無
たかいたかいビルの屋上
見上げれば、口を大きく開けた鯨の群れ
きいきいと喚く哺乳類
私を削いだお前たちの醜い言葉
ぱらぱらと陽が浮かんでは消えていく
金平糖のような雨空と
霰のような星空をグラスに入れて混ぜた
紙を破く度に綻んだ目の色
雷鳴はどこまでも泳いで軌跡すら残さなかった
美しい、と呟いた
口は裂けて、喉からたくさんの花が咲いた
美しい、と思った
骨は溶けて、あらゆる血肉から花が咲いた
受粉しあう其れらが蕩けている
あらゆる引き算が行われていく最中で、私は願いを込めた
指先は記憶を無くして、視界は定点を失い、言葉は腐っていき、綺麗な顔してみんな笑っていた。
笑っていた。