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【 詩 】人には使命がある

人には使命があるという脅迫から逃れるために
僕は多くのものを失ったが
僕自身というものを失ってしまったことが最大の喪失だろう
使命を果たさずに済むのは
使命を果たすに値する資質に欠けるものだけだから
資質が後天的に得られるものではないとすれば
使命からちゃんと逃れようとするには
自分の根本的な無価値を認める、そのことに
人生のすべてを費やさなければならないはずで
実際に僕はそうして生きて来たのだった

世間に遠慮しながら淡々と暮らす
晴れた空を見る
雲を見る 雨を見る
風を聞く 遠い雷鳴を聞く
時々、波の打ち寄せる音を聞きに行く

もちろん僕は幸せではない
僕は現象の一部であるが僕の意識は
現象を対象化することで成り立つ虚構だからだ
そのことを確認するために僕は
刻々と生成し消失してゆく言葉を
とぼとぼと追いかけ
遠くへと歩く

丁寧に手間を掛け自分の影を
人としての使命から解き放っていく

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