見出し画像

絶対にやっちゃダメなやつ

Mamiya C3用のレンズの特徴なのか?

最近になって手に入れた二眼レフカメラ、Mamiya C3。
こちらのカメラは、「二眼レフなのにレンズ交換可能」と言う、非常に珍しい特徴があります。

そして中古市場でも交換レンズが出回っているんですが、難点があります。
それは、

とにかく曇ってるレンズが多い

画像1

と言うポイントです。

ひょっとしたらこの種類のMamiya Cシリーズ用の二眼交換レンズは曇りやすいと言う特性でもあるんじゃないか、と思えるほど、中古市場に出てるレンズには、枕詞のように

「くもりあります」
「おおくもり」
「撮影に影響あるカビとくもり」
「くもりのためソフトフォーカスになります」
「うすくもりだけど良いコンディション」

と言った言葉が並ぶくらい。
くもりなし、と言うレンズはたまーに見かけますが、カメラ本体よりも高いお値段がつくほど希少です。
これまでに見た3種類のレンズは、前玉はきれいな状態だったのに後玉の方にひどいくもりが出ていました。

先日購入したカメラ本体についてきた135mm、そして別途購入した65mm、180mmのいずれも、かなり派手かつ盛大かつ撮影に確実に影響が出るレベルで曇ってました。

レンズクリーナーやレンズ拭きで吹いてもダメ
レンズペン使っても効果なし
ベンジン使ってもダメ

経験上、『今までは大体これでキレイになってた』と言う方法を全部試しても結局ダメでした。
それもそのはず、くもりはガラス表面に浮き出ているもので、拭き取れる類のものじゃない事が多いようです。

じゃあとはどんな手段があるか?
調べてみたら、「レンズの研磨」と言う方法しかないとのこと…

どうしようレンズの研磨なんて出来る機械もないし、そんな技術も知識もない。下手に磨いたりしたら症状は悪化するし、何よりコーティングの類は全部ダメになる…

と躊躇っておりましたが、
・そもそもそのままだったら、そのレンズは燃えないゴミ同然
・くもりで覆われたレンズでコーティングもへったくれもあるまい
・拭いてもダメ、研磨するしか残された手段がないなら、そうするしかない
・ジャンクで売られてた子だけど、ひょっとしたら復活するかも
・この子達(レンズ)をまた使ってやりたい

と開き直って、やってみました。

結果、完璧とは言えないまでも実用に支障がないレベルにまでくもりは除去でき、副産物的にカビもキレイに取り除けました。

今回の記事では
・本来は絶対にやっちゃダメな方法
・下手するとレンズを完璧にダメにしてしまう
・トドメを刺すことになりかねない、と言うか、そうなる可能性大
・あくまで自己責任
・真似して何かあっても一切責任取れません

と言う大前提で、今回やった方法をご紹介しようと思います。

繰り返しになりますが、この記事を参考にレンズを『加工』すると、レンズに対して不可逆的な影響が出ます。
元に戻せません。後戻りできません。
もしも、万が一、この記事を参考にして自分でもやってみようか、と言う奇特な方がおられましたら、
「全ては自己責任。こちらは結果や過程、影響などについて一切責任持てません」
と言うことを念頭に置いておいてください。

使う道具

とりあえずレンズを分解するために使う道具として、
・レンズゴム
・カニ目レンチ
・精密ドライバー
この辺は必要です。
あとは、レンズを一通りクリーニングするための
・レンズクリーナー
・綿棒
・ベンジンやアルコール
・レンズペン
この辺も使います。

画像2

下準備

まずは、クリーニングしたいレンズの、『曇っている面』にアクセスできるように分解します。

画像16

小さいネジなんかも多く使われている事がありますので、決してなくしたりしないように、僕はよくフィルムケースに小さなネジを入れてます。

曇っている面にアクセスできるようになったら、まずは
1 ブロワーでホコリを飛ばして
2 アルコールやベンジンを軽く綿棒に染み込ませて軽く拭く
3 乾燥してからもう一度拭く。優しく撫でる程度に
と言う具合で、レンズそのものに汚れがついてる場合には汚れを拭き取ります。

そして本番

そしてここからが、くもり除去で「絶対にやってはいけない」作業。
金属研磨剤の「ピカール」を使います。

画像4

※ピカールはあくまで「ステンレスや真鍮、アルミなどの金属の汚れ落としや磨きのためのもの」です。レンズ磨き用でありませんのでご注意下さい。

直径20mm程度のレンズであれば、ピカールのチューブから耳かき半分程度の研磨剤を綿棒にとって、レンズくもり面全体にまずは点状に着けてやります。

画像5

そして、ピカールをつけた綿棒で、
・軽く
・極々軽く
・うすく延ばす程度に
・力は入れずに
・円を描くように
・撫でる程度で
と自分に言い聞かせつつ、ゆっくりとピカールを全体に馴染ませてやります。

画像16

画像6

ピカールは最初白い色をしていますが、次第に透明になっていきます。

画像7

レンズにつけたピカールが全て透明になるまでゆっくりと綿棒でレンズ表面を撫で回したら、今度は綿棒の「ピカールがついていない側」で同じような力加減でピカールを拭き取ります。

