雑0729
ジンソーダを頼む度に、ジンを飲んでいた彼の人を思い出す。
思い出したくないわけではないけれど、とレモンサワーを注文した。
美味しくないお酒ってこんなに美味しくないんだ、炭酸の抜けたレモンサワーに口をつける。
こんなことならジンソーダを頼めばよかった、と余計に思い出しながら飲み干した。
外は相変わらず蒸し暑く、高層ビルを背に、コンビニエンスストアの前で缶チューハイを飲んだり、パンを食べたり、する人、想像する東京がそのままにあった。
様々なアーティストが東京を題材に作品を作るけれど、それだけの魔力と引力が東京にはあるよな、なんて思いながら電車に揺られていた。
車窓から見えるマンション、この中に数百人の人生がぎゅうっと入っているのだ、と思うと途端に末恐ろしくなった。
誰かの人生がそのままに濃縮還元ジュースのように詰め込まれている、その事実が怖い。人生は希釈できないし。
そんなのが平然としている東京も少し頭が可笑しいのでは、と茹だる頭がつぶやいた。