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生産性を高める ~どこでも通用するスキルを身に着ける⑦~

生産性を高めることは、ビジネスパーソンの永遠のテーマである。企画系の仕事だろうが、現場系の仕事であろうが、管理系の仕事であろうが同じである。経営コンサル・プロジェクトでも「生産性を高める」ことをテーマに取組んだことも何度もある。その経験から生産性を高めるための視点や方策を共有したいと思う。

最初に抑えておくこととして、誰でも生産性向上余地があるということ。もちろん、私も例外ではない。これまで100社以上見てきたが、経験則的に20~50%ぐらいの改善余地があると思っている。”自分は無駄なく仕事をしている”という方もいるかもしれないが、意外に第三者の視点で見ると、無駄な時間はあるものである。

ロストタイムとは?

では、その生産性向上余地とは何なのか? 様々な種類の業務があるけどもその中にはロストタイム(=失われた時間)が存在する。要するに無駄な時間である。このロストタイムには大きく7つの種類が存在すると思っている(下図参照)。

①無意味業務:活用されないアウトプットに掛けている時間である。何のためにやっているのかよく分からないけど、”昔からそうしているから”という理由で行っている業務で、且つそのアウトプットが何にも繋がっていない業務である。誰にも使われない数字の集計作業や資料作成などはここに含まれる。

②待機:文字通り待っている時間である。必要な情報・モノ・指示等がないことによる手待ち時間である。流れ作業のように効率化された生産現場では今は少ないかもしれないが、企画系や管理系の業務にはあるだろう。仕事をする上で必要な情報・材料が揃わずに待ち時間になった経験は誰にでもあるはずである。

③重複:重複した業務に費やした時間である。他部門や担当者と同一業務を遂行している時間である。もちろん、遂行している本人の問題ではなく、組織内・組織間の役割分担が不明確が故に発生するものである。組織が大きくなればなるほど、誰が何をしているのかが見えづらくなり、同じ業務をあの部署でも、この部署でもやっているなんてことはよくある話である。

④やり直し:作業ミスや要件不一致によって、発生するやり直しの時間である。上司や顧客による要件を取り違えて、無駄なアウトプットをして、やり直しが発生したという経験は誰しもがあるだろう。

⑤非本来業務:本来業務と異なる業務を遂行している時間である。本来は他の人がやるべき業務を肩代わりにしてやっているものも含まれる。また、単純作業系でITを活用すれば、人が介在しなくてもいいような業務(自動化可能な業務)なんかもここに含まれる。

⑥過剰品質:顧客や社内の後工程に求められている要件以上の品質を出すための業務時間である。社内の報告資料の見栄えに掛けている時間なんかはここに含まれる。もちろん、顧客の期待を超えることは大事だけども、そこは投下時間とのバランスを見極めていく必要がある。

⑦ペーシング:基準値と比較し、自らのペースによって必要以上に投入している時間である。本来30分で終わるべき業務を、60分掛けた場合、その30分がロストタイムという訳だ。生産現場では一つの製品を作るための基準値は設定されているけども、企画系や管理系の業務で基準値が設定されていることはほぼない。それが故に”自分のペースで仕事をする”ことによる無駄な時間は結構ある。もちろん、ガチガチに基準値を設けてやるべきという訳ではないが、目安くらいは必要だろう。

ロストタイム

ロストタイムの原因と解決方法

ロストタイムの原因は様々あり、その原因によって打ち手は変わってくる。ここでは主たる原因と主な解決方法について共有していく(下図参照)。 なお、ロストタイムの原因は個々の業務や組織によって異なるため、打ち手は個別具体的に論じていく必要があるが、ここでは一般化された議論だと思ってもらえればと思う。

ロストタイムの原因と方策

①無意味業務の原因と対策:この主な原因は、その業務のゴールや目的が曖昧であったり、業務の棚卸が組織としてできていないことに起因することが多い。主な解決策としては、1.ゴール・目的の明確化である。私がやるのは週次でチーム全体のゴールを設定し、それを日次分解して共有するとともに、各個人にも週次ゴールを立ててもらう(下図参照)。そうすることで各業務のゴールや目的が不明瞭な業務というのはなくなる。会議もまたしかりである。また、2.業務の棚卸と廃止・簡素化である。組織としての業務を棚卸しをして、重要性・緊急性を鑑みて、両方ともに”低"であれば、廃止するか、簡素化するという方向性を考える。又は業務量が少ない他部門があるのであれば、移管するという選択もありだと思う。なお、業務の棚卸の仕方としては業務を大分類・中分類くらいに分解し、それぞれの発生頻度・回数・1回あたりの所要時間を算出するのと、優先度・緊急度を高・中・低ぐらいに分解しておくといい。

