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追記 【創作大賞2022】

一つ前の記事で#創作大賞2022にドラマの企画書を応募しました。

以下に同企画の脚本サンプルとして数ページ分を記します。 *応募は既に締め切られているのでフォローやスキをしてくださった方々へ向けたものです。

脚本サンプル

◯渋谷・裏通り(昼)
日曜の昼下がり。歩行者で賑わう通りを1台の赤いタクシーが通る。

◯渋谷・タクシー・内(昼)
フロントガラスの奥に広がる街の景色。ラジオからは交通情報が聞こえてくる。
片手でハンドルを握るドライバーの伊達(27)、シートにもたれ掛かりながらタクシーを運転している。
伊達「こんな大勢人歩いてるのによ」
伊達は窓ガラス越しに通りを見回す。
伊達「誰も車乗んねーのかよ」
ラジオに手を伸ばすと、伊達はダイヤルを回す。
政治への不満を熱く語るパーソナリティー、化粧品の宣伝、週間天気予報など次々とステーションが変わる中、テンポのいい曲がかかり手を止める。
伊達はリズムに合わせて自然と頭を前後に振る。
曲が間奏に入ると「Yo、yo」と口ずさみながらタイミングを取りフリースタイルラップを始める。
伊達「俺は東北生まれ ヒップホップ育ち。 津軽訛りは 大体友達。 悪そうな奴が 大概お待ち してる裏道避ける高い魂」
アクセルペダルを踏み込む伊達。タクシーのスピードが速まる。
伊達「東京、東京 big city of east 疲れてて今日はもう歩けないし アップダウン、あっぷあっぷ この坂道 ならば乗りな俺の赤いタクシー」
伊達は「ピピッ」と軽くクラクションを鳴らす。顔を横に向けると「Yea、man」と言ってキメ顔を窓ガラスに映す。
突然、人影が歩道から飛び出してくる。
慌てて急ブレーキをかける伊達。
両手をかざしてタクシーを止める男。後部座席のドアに回ってきて「開けろ!」と言ってノックする。
伊達がレバーを引いてドアを開けると、即座にタクシーの中に飛び乗ってくる石成(30)。
伊達「お客さん、危ないじゃないですか。轢かれちゃいますよ」
石成は後部座席の中央に腰を下ろして上半身を前へと乗り出す。
石成「あの車を追ってくれ!」
石成はフロントガラスの外を指差す。
伊達「はぁ?」
石成「交差点のあの車だ。早く出せ!」
石成が指差す先、黒いセダン車が交差点の角を左折していく。
伊達「は、はい」
訳がわからずも伊達はタクシーを発車させる。手を伸ばしてダッシュボードの上のメーターのボタンを押すと空車ランプが消える。
石成「見失わないでね。頼むよ」
石成はスーツの内ポケットからスマホを取り出し電話をかける。
バックミラー越しに石成の様子を伺う伊達。
石成「もしもし… こちら現在渋谷区域内、車でホシを追跡中。えー、車種、色、ナンバー共に該当車両と一致…」
スマホで会話中も石成は前を走るセダン車から一時も目を離さない。
運転しながら聞き耳を立てる伊達。
石成「このまま大通りへ抜けて、新宿方面へ向かう様子。また動きがあり次第、折り返します」
石成がスマホを切ったのをバックミラーで確認する伊達。
伊達「あのー、前の車、どうかしたんですか?」
セダン車を目で追い続けている石成。
石成「運転手さん、あんまりスピード出しすぎないでね」
伊達「えっ?」
石成「近づきすぎると気付かれるんで」
伊達「あー、すみません」
伊達はスピードを緩め、赤信号で止まったセダン車の2台後ろに着ける。
ゆっくりと顔を後部座席に向ける伊達はセダン車を目で追う石成に話しかける。
伊達「すみません、お客さんって、もしかして」
石成「青」
伊達「?」
石成「信号」
伊達「… あっ」
伊達は急いで前へ向き直し、再びタクシーを走らせる。