画像8

僕はよく夜に、部屋の蛍光灯をつけた状態で作業をしますが
・最初曇っているレンズだと蛍光灯の形がキレイに反射しない
・ピカールをつけた直後は真っ白になって蛍光灯の形が全く見えなくなる
・馴染ませているうちに、蛍光灯の輪郭がはっきり見えてくる
・ピカールが透明になり、蛍光灯の輪郭がクッキリ出たらOK
と言うような具合で作業をしています。

綿棒で拭き取れるだけピカールを拭き取ったら、今度はレンズ拭きで力を入れずに、ゆっくり丁寧に、キレイにピカールを拭き取ります。

僕はここでアルコール系のレンズクリーナーを使って再度レンズを拭き、最後にレンズペンを使ってキレイにしてやります。

このやり方で、磨く前にこんな感じだったレンズが

画像15

最終的にこうなりました。

画像9

これまで合計4枚ほど、この方法でレンズのくもりを除去しましたが、少なくともモノクロでは写りに大きな影響は出ていません。

ただし、コーティングの類にはトドメをさしていますので、おそらく逆光にや明るすぎる場所にはとにかく弱くなっているはずです。

磨き前と磨き後の比較

こちらが、磨く前の「おおくもり」状態のレンズを裏側から見た図

画像10

テイクレンズ側はBに設定し、シャッターを開きっ放しにした状態です。
ビューレンズ側は比較的薄いくもり加減で留まってますが、テイクレンズの方はもう凄まじい状態でした。
何この点々? くもり? …カビ? じゃないよな…? という状態。

そしてこちらが磨いた後のビューレンズ、テイクレンズ。
まずはビューレンズ側を前から見ると、向こう側が結構クリアに見えるようになってます。

画像13

こちらは裏側から見た図。
やや薄く白みがかってますが、当初の状態と比較して、かなり視界がクリアになりました。

画像12

そしてこちらはテイクレンズを前から。
シャッターをバルブに設定し、絞り開放で正面から見ています。磨き前に見られていた点状のくもり(的な何か)は見当たらなくなってます。

画像14

同じくテイクレンズ側を、シャッターをバルブに設定、絞り開放にして後ろから見てみます。

画像11

肝心要のテイクレンズ側も、ほぼくもりは見当たらない状態になりました。

最終的にこの状態だったレンズが

画像17

画像18

くもりを完璧に除去するには至っていませんが、ある程度の作業の慣れで、この状態にまで回復できました。

効果はかなりありますが、力加減や綿棒で拭うスピードなど、結構注意しながらの作業が必要です。
力を入れすぎると、かんたんに傷が付いてしまいます。
「こすらないで撫でるだけ」
「焦らず、時間をある程度掛けて、同じ速度と同じ力加減で」
「円を描くようにむら無く、全体を均一に」
など、集中力と根気が必要な作業になっています。

ピカール自体は大抵のホームセンターに売られていますし、ホームセンターがお近くにない場合はAmazonなんかでも購入できます。

結構石油系の臭いがありますので、臭いに敏感な方は換気をされる事をおすすめします。

あと、ピカールにはチューブタイプのと缶入りタイプ、それにジェル状のものと液体のものがあります。
僕は他の用途にも色々使うことが多いので、このチューブタイプのを愛用しています。

液状ピカールでのレンズクリーニングは試したことが有りませんが、いずれにせよ石油系の油が配合されていますので、塗布した時点でコーティングはダメになる、と覚悟しておいた方が良さそうです。

まとめ

今回くもり取り作業をした、マミヤC3用のレンズ達。
おそらく、くもりが残ったままの状態であれば、いずれも現場への復帰は難しかったであろうレンズです。
コーティングはごっそり無くなりますが、そもそもくもりがひどいレンズのコーティングを優先して残すか、それともレンズのクリア化を優先するかはレンズ所有者の考え次第です。

僕は、
「くもりと効果の程が不明なコーティングを残してソフトフォーカス」
よりも、
「くもりを除去して、少しでもくっきりした写り」
の方が欲しかったので、くもりレンズのクリーニングを行っています。

カメラを長年続けている方からすれば、自宅で、おまけに金属研磨剤を使ってレンズを磨くなんて言語道断の所業かと思います。

が、ひどい曇りのために、銘玉だったレンズが燃えないゴミになってしまうのを見過ごすくらいなら、僕はこの手段を使ってでもレンズとして復活してほしい、と思いこの方法を試しています。

なお、僕は過去ににこのピカールや他の研磨剤を用いて金属研磨や鏡面仕上げの経験があります。
その際の力加減や拭き方、仕上げ方など、文書にできない「コツ」の類は、おそらく多数あろうかと思います。

繰り返しになりますが、この方法は万人にお勧めできるものではありません。
下手するとレンズにトドメをさしてしまいます。

くもりのあるレンズで、ソフトフォーカスを楽しめる方は、是非そのままでお使いになった方が安全です。

あまり参考にならない情報でした。

最後に繰り返しになりますが、この記事を参考にされて、お手持ちの貴重なレンズに問題が生じても、僕は一切の責任を負えません。
僕がこの方法でクリーニングをするのは、自分が購入して自分で使う予定のレンズに限っています。

万が一「自分もやってみようか」とお考えの際は、
経過も結果も自己責任
でお試し下さい。








いいなと思ったら応援しよう!