物理力を鍛える「静かな道場破り」
僕は物理学が専門の大学院生です。
大学生のころ、自分が物理をきちんと理解できているかをチェックするために、少し変わったことをしていました。
それは、エセ科学や間違った「理論」をインターネットで検索して、その間違いはどこにあるか考える、というものです。
ここで一つ注意しておきたいのが、僕はそういったものを信じるのは別に構わないと思っています。個人の思想や信仰の自由は保障されるべきだと思いますから。それに、科学を信じることがすべて良いかというと、必ずしもそうでないとも思います。人間はそんなに強い存在ではないでしょう。
ただ、物理学と相容れない「理論」のおかしな点を物理学に基づいて指摘するのは良いトレーニングになるため、しばしばおこなっていました。いわば道場破りみたいなものですね。この場合は道場破りと違って誰にも迷惑をかけませんから、よっぽどたちの良い道場破りだと思います。
ここで面白いのが、相対性理論を否定する人はそれなりにいても、量子力学を否定する人は少ないことです。何故なんでしょう?
特殊相対論の一部はそれなりに簡単な数学であらわすことができるからかもしれません。ただ、一般相対論になると、そうもいきません。たしかに、特殊相対論を認めたうえで、一般相対論を否定している人は少ない気がします。
一方で、量子力学はそれなりに難しい数学が必要なため、やはり否定する人が少ないのかもしれないですね。むしろ量子力学で多いのはそれを誤用してーーあるいは「悪用」してーーいる場合です。note で「量子力学」や「量子論」と検索してみると、体感的には 8, 9 割がそのたぐいのようです。物理学徒からすると阿鼻叫喚の様相を呈しています。
本当は、こういうのは住み分けが大事なんでしょうが、ちょっと覗いてみるだけなら構わないでしょう。ただし口出しをしなければ、です。
物理の腕に自信がついてきた方は、この「静かな道場破り」、一度やってみてはいかがでしょうか?結構面白いですよ?