分からない部分なのか分かりません。
そんな「松林図屏風」ですが、今年は2020年1月13日、つまりは明日(実質今日)までしか見ることができません。次に見られるチャンスは来年、もしくはどこかで巡回してくれることを祈る程度しかできませんが1年もしくは2年に一度は公開している作品ではあるので、ぜひチャンスがあれば一度見に行くことをおすすめします。そして本物のは違うという感覚を体験していってください。それがなせる作品です。
※今回の作品に対する写真撮影ですが、特別展でないことと個人利用に限る範囲であれば撮影OKとのことなので使わせていただいております。
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