ゴールの明確化

②待機の原因と対策:この主な原因は、業務量(バックログを含む)の不足や、情報等の連携不足に起因することが多い。主な解決策としては、3.バックログコントールである。要するに重要性・緊急性も高くないけども、やらないといけない業務をリスト化しておき、それを手待ちが発生した時にやるということである。これは隙間時間の有効活用にもなるのでお勧めである。もう一つは4.業務プロセスの整流化である。必要な情報や資料がないのであれば、プロセスのどこかに不備があるので、その業務全体のプロセスを可視化して、どこにボトルネックがあるのかを見極めて、プロセス改善をしてみる。

バックログコントロール

③重複の原因と対策:この主な原因は、部門間や担当者間の連携不足であったり、役割分担が不明確だったりすることで発生する。主な解決策としては、2.業務の棚卸である。しかも複数部門で、同じフォーマットで棚卸をしてみると、部門間での重複度合いが見えてくる。また、担当者間の役割分担が不明確な場合は、業務の棚卸表の各業務に主担当を記載することで解決できるし、組織間の役割分担であれば、4.業務プロセスの整流化と役割の明文化をセットで行うのが有効である(下図参照)。また、管理職でも、本部長と副本部長(又は部長と副部長)の役割が曖昧ということはよくある。その場合は、それぞれの役割を書きだしてもらい、重複する箇所をどちらかに寄せた上で、その役割を果たすための行動を具体化する。管理職が”二人でやる”ということを極力なくし方が組織としてのパフォーマンスは向上すると思う。

業務プロセスの整流

④やり直しの原因と対策:この主な原因は、不明確な要件(指示)によるものと、自身の作業設計ミスによるものに分かれる。不明確な要件は、基本的には伝える側の問題であり、解決策としては5.アウトプットイメージ化/共有である。これだけでも要件不一致は大きく減らせる。特にリモートワークが増えているので、口頭ではなく、アウトプットイメージでやりとりした方が無駄は少ない。また、自分の作業設計ミスの原因も同じで、対策としては、何をアウトプットするのかを手書きで整理した上で、作業に入る方が結果的に効率がいい。ちなみに、資料を作成する場合はメッセージ・ストーリーラインを先に考える。そのメッセージに沿った絵コンテを手書きで作成する。それができてからパワポを作る方が結果的に効率的である(下図参照)。

アウトプットの明確化

⑤非本来業務の原因と対策:この主な原因は、他部門との役割分担不足がある。その場合の主な解決策としては、またまた4.業務プロセスの整流化と役割の明文化がある。また、メンバーの知識・スキル不足があり、できる人(上司等)が肩代わりしているという原因もある。その場合は7.段階的な業務移管と成長フォローアップが有効である(下図参照)。ちょっとずつメンバーのできることを増やしていき、ちょっとずつ業務移管をしていく。もちろん、成長フォローアップも定期的に行う(毎週、又は隔週)。これをやるとメンバーも早く育つ。

段階的移管

⑥過剰品質:この主な原因も、ゴール・目的が不明確なことや、要件の確認不足となることが多いので、1.ゴール・目的の明確化と、5.アウトプットイメージの明確化・共有が打ち手としては有効である。もちろん、信頼関係を構築したい時などに、相手の期待を超えるために思いっきり高品質なものを提供するということはある。だからこそ、ゴール・目的が重要になってくる。

⑦ペーシング:この主な原因として、業務毎の基準値や期限がないことがある。そこへの解決策は6.標準時間/期限を設定することである。全ての業務ではなくても、主たる業務に標準時間や期限を設定することはペーシングの削減には有効である(下図参照)。

標準時間

また、期限を少し早めに設定するのも有効である。もう一つの原因として、人の集中力の低下である。人間誰しも、連続して同じ集中は保てない。私は朝まず簡単に終わる作業をやり勢いをつける。特に気分が乗らない時などは、簡単に終わる作業をやると調子が出てくる。その上で、重要な業務はできるだけ午前中にセットするように心がけている。ただ、人によって集中しやすい時間は異なるので、自分なりに集中できる方法を見出すのがいい。

集中時間

生産性向上の纏め

ここまで生産性向上の視点と方策を述べてきたが、ポイントは①生産性向上余地があると信じる、②ロストタイムの原因を探る、③原因に対する解決策を個人・組織として検討することである。生産性向上が図ることができれば、別の仕事に振り向けられたり、又はプライベートに充てて、リフレッシュすることも可能になる。何れにしても個人としても、組織としてのパフォーマンス向上に寄与するはずである。

最後に私のある週のスケジュールを共有する(下図参照)。ポイントは会議だけでなく、全ての作業をスケジュールに入れている。インプットする時間も含めて。また、毎週日曜日にこの作業計画を立てて、それを細かく分解している。

私の時間の使い方


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