◯渋谷・大通り(昼)
ひっきりなしに車が行き交う大通りを黒いセダン車が通り抜ける。
しばらく間をおいて伊達の赤いタクシーが後を追う。

◯渋谷・タクシー・内(昼)
バックミラーに映る伊達をチラチラと覗き見する伊達。
見逃さないようにセダン車を見つめる石成だが、ダッシュボードの上に設置された伊達の名前や登録番号などが記された乗務員証に目を落とす。
石成「ちゃんと前見て運転して下さいね、伊達さん」
名前を呼ばれて伊達はバックミラーの石成と目を合わせる。
石成「あんまりよそ見ばっかりしてると切符、切りますよ」
伊達「えっ? あ、やっぱりだー! 刑事さんなんだ」
思わず顔がほころぶ伊達。
伊達「すごいっすね。ほんと、ドラマみたいなんだもん。まじ、スゲー」
石成は再び真剣な表情でセダン車を目で追う。

◯新宿・駅前(昼)
車と人がひしめき合う大通り。
黒いワゴン車が通りに面した高層ビルの駐車場へと入っていく。
道の反対側、石成がタクシーを降りてワゴン車をじっと見つめる。
ドアが閉まり伊達の赤いタクシーが走り去る。
石成はタクシーが視界から消えるのを確認すると、振り返り「ハハハッ」と1人高笑いする。それから高層ビルとは反対方向へと歩き始める。

◯カフェ・テーブル(夕方前)
小綺麗なカフェ、落ち着いた曲調のジャズが店内に流れている。
テーブルには食事を済ませた石成が姿がある。
ウエイトレスがテーブルにやってくる。
ウエイトレス「食器をお下げしてもよろしいでしょうか?」
石成「お願いします。それとデザートにチョコレートケーキを1つ」
ウエイトレス「かしこまりました」
一礼をして、ウエイトレスは食器を手にして下がる。
石成はカップを持ち上げ、満足そうな様子でコーヒーをぐびりと飲む。

◯マンション・室内(夕方)
きちんと整頓されたマンションの一室。コンクリート打ちっぱなしの壁が静寂な雰囲気を醸し出す。
ガチャリと音がしてドアが開き、石成が入ってくる。玄関から上がり靴を整える。
廊下を歩きリビングルームに来ると棚の上に置かれた電話のスイッチを押して留守番電話の録音を再生させる。
石成はそのままネクタイを緩めながらベットルームへと消えていく。
留守番電話から男の声が聞こえてくる。
石成の声「もしもし… こちら現在渋谷区域内、車でホシを追跡中。えー、車種、色、ナンバー共に該当車両と一致…」
リビングルームに石成自身の声が静かに響く。

◯地下鉄・車内(翌朝)
通勤する人々で鮨詰め状態の車内。
地下鉄がガタゴトと揺れると必死に吊革に捕まるサラリーマン、無表情でシートに座っているOLなど一様に全員の頭が左右に振られる。

◯オフィスビル・ロビー・内(朝)
オフィスビルの1階ロビー。吹き抜けの広い空間に押し寄せるように大勢の社員が出社してくる。急いで階段を駆け上がって行く者がいれば、エレベーター前の長い列に並ぶ者もいる。

◯オフィスビル・13階・エレベーター前(朝)
3台のエレベーターのドアが並ぶエレベーターホール。
その内の1つ、ライトが点灯すると優しいチャイム音と共にドアが開く。
整髪料で綺麗に整えた髪をした石成がエレベーターから降りてくる。
革製のビジネスバッグを手に足早にオフィスへと歩いていく。


引用

台詞に書かれたフリースタイルラップの歌詞は以下の2曲を参考:

Grateful Days by Dragon Ash feat. Aco, Zeebra
東京、東京 by Rhymester


追記の理由

実はこの脚本サンプルを締め切り当日にギリ書き上げたのですが、投稿ボタンを押した後に文章が全て消えてしまった。

連絡を取り運営の担当者と何度かメールでやりとりしたのですが、どうしようも出来ないとの事で泣く泣く諦めました。

しかしアイディアは既にあるので捨ててしまうのは勿体無いと考え、今回思い出しながら執筆しました。暇つぶしがてらにでも読んでもらえれば幸いです。消えた記事も無事成仏してくれるでしょう。

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